いつもの牛乳配達と一緒に本が届く!? そんな日常が北秋田市では当たり前になりつつある。仕掛けたのは、今年で創業52年目を迎える地元(旧鷹巣町)・日活書店の佐藤大さんだ。
きっかけは2012年、商工会青年部仲間の佐藤乳販社長・佐藤康弘さんとの何気ない会話からだった。
「牛乳宅配のお客さんに月1回、情報だより『げんきのもと。』を届けているんだけど、掲載するネタ集めに毎月苦労していてね」「それなら今月のオススメ本なんてどうです」「いいねー。年配で本好きも多いからウケるかも」と意気投合。さっそく大さんが毎月3~4冊の一押し本の書評を書いて、牛乳配達のときに注文できるしくみにした。
注文方法はとても簡単。牛乳の注文用紙に希望する本(掲載本以外でも可)のタイトルを書いて、自宅の牛乳受け箱に入れるか、牛乳配達のスタッフに手渡すだけ。代金は毎月の牛乳代と一緒の支払いか、配達時の現金引き換えが選べる。
高齢のお客さんの中には書店に行きたくてもバスや電車を使わないと通えない人も多い。とくに寒い冬の時期はこの宅配システムが重宝されており、多い月には20冊ほどの注文がある。
セレクトする本にはこだわりがある。『げんきのもと。』のコンセプトは健康情報誌なので、食生活に気をつかう高齢者向けの季節の料理本や健康本など実用書を必ず1冊は入れる。それと地元や県内など、ローカル色たっぷりの郷土本をなるべく選ぶようにした。
「ベストセラー本と違って郷土関係の本にふれる機会は案外少ない。せっかくの機会だから積極的に紹介したい」と、最近では『秋田弁!単語カード』や『東北朝市紀行』を掲載した。
3年目を迎えうれしい効果も出てきた。こんな便利な宅配があるなら佐藤乳販からまた牛乳を取ろうというお客さんが増えたのだ。 町おこしイベントを主催したり、空き店舗を使った商店街活動に参加したりと大忙しの大さん。地元のネットワークを活かした新たなコラボ企画のスタートも近いのかもしれない。
日活書店
〒018-3322
秋田県北秋田市住吉町9-15
電話:0186-62-1666
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文=農文協東北支部 水野隆史