直売所で話題の珍商品!
トウモロコシのぬか漬けはいかが
編集部
トウモロコシのぬか漬け(1袋198円)。
杉本幹治さん(左)と阿佐見敏夫さん
群馬から
伊勢崎市の直売農家・阿佐見敏夫さん(61歳)は、トウモロコシを地元の直売所に真っ先に出し、時期の最後まで出し続ける「ずらし」栽培の名人。品種は15年前から「味来」一筋でやってきました。
ある日、直売所仲間で漬け物加工所を手掛ける杉本幹治さん(67歳)に「トウモロコシのハネモノがあるんでぬか漬けにしたら面白いんじゃないかな」と相談したところ意気投合。杉本さんは、これまでも阿佐見さんの発案でカボチャや摘果スイカなど変わり種を入れたミックス野菜のぬか漬けを商品化してきましたが、今年6月「トウモロコシのぬか漬け」が新しくラインナップに加わったのです。
杉本さん曰く「トウモロコシを1分30秒ほどボイルしてから27~28時間漬け込むと、味もよくしみて色もきれいに仕上がる」。また、ぬか床(25リットル)にはヤクルトを2日に1本混ぜる。こうすると乳酸発酵も早くすすむそうです。
食べてみると、味来の甘みとぬか漬けの酸味のバランスがいい。月に100パックほど売れるそうですが、材料は無償なので阿佐見さんの儲けはゼロ。それでも「世間じゃアベノミクスと騒いでいるけど、俺は杉本ミックスで直売所がお客さんから注目されればそれでいいよ。わっはっは」と。さて、次はどんなミックスを杉本さんに提案するのでしょうか。
あざみふぁーむ
お医者さん奮闘
ヒマワリ地あぶらで健康に
向井道彦
佐田地区では25人ほどが栽培に参加する。
品種はオレイン酸を多く含む「春りん蔵」と「ホクレン油用Ⅲ」
高知から
四万十市を含む幡多地域でも、搾油用ヒマワリ栽培の動きが起こっています。市内の入田地区、佐田地区、板の川地区、竹島地区、土佐清水市の立石地区で合計35a作付け。今年3月には「幡多ヒマワリの会」の設立総会も開かれました。
この会の代表は四万十市民病院の内科部長、矢野昭起さん。2011年10月に赴任したお医者さんです。ヒマワリ油に含まれるオレイン酸がコレステロールを下げる点に注目。薬では副作用が出てしまう患者さんにも安心して使ってもらえるように、地元で無農薬栽培できないかと考えました。
ヒマワリの栽培は去年から始め、農家と栽培技術の研究中です。今年は田んぼと畑の圃場で、定植後約1カ月での追肥を積極的に行なったところ、どちらの圃場でも反あたり200㎏を達成しました。
搾油した地あぶらは、まず地元で販売、ゆくゆくは幡多地域の特産として販売もしていく予定です。地あぶらの販売が軌道に乗るまでは、ローストしたヒマワリのタネ(ロシア語でシーミチケ)を販売、その売り上げを経費にあてようと考えています。
「ヒマワリを栽培し搾油することは、健康障害をもたらす可能性のある商品ばかりが出回る食用油市場を見直し、高齢者の健康寿命延長や耕作放棄地解消にもなる。いつか日本中でヒマワリ油をつくる、油革命をおこしたい」
そんな思いを聞いていると、地域にもヒマワリのように大きな花が咲きそうな予感がします。
幡多ヒマワリの会
電話0880-34-9560
竹のオリでイノシシ24頭捕獲
がぜんみんながヤル気になった
吉野隆祐
熊本から
荒尾市上平山地区の有害鳥獣対策協議会では、昨年から竹でつくった捕獲オリを設置しています。会長の大神榊さんが、『現代農業』2010年12月号「イノシシがよく入る竹製の捕獲オリを作る」の記事を読み、開発者である愛知県岡崎市の成瀬勇夫さんの指導を受けながら、昨年5月に1基完成させたのが始まり。昨年は5~11月の間に、3基で24頭のイノシシを捕獲することができました。
制作費はたった8000円。鉄製のオリを購入すれば10万円近くかかるのに比べ、経費は10分の1以下です。しかも番線と釘を除けば、すべて野山にある材料を使うため、イノシシの警戒心も薄れ、ワナにかかりやすくなるとか。
