函館本線の砂川駅から徒歩5分。いわた書店の創業は1958年、駅前の集合店舗にさかのぼる。「私たち兄妹が本好きだったことから、父が34歳のとき、三菱美唄炭鉱を辞めて、小さな本屋をはじめたのです」と、2代目社長の岩田徹さん(59歳)は語る。

 その後は、バブル経済の影響で、郊外に大型店が乱立。大型チェーン店や新古書店との競争はきびしく、多くの地元書店が廃業した。「量」から「質」の競争へ、生き残りをかけ岩田さんの模索が続いていた。

 転機は2007年。10年ぶりに改訂となる『広辞苑』(第6版)の発売をきっかけに、岩田さんの脳裏にひとつのアイデアが閃いた。それは新版を予約・購入したお客さんを対象に、書店が旧版を無償で引き取り、国内で頑張っている留学生や海外で日本語を勉強する学生たちにプレゼントするという仕組みだ(送料は送付先が負担する)。

「電子辞書よりは重くて大きいが、言葉が生きている」と、カナダの大学で日本語を学ぶマクガンさんから、お礼の手紙が届いた

 送付先をネットで友人たちに相談すると、「国内なら各大学に留学センターがある」という情報や「私が国際交流プラザに相談してあげるよ」など、具体案が寄せられた。カナダの大学で日本語を教える友人からは、「20冊ほど寄贈してほしい」という話まできた。いわた書店だけでは、とても対応できない。

 そこで、岩田さんは北海道書店組合の理事会で「広辞苑プロジェクト」を提案。心意気に賛同した組合は、ポスターまで作成し、取り組みは全道へと広がった。

「あなた様が愛用された広辞苑が、日本が大好きな世界の人びとの手に渡って甦ります。小さな国際交流のキャンペーンにご協力ください」という呼びかけに、2カ月で58冊が集まった。

「捨てるのも忍びなく処理に困っていた」お客さんにも喜ばれ、いわた書店でも28冊が集まり、広辞苑の売上げは例年の2倍となった。

「いまや地元書店が絶滅危惧種のようにいわれるが、小さな書店のアイデアが大きな動きにつながることだってある」と岩田さん。最近はお客の要望に合わせた1万円分の選書・配送サービスや地域誌の連載など、いわた書店の挑戦は続く。

1967年から自社物件に。1階(40坪)が書籍で、2階(30坪)は文具

いわた書店
〒073-0161 北海道砂川市西1条北2丁目1-23
電話0125-52-2221
http://homepage3.nifty.com/iwata/

文=農文協北海道支部 浅尾芳明

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