「即効性はないけど、大人になって効いてくる」。そう語るのは絵本とおもちゃの専門店・百町森の柿田友広さん(62歳)だ。5年前から自宅を使って絵本や物語の朗読会「お話会」を夫婦で開いている。

 自宅を新築した際、家の蔵書を貸し出す家庭文庫をつくって、地域の親子に月2回(第2・第4日曜日)開放。「お話会」はそのときに合わせて行なわれる。

 毎回1家族から5家族ほどが参加。同じ小学校区以外からも来る人がいるそうだ。参加費は無料。終了後に庭でハーブを摘んでお茶飲みすることもある。

「お話会」の会場は屋根裏部屋だ。天井が低いので「なんか秘密基地みたい」と子どもたちは興味津々。

 当日集まった子どもたちの年齢などを見て3冊くらいの絵本をチョイス。定番のロングセラーものから新刊など、子どもたちや親がどんな物語に反応するのか楽しみなのだそうだ。

「お話会」では語り手に集中するようロウソクに火を灯し、
朗読の最後に「このロウソクを吹き消すときに
何か願いごとをするとかなうかもよ」と言って、
子どもたちに吹き消してもらう

「よい絵本はストーリーに力がある。お話会ではストーリーテリングを大事にして、ただ本を読むのではなく、子どもたちの目を見て語りかけるように話す」と柿田さん。はじめはじっとできず聞けなかった子どもでも、だんだん集中するようになるのだという。

 もともとお話会は18年前に娘さんが小学校へ入学したときに「子どもたちに絵本のよさを伝えたいので、学校でぜひやらせてほしい」と柿田さんが担任に頼んで始まった。当時はまだ読み聞かせのボランティアなどなかった時代だ。

 その後は地元の小中学校や保育園から毎月のように招かれるようになり、出張お話会は現在までに300回を数えるほどになった。

 柿田さん夫婦は、「お話会」で絵本や物語に興味を持つ子の裾野が広がっていると感じている。

「物語を聞くことは生きる力になる。先人たちが昔話をして孫に生きる知恵を教えていたように、物語に隠された知恵は『あのときのお話はこんな意味だったんだ』と、大人になってからじわじわ効いてくるものだからね」という。経験から出る深い言葉だ。

1979年に開業。店名の百町森は
「くまのプーさん」が住む森の名前からとった

子どもの本とおもちゃの店 百町森
〒420-0839
静岡県静岡市葵区鷹匠1-14-12 ウインドリッヂ1F
電話054-251-8700
http://hyakuchomori.co.jp/

文=農文協東海北陸支部 糸谷拓道

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