ホーム / 連載 / 「集落機能強化加算」廃止でいいのか? / 【活用事例】集落機能強化加算 うちの地域の活用法
「集落機能強化加算」廃止でいいのか?季刊地域Vol.60(2025冬号)試し読み

岩手

【活用事例】集落機能強化加算 うちの地域の活用法

8月末に集落機能強化加算廃止がわかったのを受けて、この加算を利用してきた各地の集落協定に活用実態を聞いた。いずれもこの加算を高く評価している。

まとめ=編集部

高齢者の見守り、特産加工品づくりに活用

岩手県一関市 小梨地区集落協定

 中山間直接支払制度には集落機能(コミュニティ機能)に対しての支援がなかったが、5期対策から営農以外の取り組みに対する支援として「集落機能強化加算」が加わった。農用地の維持管理をはじめ、地域コミュニティを維持していくために非常に有効な加算であると思う。

集落機能強化加算とは
5期対策(2020〜24年度)から設けられた加算措置の一つで、新たな人材の確保や集落機能(営農に関するもの以外)を強化する取り組みに対して加算。
[対象活動の例]
•インターンシップ、営農ボランティア、農福連携
•コミュニティサロンの開設
•地域自治機能強化活動(高齢者の見回り、送迎、買物支援、雪下ろしなど)
•鳥獣対策に必要な外部人材確保など
[単価]3000円/10a
[上限]200万円/年度

 当集落協定では集落営農法人と連携しながら、交付金本体の共同活動への配分を多くして、畦畔等の草刈りを実施した農家に作業面積に応じた支払いをするほか、共同利用の農業機械導入などに充てている。一方、集落機能強化加算は次の3事業に使ってきた。

三つの事業に利用

①高齢者等の見守りシステム

 現在、小梨地区の21戸が安否確認システム(みまも郎)を設置。これにより遠方に住む子供などの家族、地区の民生児童委員、集落協定事務局の3カ所に毎日メールが届き、安否確認ができるようになっている。

 離れて暮らす子供からは「故郷の両親とつながっている」などの声があり好評である。しかし、仕事で忙しいなどの事情を抱える家族に代わり、民生児童委員や事務局が対応することが多く、その負担が大きい。安否確認システムは利用者の安全を保障するものではなく補助的なものであることを、利用者家族に理解してもらうようにしている。

②ふれあい花壇

 小梨地区の二つの自治会がそれぞれ花壇を整備し、花苗を植栽して地域の憩いの場になっている。植栽作業には子供会や老人クラブなどからたくさんの方が参加。草取りや水かけなどは隣組班の当番制で行なうなど、地域コミュニティの醸成につながっている。

③ハックルベリータルト

 ハックルベリーは目に非常に良いアントシアニンが多く含まれていることに注目。自治会と農事組合法人が菓子製造会社とコラボして「ハックルベリータルト」を製造販売する農商工連携に取り組んできた。小梨を代表するおみやげ商品ができた。帰省から戻る際のみやげにするなど、利用者に大変喜ばれている。

ハックルベリー栽培の様子。会社勤めをしていた60歳前後の女性8人が「畑の一年生」として共同の畑で他の野菜と一緒につくる

 道の駅や通販でも販売している。ただし、生産コストが高く利益がほぼ出ていない。商品の採算性が今後の課題。

ハックルベリータルト

担い手確保の加算も望む

 2025年度から集落機能強化加算が廃止されたり大幅減額になったりすると、いずれの事業も継続が難しくなる。

 また当地区は、農事組合法人が担い手として約9割の農地を集積しているものの、中心となって働く者の高齢化が課題。若い担い手を雇用するうえで、年収の一部を賄うような「担い手確保対策加算」の新設を望みます。

千葉 賢(農事組合法人ファーム小梨代表理事)

『季刊地域60号』2025年冬号  集落機能強化加算廃止でいいのか? うちの地域の活用法」のコーナーには以下の記事も掲載されています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。

  • ・移住&就農へつなげる / 福島県二本松市 永田集落協定
  • ・農村RMOが担う移動販売に活用 島根県安来市 / えーひだカンパニー(株)
  • ・若者の移住・就農につなげる / 鳥取県日南町 多里集落協定
この記事をシェア
タイトルとURLをコピーしました