「突然ドーンとなって、体がベッドから30cmは浮き上がった」。4月16日未明、熊本県西原村を震度7の大地震が襲った。
「竹とんぼ」の店長・小宮楠緒さん(72歳)は震災後、数日間は車中泊となったが、幸い自宅と店の被害は少なかったので、4月末にはなんとか店を再開することができた。
 だが、主要道路は寸断されたまま。5月のゴールデンウィークは、本来もっとも書き入れ時なのだが客足はなく、売り上げは諦めざるを得なかった。
 小宮夫妻は1981年に熊本市内に店を構え、24年前に西原村に移ってきた。
 俵山の麓の40戸ほどの集落で、書店の経営が成り立つのだろうかと思ったが、児童書に特化したこだわりの店づくりで、緩やかだが売り上げは右肩上がり。お客さんからは「奇跡の本屋」と言われるほどだそうだ。
 楠緒さんの父、翻訳家の故・北御門二郎さんが「良書が置いてあれば人は必ず集まってくる」と常々言っていたのにならい、絵本や児童書、図鑑など、こだわりの選書を貫いてきた。大型書店のような売れ行き良好書は置かず、自分が面白いと思う本だけ仕入れる。

店内には時代の流れに左右されない、こだわりの絵本や児童書がズラリと並ぶ。なかでもオススメは、マリー・ホール・エッツ作・絵、石井桃子訳『海のおばけオーリー』(岩波書店、1974年)

 流行本を手にとるお客さんには「併せてこちらの本もどうですか? ぜひ比べて読んでください」と紹介。比べることで良質の本を発見してほしいのだ。
 移転以来、絵本の読み聞かせ活動にも継続して取り組んできた。今でも自宅の居間を開放し、地元で読み聞かせ活動をしている母親たちと勉強会を開いている。「読み聞かせは技術ではなく、絵本の中身(選書)が大事。子供に聞かせる前に、まず自分で読み比べて感じることです」
 一方、学校や図書館へ出向く営業にも力を入れる。外商は「正確、丁寧、迅速」がモットー。細かい対応で信頼を最優先にする。おかげで震災後、「西原村で唯一の本屋を守ろう」と、新規の取引校が増えている。
「地域へのタネ播き(関係づくり)を続けていけば、ド田舎でもやっていける」
震災を体験し、改めて本質がわかったと、楠緒さんの目は前を向いていた。

熊本空港から阿蘇俵山方面へ車で30分、大切畑ダムのほとりにある児童書専門店

子どもの本の店 竹とんぼ
〒861-2402 熊本県阿蘇郡西原村小森1847-3
☎096-279-2728
営業時間9:30〜18:00(定休は年末年始のみ)

文=農文協九州沖縄支部 青田浩明

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