オリを頑丈なつくりにするには、丈夫な4年生以上の竹を秋に伐採すること、竹を組むときの間隔を6~7㎝にすること、番線をしっかり締めることなどが大切。丁寧に作業すればイノシシに壊されることはありません。とくに竹の間隔は重要で、広すぎるとイノシシに逃げられ、狭すぎると見通しが悪くなるため警戒心が増してかかりにくくなるそうです。
昨年10月には荒尾市で成瀬さんを呼び、講習会も開きました。現在は全部で10基のオリを設置。「駆除は1人でやるんじゃ効果がしれとる。地域全体でやらんと。イノシシがかかり始めるとグッと意欲が湧いてくる。その気運を村全体で高めたい。会員は30人いるがそれぞれ仕事があるのでイノシシに掛かりきりにはなれんけど、半日手伝ってもらうだけでも、積み重なれば大きな力になる」と大神さん。ゆくゆくは30基くらいまで増やす予定だそうです。
大神 榊
日本初! 用水路の上に
太陽光パネルを設置
編集部
岐阜から
土地改良区が用水路で発電、といえば当然、小水力発電かと思いきや、ここ岐阜市各務用水土地改良区が5月から始めたのが太陽光発電。
当初は小水力発電の設置を考えていたそうですが、調査をしても適当な落差や水量がありませんでした。そこで発想を転換。水車がダメならパネルをつければいいじゃない、となったそうです。
これまでも土地改良区の事務所の屋上などにパネルを設置する例はありましたが、用水路上の空きスペースで発電するのは全国でも初めての試み。県への申請も前例がなく、とりあえず用水路の「多目的使用」として受理されました。
着工したのは2月、その2カ月後には試運転を開始。発電のための水利権の申請も必要なし。水力発電と比べて工事や申請にかかる期間が非常に短くすみました。
パネルの大きさは縦4×横8m。これを幅約5mの用水路に30台設置。最大出力は約150kW、年間予想発電量は約16万6200kWh。中部電力に全量売電し、年間700万円の収入を見込んでいます。
太陽電池は高温だと電気への変換効率が下がってしまいます。その点、「パネルの下に常に水が流れているおかげで熱くなりすぎず、地面に設置するより発電効率が下がらないのも魅力」と事務局長の波能寿子さん。
事業費は7150万円(日本政策金融公庫融資が6800万円)。当面、売電収入から借入金の返済や積立金を除くと残金は年間約100万円で、揚水ポンプの電気代などに充てるそうです。
各務用水土地改良区
電話058-215-0751
同じ建物内の直売所に本の「ポップ」
農家・農業を応援する図書館
編集部
岩手から
昨年8月、紫波中央駅前にオープンした「オガールプラザ」。オガールは、紫波町の方言で成長するという意味の「おがる」、フランス語で「駅」を意味する「ガール」を組み合わせた造語です。町と民間の共同出資でつくった施設で、飲食店や病院、直売所、紫波町図書館などがひとつの建物の中に入っています。
紫波町図書館では、「農家の方にとって図書館がもっと身近で頼れる存在になれれば」と、農業支援に取り組んでいます。
そのひとつが直売所の「本のポップ」。栽培方法やレシピを掲載している本の案内をポップに書いて、野菜コーナーに置いています。集客アップと売り上げアップにつなげるのがねらい。図書館に足を運ぶお客さんや農家が少しでも増えてくれれば、との思いもあります。
図書館内には「農業支援コーナー」も設けました。農業の専門書や雑誌、新聞をはじめ、農業関係の本をまとめて並べています。図書館では普通、本の並べ方が決められていて、栽培技術の本と農産加工の本は違うところに置かれてしまいますが、「農業の本はここにくれば見つかる」と好評。プロ農家から家庭菜園までカバーする選書も意識しています。「ルーラル電子図書館」(野菜につく病気や虫の種類、使える農薬などを調べられる情報端末)の使い方講習会も開催。若い新規就農者には人気があり、利用も増えたそうです。
「農家の方は一人一人考えていることや思いが違う。しっかりお話を聞いて図書館にできることはどんどんやっていきたい」と司書の手塚美希さん。12月14日には『現代農業』に登場する篤農家の講演会も開催される予定です。
紫波町図書館
電話019-671-3746