このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

村外へ流出する「食費」を止めろ
バケツの穴うめが始まった村

編集部


地域経済だだ漏れバケツ。本誌25号では
パン・ピザ代、24号は熱エネルギー代、
23号はアルコール代の穴のふさぎ方を紹介

長野から
 天龍村で「バケツの穴うめうめプロジェクト」が進行中!と知って、興味津々。バケツとは、あの「地域経済だだ漏れバケツ」(図)に違いない。どんなふうに修復して「自給圏構想」をめざしているのか。さっそく村に聞いてみた。
 指揮をとるのは村の嘱託職員、地域おこし協力隊の村澤雄大さん。昨年、村のおカネがどれだけ村外に流出しているのか、「食費」に絞って調査した。アンケートは村の全戸約600戸に配布。調査には武蔵野大学の明石修ゼミが協力した。以前、村澤さんが企画した村の体験ツアーに参加したゼミの学生が、すっかり村のファンになり、研究の一環で取り組むことで実現したのだ。
 アンケートの結果、なんと食費の70%以上が、村外の店から購入した分であることが判明。そして各家庭が毎月370円分、村内での購入に置き換えるだけで、村外へ流出する食費のうち1%の穴がふさがり、年間220万円以上のおカネが村に残ることがわかった。
 たった1%でも、続けていけば1%の所得をつくり出し、ひいては毎年人口1%分の定住増加につながっていく。
 村澤さんたちは昨年末から、村の旧ホテル施設を改修しながら野菜や特産品の販売を試みている。「店が減って、とくに新鮮な肉や魚が手に入らずに隣の飯田市へ買い出しに行く人が多い。今後はここに冷蔵庫も備えて肉や魚もぜひ扱いたい」と村澤さん。村の商品を組み合わせた「370円セット」も検討中だ。

天龍村役場総務課むらづくり推進係
☎0260‐32‐2001

感謝をこめて「長靴投げ大会」
直売所の客も売り上げも増えた

樋口維史


長靴は手で投げる

福島から
 南米ペルーのマチュピチュ村と姉妹都市の提携を結んだ大玉村。村が経営する「あだたらの里直売所」では、面白いイベントを開催しています。「長靴投げ大会」です。
 企画したのは、若手地域おこしグループ「ブルースカイおおたま」(鈴木正広代表)。メンバーには直売所の出荷者も多くいます。あまり活用されていなかった直売所横の芝生広場を使って地域を盛り上げるイベントができないか検討した際、「農家が誰でもお世話になっている長靴を、日頃の感謝を込めて遠くまで投げ飛ばそう」と思いつきました。
 昨年12月に第1回を開催。100人近くの参加者が集まりました。参加費は1人300円。子供の部、成人女性の部、成人男性の部の3部に分かれ、「マチュピチュまで届け!」とめいっぱい長靴を投げました。優勝者には、村内産のおいしいお米など豪華賞品が贈られるとあってみんな本気。成人男性の部の優勝者は35・3mも投げ飛ばすなど、とても盛り上がりました。ちなみに投げる長靴はどの人も同じものです。
 このイベントに参加した人の何割かは直売所に寄っていくので集客効果も出たようです。例年の同じ時期に比べると、1日の売り上げが2倍になりました。
 第2回は田植えが一段落した今年6月5日に開催。年2回ほどの定番イベントとして続けていくそうです。

