後継者が育つ直売所

2012年1月4日発売 定価926円(税込)

[巻頭言]「新鮮!安い!」そして「楽しい!」

小林史麿さん

小林史麿さん。グリーンファーム2階の児童書専門書店「コマ書店」の主でもある
(写真=尾崎たまき)

 その雑然とした品ぞろえが「まるで東南アジアのマーケット」と聞いていた長野県伊那市の「産直市場グリーンファーム」を初めて訪ねた。そのさまは想像を絶した。野菜やキノコの横には孵化したハチが這う蜂の巣、活イナゴ……。通路は狭く、しかも土間。照明も明るくはない。だがなぜか、心底楽しくなってくる(10ページ)。

 昨年夏、「信州直売所学校」(注)の受講生が実施したアンケートでは、「汚い、きれいにしてほしい」「通路が狭い。床をコンクリートにしたほうがよい」「商品の場所がころころ変わる」という声の一方で、「こぎれいにしないでほしい」「ごちゃごちゃした感じがよい」という声も。小林史麿会長は言う。「『汚いから来ない』というお客さんはいません。『汚い』とか『そろそろ駐車場を舗装したらどうだ』と言ってもらえるのはむしろ仲間意識から。参加型直売所としてありがたいことです」

 あるときグリーンファームを訪れた大手スーパー関係者が、入り口近くに卵があるのを見て「この店は客導線を知らないのか?」と言ったという。客導線とは、スーパーなどで卵、砂糖、牛乳のような目玉商品の置き場によって変わる客の流れのことらしい。それが購買点数や客単価、売り上げを大きく左右する。卵が入り口やレジ前のような分かりやすい場所にあるようでは、「素人商売」というわけだ。

「しかし」と小林さん。「スーパーでは知り合い同士が会っても無意識にひそひそ話。それはお客の購買意欲を操るバリアのなかにいるからです。そこに自由と楽しさはありません」。たしかにグリーンファームでは、お客、生産者、スタッフが、知らない同士も大声で話している。「商品の場所がころころ変わるのは、置き場を生産者の自由にしているから。荷姿も値段も、完全に生産者の判断にまかせています」

 グリーンファームの看板には「新鮮! 安い!」に加え、「楽しい!」とある。この「楽しい!」が、お客を、生産者を、そして後継者を直売所に引きつける。

──編集部


(注)長野県における農産物直売所を「地域の連携拠点のひとつ」と位置づけ、多角的な視野をもった人材を育成する研修事業(信州大学地域ブランド・オフィス主催)

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