このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

兼業農家も育てるべし
農家育成に燃える農業生産法人

編集部


丹波村㈱のメンバー。中野さん(中央)
含め全員が新規就農者

京都・福井から
 京都府京丹波町の農業生産法人丹波村㈱は、6年前に移住した東京出身の中野武久さん(51歳)が代表を務めます。町内に3ha、福井県おおい町、旧美山町にそれぞれ約1haずつの圃場があり、主に3人(従業員1人、研修生1人)でホワイトコーンなどの野菜を栽培。持ち前の営業力で販路を開拓し、百貨店などにすべて直接販売しています。
 そんな中野さん、移住以来「田舎に若い農家を増やさないと大変だ」と感じていました。過疎化・高齢化は予想以上で、地域の活気は失われるばかり。でも勤め先はない。なら農家を育てるしかない!
 これまでも個人的に研修生を受け入れたり、若者を雇用したりしてきましたが、2016年11月におおい町と京都学園大学バイオ環境学部(亀岡市)とで産官学3者協定を結び、今後連携して農家を育成していくことになりました。
 計画では、おおい町内の遊休施設を農業研修の拠点「イノベーターキャンプ」に整備。学園大のインターンシップを受け入れるほか、「農業指導者育成コース(5年)」「地域の担い手・独立コース(4年)」「農ある暮らし・半農半Xコース(2年)」(研修期間中の家賃食費無料)を用意し、農家になりたい若者を受け入れます。
 ポイントは、半農半Xコースを設けたこと。農村に暮らすなかで、農村を支える兼業農家の大切さに気づいたからです。「国のいうように20haを1人でつくる専業農家だけじゃだめ。農業をしながら自分のやりたいこともできる兼業農家の育成こそ必要。今はそういう生き方をしたい若者も多いはずです」。芸術系など、都会では食べていくのが苦しい若者を積極的に受け入れたいそうです。

景観づくりを30年続けるむら
水車も橋も住民の手づくり

向井道彦


屋根つき、木造の太鼓橋

愛媛から
 内子町の石畳地区では、子供たちに誇りを持ってもらえる地域をつくろうと、30年前から「石畳を思う会」(約20人)が活動しています。1989年、当時12人のメンバーが1人5万円ずつ出して、水車を手づくりしたのが最初の活動。いろんな技術を持つメンバーが協力し、山から木を切り出すところから地ならし、建設に至るまですべて自力でやりました。
 その活動が数々の地域づくりの賞を受賞。賞金を使ってさらにもう1基、町が後押ししてくれてまた1基、現在地区内では計3基の水車が回っています。おかげで、水車で米を搗いて販売しようと5〜6人の「水車米」というグループができたり、毎年11月3日に水車祭り(来場者は2000人!)を開催するようになったり、地域の活気が生まれてきました。これ以外にも景観を大切にした地域づくりを勉強しにスイスまで行ったり、古民家を宿に改修したり、コンクリ護岸の川に石積みで水制の堰をつくったり、石畳らしい景観づくりを続けています。
 そんな石畳地区にある創建1369年の弓削神社の屋根つきの木造橋「太鼓橋」にも、「古い伝統には価値がある」という石畳を思う会の哲学が生かされている気がします。この橋は氏子30軒が7〜8年に1度、丸太の橋脚を交換したり、屋根の杉皮を葺き替えたりとメンテナンスをしています。会のメンバーで氏子でもある岡本實男さんは「コンクリにしちゃえばラクだけど、やっぱりふるさとの景観は大切にしたいから」。工事はボランティアですが、毎回全戸が参加。自分たちでつくる景色は、ずっと残り、地域を元気にしていくんですね。

景観も経営もよくしよう
多面的で緑肥のタネ代を補助

高橋明裕


満開になった緑肥のヒマワリ

北海道から
 中富良野町の多面的機能直接支払の活動組織「東山地域環境保全組合」(1213ha、農家98戸を含む計289戸)では、多面的の交付金で個人の農家が使う緑肥のタネ代の一部を補助しています。
 補助は2007年度から。当時道内で緑肥に交付金を使う事例はなく、北海道土地改良事業団体連合会には「営農活動にあたる」と反対されました。しかし、組合の会計だった石神唯安さんは「花が咲く緑肥なら景観もよくなる」と交渉。認めてもらいました。
 この地域は転作田でのジャガイモやタマネギの栽培が盛んな地域です。石神さんは20年以上前から秋まき小麦のあと、タマネギの前にヒマワリ緑肥を取り入れ、効果を実感していました。「ヒマワリはリン酸の吸収を促すから、タマネギが増収する。もちろん肥料代も抑えられます」。加えて、10月頃に満開を迎えるヒマワリはとっても綺麗。みんなで取り組めば一面ヒマワリ畑になるのに、と感じていました。
 石神さんが使うヒマワリ緑肥「夏りん蔵」の経費は10aあたり3000円程度。交付金で補助を始めた当初は「景観緑肥」として花が咲くヒマワリとキカラシのタネ代の70%を助成していました。多面的が「日本型直接支払」として法制化された3年前からは、補助率を50%に下げる代わりに、「土壌侵食防止」という名目で、センチュウ害を抑えるヘイオーツやソルゴーも補助対象にしました。
 現在、緑肥を使う農家は約30戸にまで増加。地区内の農道約1㎞は「ひまわりロード」と呼ばれるようになり、16年には、観光協会主催のサイクリングツアーも初開催されました。