あだたらの里直売所
☎0243‐48‐2317

「いどう薫」を88軒に普及
廃材、桜チップで燻製の里づくり

水野研介


「いどう薫」縦・横45cm、高さ90cm

長野から
 伊那市西春近地区の加納義晴さんは、ウッドクラフト店「木棲舎」や、財産区有林管理の代表。もっと木の魅力を伝えたいと、様々な木製品の普及活動をしています。
 加納さんは燻製づくりが趣味。スモークチーズも販売しています。数年前、地区を「燻製の里」にしようと、『現代農業』をヒントに、簡単に手づくりできる移動式燻製器「いどう薫」を開発しました。軽トラで手軽に運べます。
 材料は選挙ポスター掲示板のべニヤ板。選挙管理委員会に事前に話しておくと使用後にもらえます。これを半分あるいは4分の1に切って、インパクトレンチで固定すれば完成。2時間以内につくれます。「おいしい燻製は道具から手づくりしてこそ」と加納さん。公民館活動や小学校の「燻製クラブ」などでワークショップを重ねてきました。おかげでいまや「いどう薫」は、地区1600戸のうち88戸に普及。個人的に習いにくる人もいて、最近は女性のほうが多いとか。「味が本格的。台所でフライパンを使ってちょっと薫香をつけるのと全然違う」とみんな驚くそう。
 チップも手づくり。「桜がおススメ。市販のものほど細かくしなくていい。地元で切り出された枝を、ノコギリやナタで親指大くらいにしてやれば十分ですよ」
 いまでは自治会の山の整備作業などの後、みんながそれぞれ自分の燻製器を持ち寄り、燻製をふるまいあっては交流を楽しんでいます。地元の廃材と桜で、燻製の自給圏構想が進行中です。

ウッドクラフト木棲舎
☎0265‐74‐1835

村ぐるみで多品目野菜を市場出荷
「野菜委員会」

向井道彦


朝日村のレタス圃場

長野から
 朝日村のJAに出荷する野菜農家はみな「野菜委員会」に入っています。つくっている作目はレタス、キャベツ、ハクサイなど各戸バラバラですが、作目ごとの部会ではなく、どの農家もすべて「野菜委員会」として、JAを通じて市場に出荷しています。
 主な取引先は地方の市場。大産地から大ロットで入れる大きな市場と違い、地方の市場には多品目を求めているところも多いのです。そういう市場30?40カ所と取引して、ウィンウィンの関係を築いています。2004年にJA松本ハイランドに合併するときも、この組織は残してもらいました。
 現在メンバーは200軒。レタス、キャベツなどの専業農家もいますが、定年農家や兼業農家の小さい農家もいます。規模や経営に関係なく同じ村の農家同士、顔の見える関係で、市場の要望に合わせながら細かい出荷の読みや依頼ができるのも強みのようです。例えば、ここは川上村や嬬恋村などの大産地より1カ月早くキャベツなどが出せるので、その時期のキャベツが増えるように農家に依頼したりしています。また、少量でも市場が欲しがる野菜を作付けすることで、抱き合わせで売る主力品目を高く仕入れてくれたりもするそうです。
 出荷量と品目のきめ細かい調整により、地方市場の信頼を得ている野菜委員会。専業農家なら年間手取りは1000万円を超えることもできるそうで、若手もどんどん戻ってきています。雇用を入れずに家族経営で作業をまわすことに長けているところもこの村の魅力。古き良き、農村の姿が残っている気がしました。

29戸に小型バックホー15台
自主施工のむらにUターンが増加

加藤 友


「北原早生」の園。着色や糖度を高めるシートマルチ
栽培を導入するなど経営改善にも取り組む

福岡から
 みやま市山川町の伍位軒地区は、総世帯29戸のうち27戸がミカンの専業農家です。2000年に中山間地域直接支払の協定を結んだことをきっかけに、地区内の2集落が連携し、自主施工で生産環境や生活環境の整備を進めてきました。
 むらの活動テーマは「自分たちでやれることは自分たちでやろう」「後世に残るような仕事をしよう」。この言葉どおり、2つの集落をつなぐ道路(4m幅)のコンクリート舗装や、農道の排水をよくするためのコルゲート管の埋設(計400m)など、なんでも業者任せにせず自主施工でやってきました。資材の購入や機械の購入・リースには中山間の交付金や市の事業費等も使います。
 そして、むらを囲むミカン山の木がとにかく若い! 01年に地区内の園地から「北原早生」という高品質な新品種(いいものだと1㎏400円。通常の温州ミカンの2倍!)が発見され、順次改植を進めているからです。改植と同時に、全園地にスピードスプレーヤが入れるよう自分たちで園地整備もしました。共用の小型バックホーも購入しましたが、順番待ちになることも多く、個人やグループで購入する人が続出。現在集落内には15台もの小型バックホーがあるというから驚きです。費用は業者に委託した場合と比較して1/3
で済みました。
 整備後、防除時間は1/7に、薬剤散布量も4割減。「作業がラクになって年収も増えた。息子や娘に自信を持って『帰ってこい』と言えるようになった」おかげで、山奥のこのむらに4年間で40歳以下の4組がUターン。小学生以下の子供が15人になり、一気に子供の声が響くむらになりました。

