津波の後、イチゴを再開
編集部
宮城から 家もハウスも何もかも津波に流された岩佐隆彦さんが2年ぶりに山元町に戻り、イチゴを本格復活させたと聞いて、出張帰りに足を延ばしてみた。
国道6号線から向こうは建物が何もなくなりガランと海まで見渡せるのだが、一角に最新鋭のハウス団地ができていて、岩佐さんの5反歩のイチゴもその中にあった。
11月20日くらいから収穫が始まったという。補助事業で建ったハウスは天井が高く、青空がくっきり望めるフッ素フィルム張り。ヤシガラ高設栽培で給液・かん水・換気・暖房すべて全自動。奥さんも息子さんも「腰を屈めず立ったまま収穫できるのが何よりラク。もう以前の土耕栽培には戻れない」と気に入っている。
「……でも、おもしろくねえんだ」とつぶやく岩佐さん。「機械に操られてるようでよ、あまり好きでねえ」。肥料も水も、決まったものを決まったようにやればいい。イチゴつくり35年、有機液肥や土に工夫をこらしてきたベテランの技が、ここではまったく通用しないのだ。
収量はどうやらかなり上がりそうだ。次から次へと花が咲き、回転が速い。「だけど、かかるもんはかかってる」。厳寒の折、油は1月半ばまでに1万2597リットルも使った。他に電気代や、前は地下水でタダだった水道代も心配だ。さらに、どうしても土耕のほうが味がいい。食べ比べないと誰もわからない程度なのだが、岩佐さんにはそれが悔しい。
「でも、皆様の税金でいただいたハウス。ありがたいこと。自分たちだけではとても再開できなかった」とも言う。返す言葉をうまく見つけられず、復興への道のりの複雑さを思った。
木まで切る草刈り受託サービス
「草刈りんりん」
向井道彦
広島から 「この人はね、もう働いてないと気が済まないのよ」。庄原市のショッピングセンター内の食堂「山びこ」で、やさしい笑みを浮かべながら話すのは加藤林子さん。隣には照れくさそうに笑うご主人の雅さん。
「山びこ」は35年前から夫婦で始めましたが、じっとしていられない雅さんは忙しい時間のほかは家の周りや集落の草刈りなどをしていました。最近は地域でも高齢化が進み、「ここもやってくれ」と頼まれることが増えてきました。そこで、4年前に始めたのが草刈りの受託サービス「草刈りんりん」。
料金は傾斜などの条件によって一坪40~120円くらい。仲間の桑原光雄さんと一緒に、草刈りを請け負います。市の広報にちょっと宣伝を載せているだけですが、これが大ヒット。シルバー人材センターではできないような急斜面の受注も多いそうです。今では隣の西城町や東城町などからも声がかかり、シーズン中はほぼ毎日草刈りに出るので日焼けで真っ黒。食堂は下準備だけやっておいて、あとは奥さんと息子さんにまかせているそうです。「とにかく地域の人に喜んでもらえればいいんだ」と雅さんは言います。
最近では頼まれて、山や庭の木も切るようになりました。切った木は集落にあるノシバの広場に置いておいて、そこに設置してあるピザ窯の薪に使ったり、移住してきた清水宣輝さんが木工作品に使ったりします。
他にもハチの巣の駆除、庭木の剪定など、頼まれればなんでもやります。今年からは仲間も一人増やし、やる気満々の雅さん。ちなみにりんりんの名は奥さんの名前からとったそうです。
草刈りんりん
電話0824-72-4346
農地・水の地域活動
子どもや女性を集めるひと工夫
藤谷拓馬
千葉から 匝瑳市の石田健治さんから聞いた西栢田地区の農地・水・環境保全活動の話。「次の世代を考える」を意識して、全世代・全世帯で取り組める工夫をしているそうです。
地区に十数個ある看板には、地元の栄小学校の児童がつくった標語。毎年、冬休み前に、学校に標語を募集してもらっているのです。
