子どもの本の専門店エルマーは、今年で創業28年目を迎えた。代表の前園敦子さんは、「言葉を通して子供は育つのだから、その言葉を伝えていくのには絵本が一番だ」と一貫した思いで絵本の専門店を続けてきた方だ。
 国会で安保法案が審議されているなか、子供の本を売る本屋として、子供たちの命を脅かすものは絶対に許せない。そんな思いから昨年8月30日には安保法案反対集会を企画した。
 地元の西日本新聞でも「子ども向け書店 平和つなぐデモ」という見出しで大きく取り上げられ、新聞を見て参加した親子連れも多かった。じつは私もそんな参加者のひとり。
 当日は、前園さんが『へいわってすてきだね』を子供たちに読み聞かせ、大人たちは「世界中の子どもたち」を歌い、ボランティアがつくったペットボトルマラカスをみんなで振った。
 参加者は総勢280人。集会後はマラカスやポスターを手に「子供たちの命を守ろう!」「戦争はイヤだ!」と声をあげながら商店街を練り歩いた。
 集会をしただけで終わらない。日本国憲法の勉強が大切だと痛感した前園さん、今では奇数月に1回、店の2階で憲法学習会を開いている。自分ひとりでは何も変わらない。少しでも多くの人を巻き込んで平和を叫んでいきたい。それは子育ても同じこと。ひとりで悩まず、いろいろな人と対話することで自分も育っていく。エルマーには子育ての悩みを相談に来る母親たちが多くいる。

「みんなせんそうキライだよ」。参加者が手にするポスターは、絵本作家の宮西達也さん、真珠まりこさんが、この安保法案反対集会に賛同し、描き下ろしてくれた

 前園さん、以前は60歳で引退しようと思っていた。でも、子供たちを取り巻く環境が脅かされている今、引退を考えることはなくなった。子供たちが安心して暮らせるような世の中になるまで、がんばらなきゃと思っている。
 だから絵本を通じて子育てを豊かにしてほしいと講演活動にも力を入れる。「お母さん、私もダメな母親だったんだよ」で始まる講演に、最後は多くの母親が涙を流す。そしてその夜は、みんなきっと優しい声で子供に絵本を読んであげているのだと思う。

西鉄の春日原駅から徒歩数分。店内は昔懐かしい木の床で、棚一面に絵本が並ぶ

子どもの本の専門店エルマー

福岡県春日市春日原東町3-16-5
☎092-582-8639 
営業時間10:00〜19:00(第2火曜日定休)

文=農文協九州沖縄支部 佐藤 圭

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