1980年代なかば、開通したばかりの青雲橋(45ページ)を初めて渡ったときの心中は少し複雑だった。高さ137mは国道に架かるアーチ橋としては東洋一。日之影町の街並みははるか眼下。蛇行する五ヶ瀬川沿いに走る旧道は幅員狭小で台風などの災害に弱く、それゆえのバイパス建設なのだが、それまでも阿蘇や高千穂などの観光地をめざす車が通過するだけの町が、バイパス開通によって「通過もされない町」になってしまったと思った。
その推測の浅はかさを思い知らされたのはわずか1年後。バイパスの両脇に「村おこしロード」と染め抜いた幟が林立、テントや掘立小屋の農産物直売所やそば屋、こんにゃく屋が並び、繁盛していた。人びとは頭上のバイパスを逆に活用し、全国に先駆けて直売所や農家レストランを開設していた。
その青雲橋から、ほぼ同時期完成の日之影発電所・落差209mの水圧鉄管も見える。村おこしロードも発電所も、山間、急傾斜というマイナスをプラスに転じる農家・農村力の象徴だと思った。[甲斐]

祝島の氏本長一さん(33ページ)宅のトイレを借りた。水を流すところがどこにもない。便座下の便槽におがくずが入っていて、使用後にボタンを押すとウィーンとスクリューで攪拌する。それでおしまい。バイオトイレといって、便槽内をヒーターで適温に保つことで、おがくずが吸収したし尿を微生物の作用によって水と二酸化炭素に分解するしかけだという。おがくずの交換は年に数回程度。天日で乾かせばさらさらになる。トイレで再利用しても、肥料として使ってもいい。島では水は貴重品。し尿は船で島外にわざわざ運びだしている。バイオトイレは2つの問題を一挙に解決する。氏本さんはおがくずを攪拌する電動式スクリューやヒーターの電気を太陽光で起こそうと計画中。そうなれば循環型トイレは完璧になる。[阿部]

ゆるくらジャーナル(115ページ)をリニューアルしました。集落発の4本と農協・漁協ほか発の「伝統の大根復活」は、今年の新人職員からの現地情報です。職員が現地で感じた地域の元気、取り組みの面白さをお伝えする連載として育てていけたらと思います。読者のみなさんからの情報もお待ちしています。[馬場]

辰野のエジソン」こと、倉澤久人さんは、金をかけずに廃材や中古機械であっと驚く発明品をつくる(8ページ)。そんな倉澤さんの工場で旋盤を見たときに、宮城県塩竈市で鉄工所を営む父の顔が浮かんだ。震災で実家の旋盤は津波を被ったが、父は“魔法の手”で見事再生させた。「あるものを生かす」。農家と同じ自給の力には脱帽だ。[蜂屋]

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