飼料米、数量払いに初挑戦
10万5000円、ラクラクゲット
編集部
山口から 萩市田万川地区の農事組合法人上田万では、2014年に初めて2haで飼料米の栽培に挑戦。ムギとの二毛作で、品種は多収が狙える「やまだわら」を使いました。
組合長の大田八十二さんは「数量払いなら多少肥料代がかかってもたくさんとったほうが儲かる」ということで、最初から助成金の最高額10万5000円狙い。農協の栽培暦の通りにはせず、田んぼに通って葉色などイネの様子を見ては、肥料がきれそうだなと思うとすぐに、ちょっとずつ何度も肥料をふったそうです。
「元肥も追肥も、穂肥も実肥も全部やった。チッソ成分でも農協の指導よりはやや多かったと思う」
その結果、収量はなんと乾燥玄米で10aあたり12俵以上の727㎏! 基準単収は510㎏なので、10万5000円のラインとなる660㎏を67㎏もオーバーし、ラクラク10万5000円をゲットできそうです。県の主食用米の作況指数が95と落ち込んだなか、この収量は快挙といえます。
「久しぶりに『こりゃようとったなぁ』っていう感じのイネ姿で、それは見事な田んぼでしたよ」と大田さんも仲間の梅津芳生さんも誇らしげでした。
飼料米は地元のJAあぶらんど萩が集荷し、同じ田万川地区で肥育牛を1600頭ほど肥育する㈱萩牧場へ販売されます。実際には萩牧場のグループ会社がある島根県益田市で破砕、サイレージ加工しているそうです。
「1回つくればだいたい品種の特徴はわかる」という大田さん。次はもう少し疎植にして肥料を減らしても十分10万5000円は狙える、とみています。
県産小麦は中力粉、
だったら中力粉でパンを
岩瀬繁信
大分から パン用小麦といえばかつては輸入が常識でしたが、近年は北海道の「ゆめちから」など少しずつ国産のパン用小麦も増えてきました。ここ大分でも県産の有機小麦を使った、添加物なし、天然酵母のパンを普及させようと「おおいたのパンと小麦プロジェクト」が動き出しています。
中心になっているのは大分市内で月に1度開催する「おおいたオーガニックマーケット」の主催者、後藤亜紀子さん。マーケットに出店する有機栽培農家と地元の小麦を使いたいパン屋をマッチングし、「県産有機小麦のパンが当たり前に手に入るようにしたい」と活動しています。
プロジェクトのポイントは、パン用小麦(強力粉)にこだわらないこと。九州には「ミナミノカオリ」というグルテンを多く含むパン用の品種があります。福岡などで広く栽培されてはいますが、雨にあたると穂発芽しやすい性質があり、収穫が梅雨と重なる九州ではつくりにくいのも事実。収量もあまりとれません。
そこで大分でもよく栽培されている「チクゴイズミ」や「農林61号」など、うどん用の小麦を使っておいしいパンをつくろうという逆転の発想をとることにしました。これらはグルテンの少ない中力粉になる小麦。食パンなどの柔らかいパンには向きませんが、バケットなどハード系のパンを焼くと、小麦本来の味が楽しめるとってもおいしいパンが焼けるそうです。
「少しずつでも生産者が小麦をつくりやすい環境(流通、製粉、保管など)を整えて、安心して食べられるパンやお菓子をつくる人が増えてほしい」と後藤さん。国産小麦パンの新たな動きに注目です。
大分オーガニックマーケット
http://oita-organicmarket.jimdo.com
道の駅が棚田米を
1俵1万8000円で買い取り
伊藤照手
毎年6月に開催する「お米会員と生産者の交流会」
(棚田ツアー)の様子
福岡から 豊前市の道の駅豊前おこしかけは、地域の人を巻き込みながら米のブランド化に取り組んでいます。
10年ほど前、東九州自動車道の開通が決まり豊前市は素通りされてしまう可能性がありました。そこで駅長の白石道雄さん(79歳)は「リピーターになってくれるお客さんを増やす目玉商品はないか」と地域を見直したところ、豊前は江戸時代、上方にお寿司用のお米を出荷していたことを知り、お米のブランド化を思いつきました。
白石さんが最初に目をつけたのは棚田の景観が美しい轟地区(通称轟の里)。山から直接流れ込む水や昼夜の寒暖差などの自然環境に恵まれ、ここでとれる「夢つくし」は最高の味。そこでこのお米を1俵1万8000円で買い取ることにしたのです。店頭では白米5㎏2000円で販売、大人気で毎年夏前には200俵分が売り切れます。現在は他の地区の米や農協から仕入れる分も含め、5種類以上のお米を販売しています。
また、お米会員制度もつくりました。道の駅でお米を購入したお客さんに名前と住所と電話番号を登録してもらい、1万5000円分のお米購入で500円の割引券を渡します。毎月お米の価格などを書いたハガキを出し、電話注文や近隣への宅配も受けています。現在のお米会員は約4000人。「お米会員と生産者の交流会」も人気です。
轟の里では現在10人ほどの農家がお米を栽培していますが、買い取りを始めてからは、定年後の息子が帰ってきたりして後継者も増えているそうです。
道の駅豊前おこしかけ
電話0979‐84‐0544
出荷者の名前と数が一目でわかる
直売所のアナログ名札システム
向井道彦
鳥取から 鳥取市にある設立18年目、年間売上5億円近くになるJA鳥取いなばの直売所「愛菜館」。会員は770人ほどで、毎日150人もの農家が出荷するので、朝のバックヤードはおおわらわです。
しばらく見ていると、出荷した農家は壁の板に、自分の名前が黒字で書かれた名札をかけて帰っていきます。名札をかける板は幅1・5m、高さ2・5mくらい。左上から順番に合計126枚の名札が掛けられるようにフックが付いています。
126人が出荷し終わると、板は黒字の名札でいっぱい。すると127人目からの出荷者は、赤字で名前が書かれた名札を、左上から順に、黒字の名札に重ねるように掛けていきます。どうやらこの名札、表は黒字で、裏は赤字で農家の名前が書いてあるようです。
なんだか面白いしくみですが、なんのためにやっているのでしょうか。奥田勝己統括に聞くと、まず出荷者の人数を数えるためなのだとか。なるほど、一目で出荷者の数がわかります。でもそれってPOSデータなどを見ればすぐわかることでは? 「POSデータだと管理者がわかるだけで、生産者は見られないわけです」。生産者もこの板で、同じ品物を出す人が来ているかとか、最近あの人は早く来てるとか、いろんなことを見るのだそうです。「毎日の出荷の励みにもなってるみたいですよ」
出荷時間は朝7時30分から16時なので、16時になると直売所のスタッフが板から名札をはずして、農家ごとに設けた連絡ボックスに入れておくそうです。
愛菜館(JAグリーン千代水店)
電話0857‐37‐0178