今年は69人(5、6年生全員)から応募がありました。1人で何個も出す子もいるので、集まった標語は80以上。役員総出の選考はかなり盛り上がり、とても時間がかかったそうです。「みどりある ふるさと今も この先も」「ゴミ拾い 誰かじゃなくて 自分から」などが選ばれました。応募した児童全員に参加賞の文房具を配り、看板に採用された児童は特別に表彰しました。子どもたちの意識が高くなると、親も一緒に地域の環境保全活動に参加するようになるそうです。
全住民に参加を呼び掛ける環境保全活動は草刈りや水路・道路の整備など。土掘りの水路が多いので水路整備は特に大変。ひどい場所では水路の真ん中から竹が出ていることもあり、時には重機も出動します。こうなると男性の仕事ばかりで、女性は参加しにくいですよね。そこで保全会では、ちょっとしたものを運んだり、刈った草を集めたりする作業を「女性の仕事」としてお願いしています。参加を呼び掛ける広報には「女性にしてもらいたい作業があります」と書いておくと、女性も参加してくれるようになるそうです。
西栢田環境保全会(匝瑳市産業振興課)
電話0479-73-0089
ショウガ栽培に燃える女性部
ジンジャーガールが急増中
糸谷拓道
昨年の「グローブショウガコンテスト」。
景品は営農意欲をそそるようにとスコップや農業用貯水槽など
福井から JA福井市の指導販売部・三上浩一さんから聞いた。昨年11月、「ジンジャーガールズ」の活動の一環でショウガのレシピコンテストを行なったそうだ。最優秀賞はシイタケやニンジンなどとショウガを煮てつくる「生姜すしの素」。さっそく商品化の話も出ている。
一部の支部の女性部でつくっていたショウガを、昨今の健康ブームにのっかり女性部全体で振興していくことになったのが2012年。最初にやったのが、ショウガをつくるジンジャーガールの募集。1年目で400人、2年目には700人にまで増えたそうだ。女性部員の3分の1近い人数。「こんなに集まったのはジンジャーガールという名前がチャーミングだったからかな」と三上さん。ショウガの栽培担当として、毎月発行する営農情報で何気なく使った「ジンジャーガール」という言葉が定着したのだそうだ。
ジンジャーガールズは自家用だけの人も多いが、少しでも大きくいいものをつくろうとみんな本気だ。グローブのように大きなショウガを収穫することを目標にした「グローブショウガコンテスト」もあるし、モデル圃場の見学会に参加するなど、じつに生き生きと活動をしている。
昨年は巳年にちなんで、ヘビー級のショウガをとるぞとみんなで意気込んだが、あまりとれなかったとか。今年こそは、とさぞ燃えていることと思う。
JA福井市生活経済部
電話0776-33-8166
ロケットストーブの親戚!?
持ち運びできる薪コンロが誕生
編集部
使用時。米4合の炊飯と1.5リットルの汁ものを同時に30分ほどで調理可能
兵庫から 折り畳み式、携帯型調理機「薪コンロ」を開発したのは、「楽しさと地球に優しいライフスタイルの提案」をモットーにものづくりをする森本高広さん。
昨年、ロケットストーブに興味をもち始め、もっと広めたい、防災時やアウトドアで誰でも気軽に使えるようにしたいと思ったことがきっかけ。簡単に持ち運びができるようにコンパクトな設計にこだわった。
煙突と焚き口を収納できる構造で、組み立て1分、着火2分の簡単操作ですぐに調理にとりかかれる。材質はステンレス。加工は知り合いの製造業者に頼み、加熱を繰り返して膨張しても収納できるように何度も微調整を重ねた。
焚き口から煙突に続くトンネル部分は二重構造にして、断熱効果を高めた。煙突の断熱はしていないが、煮炊きには十分。あくまで軽さや運びやすさを追求した。
「このコンロをきっかけに多くの人が薪に興味をもち、元気な森づくりにもつながってほしい」と森本さん。岡山県の自伐林業グループなどとも協力して、薪を使った料理イベントも開催中。4月からは1万8000円で販売も開始。今後はアウトドア店にも広めていく予定だ。
エスアール総研(もりもと技術研究所)
電話090-9984-8012 http://www.morimoto-rd.com/