このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

「多面的」で学校田のアイガモを購入

樋口維史


アイガモ

岩手から
「農地・水」から多面的機能支払に移行して3年。交付金の使い方は地域によってさまざまで、活動内容もそれこそ「多面的」です。
 二戸市にも、ユニークな活動で元気な地域がありました。安比地区の「御辺地の大地とふれあう会」は、水田55ha、農家76人などで2007年に設立した活動組織。「農地・水」の開始以来、地元の御辺地小学校の農業体験(学校田)を応援して10年になります。
 3年前からは多面的の交付金でアイガモのヒナを5羽購入。毎年5aほどの学校田に放して、アイガモ農法による米づくりに取り組んでいます。アイガモのエサ代、カラス除けのネット代、メンバーの日当なども交付金から捻出。会にとっても、すっかり恒例行事となってきました。
 田植え後、6月の放鳥から8月のイネの出穂までの期間、アイガモの世話をするのは児童クラブ(学童保育)の子供たち。放課後、学校帰りに、農家の高田一実さんと一緒にエサやりをしたり、ヒナの調子を見たりと、足しげく田んぼに通っています。「子供たちがアゼをゆっくり歩くと、その後をヒナたちがトコトコと追いかけて行く。その様子がなんともほほえましい」と高田さん。
 秋には、イネ刈り鎌を持ってみんなでアイガモ米を収穫。昔ながらのはざ掛けで自然乾燥させた米の味は格別で、親たちからの評判も上々です。また昨年は、役目を終えたアイガモを、会のメンバーがさばいて焼き鳥にしたそうです。
 全校生徒が30人ほどの小さい小学校ですが、通学路にアイガモ田んぼがあることで、とってもにぎやかな学校生活になっています。

イノシシよけに効果大、電柵沿いの軽トラ道

佐藤悠夢


スギを伐採し軽トラ道をつくっているところ

福井から

 集落のまわりに電柵を張っても、イノシシが入ってくることがあります。イノシシは柵の周囲に身を隠す木や藪があると柵まで近寄り、隙間を見つけ侵入するそうです。
 福井県池田町・伊藤弘文さんの集落では、山際に軽トラックが通れる道をつくり、その道をはさんだ集落側に柵をつくりました。イノシシからすると、身を隠す場所がないので柵に近寄りづらい環境になっているわけです。
 この軽トラ道、獣害対策にかかわる県の補助事業を使ってつくりました。山の持ち主の了解を得、スギの木を伐採して500mの道をつくったところ、「草刈りがしやすい」「山に行きやすい」と持ち主から大好評。うちの山にも道を通してほしいと次々に声があがって、3年間で2kmの山道を通すことができました。
 電柵の設置は、「農地・水」の事業を使って自分たちでやりました。その後の管理は、電柵を5ブロックに分け、それぞれに管理者を決めて草刈りやメンテナンスを任せています。
 あれほど頭を悩ませていたイノシシの被害はすっかりなくなりました。イノシシ対策の成功をきっかけに、皆でむらを守ろうという気概が芽生えてきたそうです。

畑仕事にこうじづくり…利用者が主人公のデイサービス

上原野亜


デイサービスでこうじづくり

宮城から
 1日に20人が訪れるデイサービス「とやけの森」を経営する日野宏敏さん。自宅は、父親を中心に繁殖和牛15頭を飼い、イネ6ha、牧草1・5haなどをつくる農家で、とやけの森はその敷地の一角にある。
 都会の高齢者福祉施設とは一味違うこのデイサービスでは、庭にある5aの自給畑で、利用者のおじいちゃん、おばあちゃんたちが野菜づくりを楽しんでいる。
 今年は何を植えようかと、話し合って決めるのは利用者だ。もともと農家だった方も多く、野菜づくりはお手のもの。家では「危ないから畑に出ないで」と言われているお年寄りも、ここでは思う存分に腕をふるうことができる。鍬をもつ人、苗を運ぶ人、といった役割分担も自然にできてくる。
 さらに、エダマメをずんだに加工したり、ダイコンを切り干しにしたり、こうじをおこして味噌・甘酒をつくったりと、「とやけの森」にはお年寄りの暮らしの知恵が光る場面がいっぱいだ。仕事を楽しむ高齢者は、じつに生き生きとしている。
 福祉施設では、利用者が引け目を感じてスタッフに「悪いね」と言う場面がよく見られるそうだ。「この関係を少しでもひっくり返したいんです」と日野さん。「自分の仕事が評価され、感謝される。そのための手助けをしたいんです。誰もが生きがいを持って過ごせる社会にしたい」と思いを語る。

