紅葉の名所・香嵐渓や中馬のお雛様など観光客で年中にぎわう旧足助町。昨年は国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定された。そんな風情あふれる街並みに思わず足を止めたくなる書店がある。

 昭和5年創業のマンリン書店。「元は江戸時代から続く呉服屋でしたが、田舎に文化の明かりをともしたいと書店を始めた父の想いを継ぎたくて……」と言うのは2代目店長の深見寿美子さん、冨紗子さん姉妹だ。

 過疎が進んだとはいえ足助には大手のコンビニ2軒が幅を利かせ、豊田市街とのアクセスもよいので地元書店の客足は鈍っている。

 だったら普通の本屋の路線とは一線を画し、自分たちの好きな本を仕入れ、店でじっくり見てもらえるようにしよう、と深見さん姉妹は大きな書店に並ぶようなベストセラーや健康マニュアル本、ビジネス書ではなく、衣食住を中心とした実用書、郷土史、児童書の棚づくりにこだわった。

 コンビニに置いてあるマンガや雑誌も取次からの配本をやめた。結果、本好きにはたまらない独自のセレクトとなり、観光客をはじめリピーター客が少しずつ増えてきている。

 店内の個性に磨きをかけるために10年ほど前から取り組んできたのが、カフェとギャラリーの設置だ。100年前の蔵をそのまま生かした店舗は天井も高く、椅子に座ってコーヒーを飲みながら、好きな本をゆっくりと読むことができる。

本日のケーキセット(800円)は、木の実と松の実の自家製タルト。大きな一枚板のテーブルで気に入った本がじっくり読める

 人気の自家製ケーキは寿美子さんが店に並べた料理本を参考につくる。夏ミカン、クリ、スモモ、ブルーベリーなど、庭で採った果樹や旬の素材にこだわった。

「今日のケーキは何ですか?と聞いてくれるとお客さんとの会話もはずみますね。そこから本の話が出たりもして」と寿美子さん。

 一方、店の奥のギャラリーを担当するのは和紙工芸作家でもある冨紗子さん。「鄙の雛祭り」「クリスマスin蔵の中」など、毎回趣向を凝らす企画展は銀座のギャラリーにも負けないハイレベルな内容だ。

「父が残してくれた書店の文化に磨きをかけたい」と深見さん姉妹の挑戦は続く。

マンリン書店
〒444-2424 愛知県豊田市足助町新町2
電話0565-62-0010
http://kuranonakagallery.com/

文=農文協東海北陸支部 糸谷拓道

コメントは受け付けていません。