このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

自信満々の雲南市の「地方版総合戦略」

編集部


雲南市の「地方版総合戦略」は
ホームページで公開されている

島根から 今、自治体はどこも「人口ビジョン」「地方版総合戦略」をたてなくてはいけなくて、頭を抱えている。今年度中に作成しないと国から地方創生の新型交付金がもらえなくなるからだ。
取材ついでに岩手県遠野市役所の経営企画部へ立ち寄ると、ここも一生懸命やっていた。専任職員「まち・ひと・しごと推進担当」を配置し、「本当に地域が元気になる戦略にしたい」と画策中。だが国からは「さらに早く、10月までに作成すれば交付金上乗せ」との話もきて、スピード重視で進めざるを得ないともいう。おそらく多くの市町村が同じ状況だろう。
そんななか「早いのによくできている」と遠野市の担当者が参考にしていたのは、島根県雲南市の総合戦略だ。雲南市は今年3月、全国で4番目にさっさと作成・発表してしまったらしい。実際に開いて中を見てみると、なるほどなかなかに堂々としている。
国の「少子高齢化・人口減少」という課題に、雲南市は先取りして20年くらい前から直面。「課題先進地」ということは「課題解決先進地」でもある、という。「消滅可能性などと脅されても怖くない。自分たちなりに地域づくりを続けるだけ」とも読めるこの総合戦略の背景には、市内に30ある地域自主組織の活動がありそうだ。いま注目の「小規模多機能自治」(72ページ)。「行政にやってもらう」のでなく、住民たちが自ら課題解決に動くのが、雲南市流の形になっている。

まち・ひと・しごと創生雲南市総合戦略
http://www.city.unnan.shimane.jp/www/contents/1426500450740/index.html

3万5000円で破砕機を自作
竹パウダーが直売所で大好評

高橋明裕


粉砕部の周囲を廃材の金属板で囲んで
パウダーを集めやすくした

山口から 竹林整備で出た竹は、チップやパウダーにすればじゃんじゃん使えそうです。でも市販の粉砕機は1台100万円以上とけっこう高価なのが難点。そこで、山口市の宇岡光嘉さん(70歳)は3年前、地元の木材製作所などからもらった廃品を利用し、なんと3万5000円で竹粉砕機をつくっちゃいました。
特徴は、刈り払い機のチップソーを22枚重ね合わせた粉砕部。チップ(刃)の位置を交互にずらすことで、間にスペーサーをはさまなくても重ねることができます。後はシャフト(軸)で固定すればOK。3・5馬力のエンジンで回転させたところに竹を押し付けゆっくりと回していくと、硬い竹がみるみるパウダー状になっていきます。直径20㎝、長さ2mほどの孟宗竹も15分ほどで粉砕終了。
宇岡さんは毎年6月中旬、竹パウダーを田んぼの水口から1反当たり10㎏ほど流し込みます。こうすることでイネの倒伏が減り、食味も上がるのだそうです。
また、竹パウダーは小分け袋に入れて近所の直売所で1㎏200円で販売。けっこう売れるそうで、「竹粉砕機の元が1年でとれた」とニンマリ顔の宇岡さん。今年もさっそく裏山の竹を切り出し、竹パウダーづくりに燃えています。

竹100%の絶叫マシン竹コースター

伊藤照手


竹コースターは大人にも人気。滑った後は、ソリに付いたヒモを地元中学生が引っ張って出発地点まで戻す


千葉から
多古町では約1万株が咲く「あじさい公園」で、毎年6月の土曜日に「ふるさと多古町あじさい祭り」を開催しています。町の特産品「多古米コシヒカリ」の精米を無料で振る舞う 「多古米振舞行列」や多古米奉納式典、コンサート、さっぱ舟遊覧など様々なイベントが行なわれます。
なかでも目を引くのがあじさい祭り限定の竹100%の絶叫マシン「竹コースター」。高さ5・5m、長さは50mほどの、竹でできた巨大な滑り台です。滑るときは4〜5人乗りのソリに乗って滑ります。
材料の竹は、毎年地元子供会の親たちが地域の竹やぶから切り出してきます。使う量は1・5tトラック4台分! 2週間ほど寝かせ、祭りの前日に1日で組み上げるのだそうです。
子供たちが大喜びのこの竹コースターは、毎年長蛇の列ができるほど大人気ですが、あくまでお祭り限定。お祭り終了後には即バラして、竹は希望する団体にプレゼントしています。昨年は町内の特別支援学校が引き受け、竹炭にしたそうです。
地域であまり使われていない竹資源を、おカネをかけずに町の子供たちや観光客を呼ぶ目玉にしてしまおうというこの竹コースターづくりは、始まってから20年近く経つそうです。竹の滑り心地を確かめに、機会があればあじさい祭りに行ってみたいですね。