親イモと規格外の子イモで
町の名物サトイモコロッケが誕生

佐藤嗣高


イベントでは1個120円で販売。
冷凍コロッケ(5個入り600円)も人気

富山から
 入善町で米30haとサトイモ10aなどの野菜を栽培する㈱Stay goldてらだファームの代表・寺田晴美さん。規格外のサトイモがほとんどタダみたいな値段で取引されたり、食べられる親イモが捨てられたりすることに疑問を持ち、それらをコロッケにして販売できないかと思いつきました。まずは農業祭や直売所で試験販売してみたところ大好評。約2カ月で3500個が売れました。「これはイケる」と踏んだ晴美さん。農家の奥さんや娘さんなど、女性7人に声をかけ、2013年夏に「百笑一喜」を設立。本格的にサトイモコロッケの製造販売をはじめました。
 サトイモは11〜2月にJAの加工室を借りてコロッケに加工し、急速冷凍庫に1年分を保存。順次イベントや直売所で販売していきます。材料は親イモと規格外の子イモ、入善産のタマネギ、富山県産の挽肉など。子イモだけだと生地が柔らかくなりすぎますが、親イモを混ぜるとちょうどよい固さになり、表面はサクッ、中はトロッの新食感!になるそうです。
 いまでは年10回ほどのイベントや直売所での販売で年間2万5000個を売り切るほどになりました。晴美さんの家の規格外品だけでは足らず、出荷組合の仲間からも仕入れるようになり喜ばれています。また、百笑一喜のメンバーも「農閑期がこんなに楽しくなるなんて」と喜んでおり、それまで親や夫の手伝い程度だった人も、主体的に農業を楽しむようになりました。地元では少しずつ知名度も上がっており、町の新しい名物になるのではとの期待も高まっています。

(株)Stay gold 寺田ファーム
☎0765‐72‐3753
http://terada-farm.com/

うちのホテル、お米は全部
目の前の田んぼ産です

水野研介


農業未経験だった女将さん(中央)も
30aの田を借り、米づくりを始めた

新潟から
 佐渡市椎崎温泉の「ホテルニュー桂」(客室数50室)の女将、渡邉てるみさんに聞きました。ニュー桂では5年前から、提供するお米を少しずつ地元・原黒集落の農家が生産するものに切り替えてきました。2014年からはついに100%地元産を達成。「うちのお米は目の前の田んぼでつくってるんですよ」とお客さんにもPRしています。
 きっかけは東日本大震災。全国的に米の需給が逼迫したせいか、いつも購入していた地元の農協から「佐渡産コシヒカリが足らず、8月末以降納品できなくなった」と知らされました。新米の入荷まで1カ月強。てるみさんは島内の旅館約20軒の女将仲間で融通しあったりして、なんとか切り抜けましたが、これを機に「やっぱり地元の、顔が見えるお米を提供したい」と思うようになり、地元の農家に取引を呼びかけました。
 現在は、協力してくれる6人の農家の生産者組合から毎年4〜5tほど精白米で購入しています。納品は手持ちがなくなる度に、なんと毎回30㎏袋ずつ。「大変だから何袋かまとめて持ってきてもいいですよ」と言っても「精米したてが一番おいしいから」と農家が譲らないとか。その甲斐もあり、以前に比べ、おひつの空っぽ率やおかわり率が増え、消費量は確実に増えているそうです。15年からは朝食バイキングでのパンの提供もやめ、「目の前の田んぼの米」をホテルの目玉にしています。
 農家の意識も変わり、農道を散歩するお客さんに挨拶したり、子供を田植え機に乗せてあげたりしています。

ホテルニュー桂
☎0259‐27‐3151
http://sado-katsura.jp/

味噌用大豆くらいつくらんか!
JAの「大豆ひとにぎり運動」

加藤 友


味噌用のこうじをつくっている

愛媛から
 手前味噌という言葉があるくらい、お味噌は各家庭でつくり方や味が異なるものですが、JA西条の女性部では2004年に農産物加工研修施設ができたのをきっかけに、共通のレシピで自家用味噌づくりが始まりました。裸麦と米、大豆、塩でつくる味噌で、これが本当においしく、今もみんなこのレシピを引き継いでいるそうです。
 味噌は5〜6人のグループで110㎏を、3日間かけて仕込みます。こうじ用の米は各自持ち寄りますが、その他の材料はJAが用意。あとで費用を支払います。管内には70組ほどの味噌づくりグループがあり、JAの担当者は加工所の年間スケジュールを組むだけでもとても大変。そんな味噌づくりの盛んな地域なのですが、じつは大豆を出荷する農家がおらず、地域外のものを購入しています。しかし1年前、「自分たちの味噌の大豆くらい自分でつくらんか!」と言う一人のじいちゃんが出現。背中を押され、JAは16年から「大豆ひとにぎり運動」を始めました。
 まずは大豆の栽培講習会。1㎏100円という破格の値段でタネを用意し、「最初は一握りの大豆から播いてみましょう」と呼びかけました。収穫できた大豆はいったんすべてJAで買い取る仕組みです。初年度は20人ほどが家庭菜園の隅などに播きましたが、猿害にあったりして順調に育ったのは12〜13人とのこと。需要量には全然追い付かないので、当分は仕入れざるをえませんが、「いつかはみんなで西条産大豆100%の味噌をつくろう」と活動を進めていくそうです。

JA西条地域ふれあい課
☎0897‐64‐9025

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