2010年9月30日発売 定価926円(税込)

〈むら〉に〈まち〉に増え続ける「空き家」。放置していては「もったいない」が、貸したり、売ったりして地域の和を乱す人が来ても困るし、地域との絆が切れてしまうのもさびしい……。だが「地域で引き継ぐ」という発想の生かし方があれば、空き家が宝へと変わっていく。

「季刊地域」No.3 巻頭言より

集落(むら)に生きる

行政がすすめる空き家対策兼定住促進策に「空き家バンク」がある。その多くは、空き家を貸したい・売りたい持ち主と、借りたい・買いたい希望者を ネット上で仲介するというもの。だが、この空き家バンク、成立に至ることは少ないようで、千葉県のある市では、「10年間で成立したのは1件だけ」と聞い た。

そうした空き家バンクには「集落」という要素があまり含まれていないが、農村では、たとえ個人所有の空き家であっても集落 の意志が働くことがある。持ち主が貸したい・売りたいと思っても、どんな人が住むのか、どの程度集落づきあいが果たせるかで、集落が可否を判断する場合す らある。集落にとっては、空き家といえど集落の一部であり、住む人は集落の一員だからだ。

また持ち主の多くは集落の出身者で、 家を貸したり売ったりすることで集落とのきずなが失われることへのためらいがある。「空き家バンクはつくらない」岡山県笠岡諸島の「島づくり海社流空き家 対策」(31ページ)には、そんな集落や持ち主への配慮がじつに見事に盛り込まれている。

また今年度から「戸別所得補償制度」 がスタートした。これも「戸別」というだけあって、制度自体に交付金を集落で生かす発想はあまりない。だが現場では、水田農家、酪農家、作業受託組織がそ れぞれの交付金を生かして飼料と堆肥の地域内循環をつくる(64ページ)、集落全体の交付金で米粉活用のためのパン工房を建設する(70ページ)などの動 きが起きている。

──編集部

コメントは受け付けていません。