転作作物を活かしてほろ酔い自給圏

樋口維史


小麦とカボチャの焼酎

宮城から
 宮城県白石市の、4自治会142戸の農家からなる農事組合法人・八宮農業生産組合では、転作作物として15年前から小麦8・5ha、カボチャ30aを栽培しています。
 小麦(品種はゆきちからなど)はJAに出荷するほか、地元の製麺業者との契約栽培で、白石市の特産品・温麺に加工されています。10年ほど前からは、珍しい小麦焼酎の製造も始めました。福島県郡山市の酒蔵に委託し、小麦450㎏を毎年焼酎に加工してもらっています。できあがった「小麦焼酎八宮」は720㎖入りで1300円。年間1000本つくります。7割は生産組合のメンバーが買い取り、3割は商店を経営する(酒販免許を持っている)組合メンバーに販売してもらいます。
 最近は、カボチャ1tも焼酎に加工するようになりました。こちらは女性好みの味が評判で、組合員に購入してもらっているそうです。
 今後は法人自体も酒販免許をとり、直売所や計画中の道の駅で一般販売もしていこうと計画しています。

世代と場所を越えて愛される地域の広報紙

上原野亜


「みつくら」の15日版

岩手から
 1市3町が広域合併してできた花巻市には、旧村や大字の単位で活動する「コミュニティ会議」が27組織ある。旧石鳥谷町・大瀬川地区の「大瀬川活性化会議」もその一つ。広報「みつくら」を毎月2回、1日と15日に発行し、全戸に配布している。広報紙の名前は地域のシンボル「三ツ鞍山」からとったそうだ。
 1日版は事務局を担う役場の職員がつくり、行事の案内などが中心だが、15日版は地域住民がつくる。十数人の編集委員が、住民の身近に起こった出来事を集めて記事にしている。冠婚葬祭の話題には、その人の生い立ちや人となりが詳しく記されたりするのも特徴だ。
 記事中の人名に屋号を添える工夫もある。若い人の名前だと、高齢者にはどこの家の話かわからないことがあるが、屋号なら「あぁ、あの家か」となる。
 旧石鳥谷町といえば南部杜氏が有名。大瀬川地区には、冬に蔵元へ出稼ぎに行く杜氏が現在10人いる。この人たちには、蔵元まで郵送し、2週間ごとの地域の話題を届けている。
 また、「みつくら」は花巻市のホームページからも読むことができる。関東に住む旧石鳥谷町出身者でつくる「町人会」のメンバーも、よく読んでくれているらしい。
 新聞より「みつくら」を心待ちにしている人も多いとか。世代や場所を超え、大瀬川に縁のある人たちを優しくつなぐ広報紙なのだ。

集落活動センターでスギ苗を栽培

稲福真一


旧西峯小中学校のグラウンドを活用した育苗ハウス

高知から
 高知県版の地域運営組織「集落活動センター」(p111参照)。複数集落の住民が連携しながら、旧小学校や集会所などを拠点として、高齢者見守り活動や健康づくりの活動、特産品づくりや農産物販売などまで行なう組織です。
 大豊町西峯地区の集落活動センターでは、3年前から県と町の補助を受けながらスギのコンテナ苗を栽培しています。西峯地区は7集落で構成され、147世帯222人、高齢化率73%と、高知県でも過疎化が進んでいる地区。高齢者の仕事づくりにと始まったのがスギ苗の栽培です。はだか苗(露地栽培)と比べるとコンテナ苗は植林したときの活着率がよく、値段も1・5倍ほど高く売れるそうです。
 栽培は単純で、深さ20㎝、40穴の専用コンテナに春にタネを播き、秋に30㎝の高さになったら森林組合などに販売します。年中栽培でき、管理も簡単。現在は6人が交代で水やりなどをし、日当がセンターから支払われています。
 昨年は2万本を栽培。今後ハウスを増設し、生産を拡大する予定です。

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