多古町コミュニティプラザ
電話:0479‐76‐7811

ガラクタの山からお宝発掘
空き家片付けイベントを開催

編集部


空き家から出てきた荷物には食器類が多かった

山形から 空き家を活用しようとするとき、入居者にとっても家主にとっても「片付け」は悩みのタネ。何十年とためた生活用品や衣類、消耗品は量・質ともに、そう簡単に手が付けられない代物です。専用の業者もありますが、結構おカネがかかります。
そこで「片付けの負担が減れば、活かせる空き家はもっと増えるのでは」と考えた和田有紗さん(23歳)は昨年11月、鶴岡市の空き家で片付けイベントを開催しました。片付けたのは空き家に付随する2階建ての倉庫で広さは6畳ほど。床から2階の天井までびっしり埋めていた荷物を12人のボランティアとともに引きずり出し、使える物と使えない物に選別。使えそうなものは、後日近所のイベントスペースを借りて「ガレッジセール」と称して販売したそうです。
家主にとってはガラクタでも、若い世代には「レトロでかわいい」という物も多く、売り上げは上々。おちょこや湯のみなどの器とハギレで針山をつくるワークショップも参加費500円で同時開催し、片付けにかかったゴミ袋代などの諸経費を賄うことができました。
今回の開催はお試しということで倉庫の持ち主から片付け費用をもらいませんでしたが、「ボランティアを集めたりするコーディネート料をもらえれば、私にとっても継続できる小さな仕事にできるかもしれない」と和田さん。今後の空き家片付け事業への手ごたえを感じているそうです。

空き家+plus
https://www.facebook.com/akiyaplus

地元出身者も帰ってくる
12時間忍耐ソフトボール大会

伊藤照手


3年前にユニフォームを新調。青と赤の
Tシャツの背中にはそれぞれ「田原魂」
「朝田魂」と書いてある

大分から 杵築市にある旧大田村は人口1500人ほどの小さなむら。そんな大田村には、毎年むらの出身者たちもこぞって参加するちょっと変わった名物行事があります。その名も「12時間忍耐ソフトボール大会」。合併して大田村になる前の、朝田村と田原村の2チームに分かれて、大田小学校のグラウンドで朝8時から、12時間ソフトボールの試合を延々し続けるというもの。選手はどんどん交代していくので、子供から大人、高齢者まで1回の大会(試合)で総勢300~400人が出場。12時間もあると攻守交代は100回前後で、得点もお互いに100点ほど取り合うそう。相当忍耐がいる戦いになるようです。ちなみに現在は4勝2敗1分けで、朝田村が勝ち越しています。毎年8月15日頃に行なわれるこの大会、30年ほど前に地区内の石丸集落で行なわれていた10時間ソフトボール大会がはじまりです。一時途切れていたのですが、「せっかく帰省しても地元出身者はやることがない」「地域と関われない」という話から、8年前に大田村全域に広げて復活、現在に至ります。お盆に合わせて帰省している大田村出身者もかなりたくさん参加するそうです。なかにはこの大会のために帰省する人もいるほど。「こうしたことを通じてまた大田村に帰って来る人が増えれば」と大会実行委員会の会長を務める坂本哲知さん。楽しく人を呼ぶイベントをこれからも仕掛けていきたいと話してくれました。