要介護者でも出荷できる直売所
あさくちグリーンマーケット

原田順子

直売所の建物はドアもない小屋だったが、
出荷者も協力してリノベーションした

岡山から
 浅口市のあさくちグリーンマーケットは、訪問介護事業も行なう㈱ヘルパーステーショングリーンが経営する、介護予防を兼ねた直売所。社長を務める三井津好恵さんは、いつもジャージ姿が決まっている素敵な40代女性です。
 三井津さんが直売所を始めたのは7年前。地元のおじいちゃんやおばあちゃんに喜んでもらおうと始めましたが、だんだんと介護が必要になったり病気になったりで出荷できなくなる農家が増えてきました。そんな姿をみて、「何とかしたい」と一念発起。訪問看護の会社を立ち上げてしまいました。 いったんは、訪問介護と直売所運営の両立が難しくなり直売所を閉店した時期もありましたが、出荷者からの要望も強く、昨年再開。現在は100名ほどの出荷者が登録しています。
「介護が必要な高齢者にも活躍してほしい」と、三井津さんがヘルパーとして訪問する先の高齢者の皆さんも、庭先でとれるキンカンや家庭菜園の菜っ葉などを袋詰めしてせっせと出荷します。高齢者の介護予防だけでなく生きがいの場としても機能しているのです。
「幸せをつなぐ小さな直売所」のキャッチコピーのもと、その他にも、餅つきやコンニャクづくりなどのイベントを実施。最近は1人で夕飯を食べる子供たちを集めて、一緒にご飯を準備して食べる「子ども食堂」の運営など活動は広がりをみせています。
 直売所は、水・木・金・土の8時半から13時まで営業しています。

あさくちグリーンマーケット
☎0865‐44‐2550

要5年に1度の森からのお裾分け
「ブナの実羊羹」はいかが?

編集部

1本にブナの実が5粒入っている。
購入は信州いいやま観光局高橋まゆみ人形館

長野から
 次の販売は5〜7年後というから、まさに幻の逸品。信州大学の井田秀行准教授と一般社団法人信州いいやま観光局が共同開発した「ブナの実羊羹」は、スティックタイプで1本540円と高級ですが、けっこう売れています。
「ブナの豊作は5〜7年に1度。昨年は運よく大豊作で羊羹も製造できましたが、昔から『ブナの実1升、金1升』といわれるように、森からの貴重なお裾分けなのです」と井田先生。
 3年前に始まった井田研究室のブナの実活用プロジェクトは、今では飯山市内に小さい仕事を生み出すまでになりました。
 国有林や集落の裏山でブナの実を拾って皮むきするのは、福祉作業所・NPO法人ここからの面々。それを「いいやま食文化の会」の母ちゃんたちが、地元産の小豆と合わせて羊羹にします。こうした一連の作業賃が販売元の信州いいやま観光局から入るしくみになっています。
 もともとブナの実羊羹は25年前、山形県小国町の和菓子屋さんが「べにばな国体」に合わせて商品化したものでしたが、その後は途絶えていたので喜んでレシピを教えてくれたそうです。
 井田先生によると、ブナの実はクルミに比べて高タンパク、低脂質。また、抗酸化力も高く、リジンが多い小豆との組み合わせは栄養バランスにも優れているとのこと。今回は限定1500本、在庫も少なくなってきたので、ご注文はお早めに!☎0269-67-0139まで

信州大学教育学部 井田研究室
☎026‐238‐4115

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