大会実行委員会(坂本哲知)
電話:090‐3326‐3823

若手が地域に残っていく鈴神社の花火大会

柳島かなた


祭り当日は、神社境内に青年会とOBの出店も出て賑わう

福島から 会津若松市北会津町の鈴渕はわずか23戸の集落ですが、伊勢講仲間や会津めぐりの旅仲間の集まりなどがいまだに残っている団結力の強い地域です。毎年9月8日には、地元の鈴神社祭礼の前夜祭として花火大会が催されます。ここでは、多い年には70発もの花火が打ち上げられますが、そのスポンサーはなんと集落の各家だそうです。「還暦になったから」「我が家に赤ちゃんが生まれたから」「追悼の意味をこめて」「息子が結婚したから」「昇進したから」「おじいさんの一周忌」など、各家の節目に、花火のサイズに合わせて8000〜4万円ほど出して、花火の打ち上げを依頼するのです。打ち上げはプロに頼みますが、そのときには「○○様協賛、□□記念」といった具合に、協賛者と打ち上げの名目が放送されます。これがなんとも打ち上げ甲斐を感じるそうで、「うちは毎年上げているよ」という人や集落外から打ち上げを頼む人もあるほどです。9月8日がたとえ平日でも、勤め人は祭りが始まる午後は仕事を休んで参加します。これほど大事にされているこの行事があるからか、一人、また一人と鈴渕に帰ってくる若者が増えているのだとか。長く続く習慣はときに面倒でもありますが、やっぱりむらを盛り上げてくれるんですね。毎年、花火を見つめながら、鈴渕の人たちは、ここで生きてきた先人たちの歴史と自分たちの未来に思いを馳せるのかもしれません。

元体育館を飼料米専用倉庫に活用
農家の保管料負担はゼロ円に

編集部


飼料米が入ったフレコンが積まれる元体育館

岩手から 2007年から耕作放棄地防止や生産調整達成のため飼料米生産に力を入れてきた軽かる米まい町。昨年の作付けは180ha、今年は200ha以上になる見込みです。飼料米は販売価格が玄米で1㎏33円ほどと安いため、経費をいかに安くできるかが農家手取りを確保するための大事なポイントです。軽米町では廃校になった体育館を、地域の同意を得て飼料米専用倉庫として活用、通常1㎏5~10円ほどかかる生産農家の保管料負担をゼロ円にしています。体育館はJA新いわて北部営農センターや生産農家でつくる町飼料用米生産組合が軽米町から借り受けて改修。工事は地元業者に頼み、330㎡の床をコンクリートに、窓には遮光幕を張りました。業者が廃材を活用してくれたことや、遮光幕の目張りなどを組合員でやったこともあり、かかった費用は計315万円。軽米町農業再生協議会の補助金で賄いました。低温倉庫ではないので、貯蔵はモミのまま。検査もモミで行なっています。町内で生産された飼料米は一部が全農へ出荷されますが、ほとんどは県内の養鶏農家㈱ニチレイフレッシュファームへ乾燥モミ1㎏25円で直接販売。そこで生産される「純じゅ和んわ鶏けい」に給与されます。給与は玄米ですが、精米代(1㎏約13~15円)や輸送費は養鶏農家の負担なので、飼料米生産農家には販売代金がそのまま入る計算です。養鶏農家への販売は、取り組み開始当初から3年ごとの長期契約で続いており、いい関係が築けているようです。

軽米町飼料用米生産組合(JA新いわて軽米地区担当課)
電話:0195‐46‐2811

シカ、クマ、キジ……12種の山肉 「遠山郷の十二支」セットが人気

編集部


冷凍で発送。ヒツジやイノシシ、シカ、クマなどは熟成生味噌ダレとニンニクが隠し味のジンギスカン味



長野から
飯田市の「肉のスズキヤ」は創業58年。南信州・遠山郷で、ジビエの解体加工から販売までしてきた老舗精肉店です。「山肉の味や食べ方をもっと広めたい」と、社長の鈴木理さんが始めたのがセット売り。最初は猪鹿蝶ならぬ「猪鹿鳥」として、イノシシ・シカ・キジ・ウズラをセットにしたところ、少しずつ食べ比べられると好評。手ごたえを感じて2011年につくったのが「遠山郷の十二支」セットです。「干支」の内容は鶏、ウズラ、牛、クマ、ヒツジ、馬、キジ、イノシシ、ウサギ、ヤギ、豚、シカ。ネットでも販売してみると、首都圏を中心にジビエが初めての人からの注文が多く、ホームページではレシピも紹介。価格は1万2000円。いろいろな価格帯のセットも検討中だそう。「シカやイノシシは専属の猟師から仕入れ、ヤギやヒツジ、ウサギなどは飼育農家から購入。でも猟師も農家もどんどん減っている」と鈴木さん。「気軽に食べてもらって、滋味深い山肉の食文化を守りたい」。

㈲肉のスズキヤ
電話:0260‐34‐2222

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