水路の目地補修は水中パテ+コンクリートがラクで長持ち
向井道彦
鳥取から
南部町の持田茂文さんの田んぼに水を引く水路には、補修が必要な目地がたくさん。
以前はシーリング材で補修していたのですが、充填に必要な下塗り材(プライマー)が近くでは売っていません。そのうえ、山からのわき水が常に流れてくるので、作業前に水路を乾かすのも大変。また、集落の泥さらえのときスコップを当てられたりして壊れることが多く、せっかく直しても1年ももたないのが悩みでした。
そんなときに知ったのが、水の中でも固まる性質をもち、濡れた箇所でも補修できる水中パテ(本誌28号p30)。高価ですが、プライマーが要らないうえ、次のような方法で長持ちさせられます。
まず水を止め、目地を掃除し、ハンマードリルとグラインダーで溝を切ります。そこに発泡スチロールの芯を入れて、水中パテの本剤と硬化剤を混ぜて手でこね、細かくちぎって埋め込んでいきます。
ただしパテは目地いっぱいに入れないで、指の腹が入るくらいに少なめにしておきます。その上から、硬めに練ったコンクリートを薄く載せていきます。スコップを当てられても水中パテが割れないよう、コンクリートでカバーするのです。この作業は、パテが乾くのを待たなくてもいいそうです。
シーリング材と比べると施工前の掃除にそれほど神経を使う必要がなく、掃除後の乾燥が不要なのも水中パテのいいところです。
「多面的」を活用、特産の瓦で水路を装飾
佐藤悠夢
兵庫から
南あわじ市の「上幡多農地水環境保全推進委員会」は、2007年に設立された多面的機能支払の活動組織。花の植栽や水路の清掃・補修だけでなく、地域の農業を支えるため池や水路に子供たちが親しんでくれるよう、ため池でのヨットセーリング体験、イルミネーションなど、幅広い活動を展開してきました。こうしたイベントも、生きもの調査やため池の学習活動と一体であれば「多面的」の交付対象となるそうです。
2年前からは、島特産の瓦を使った水路の装飾を始めました。良質な粘土からつくった淡路瓦は美しいと評判です。この淡路瓦が、地区を流れる水路の岸に、長さ20mあまりにわたって埋め込まれています。
毎年夏、市内の瓦工場で子供たちが、粘土にアニメのキャラクター、ため池に住む魚など、思い思いの絵やメッセージを刻みつけます。それを焼き上げ、冬、イルミネーションの点灯式の日に据え付けます。
「今はイルミネーションやヨットのほうが喜んでくれるけど、将来子供たちにとっていい思い出になると思う」と事務局の秦英喜さん。毎年実施するので、瓦が埋め込まれた水路の岸は年々伸びていきます。
瓦屋さんや左官屋さんに支払う作業費や工費も、多面的機能支払交付金から捻出。「水路の補修」という項目にあたるそうです。
高校農業クラブで、オール地域資源のエリンギ栽培に挑戦
編集部
群馬から
伊勢崎興陽高校の専門クラブ・植物バイオ研究部(部員4名)は、「地域未利用資源の活用」をテーマに、廃棄野菜からのバイオエタノール生成・活用などさまざまな研究活動に取り組んできた。
昨年は、竹チップとニンジン残渣を菌床にしたキノコ栽培に挑戦した。近くのカット野菜工場から出たニンジン残渣を校舎のベランダで天日干ししミキサーで粉末にしたものを、近隣の農家からもらった竹チップに混ぜて菌床をつくった。タマネギやキャベツなど他の野菜の残渣でも試してみたが、水分が多いため腐敗してしまい、ニンジンだけがうまくいったそうだ。
この菌床で栽培するキノコとして選んだのはエリンギ。なぜかというと、「エリンギはもともとエリンギウム・カンペストレというセリ科植物の根に寄生する菌類なので、同じセリ科のニンジンと相性がよいのではないか」と考えたからだ(同部を指導する江原慎太郎教諭談)。これが成功し、見事なエリンギが育った。
さらに今年は、菌床を入れる容器にも竹を活用。放置竹林で伐採したばかりの生竹を輪切りにし、そこに先ほどの竹チップとニンジン粉末からつくった菌床を詰める。チップと容器の両方で、竹の静菌作用が他の雑菌からキノコを守ってくれるそうだ。
30年ぶりに県産小麦が復活 大山こむぎプロジェクト
向井道彦
鳥取から
「いま、小麦が面白いよ。米より手がかからんし、多収のコツもだんだんわかってきた。補助金を含めりゃ1俵(60㎏)1万2000円くらいにはなる」
そう言って小麦畑を案内してくれたのは、南部町の農事組合法人「福成」代表の野口信一さんだ。法人で小麦をつくるようになって5年。3haの畑にミナミノカオリや銀河のちからを作付けする。
「ここは去年まで荒れ地だったところだが、今年から小麦を播く。あっちは今、開墾しているところ」
フレールモアをつけたトラクタが背丈ほどに伸びた草を次々になぎ倒し、粉砕していく。
野口さんによれば、耕作放棄地のほうが土壌が肥えている(チッソが多い)ので、小麦の生育がよく収量も上がるのだそうだ。
小麦栽培のきっかけは米子市のパン屋「麦ノ屋」の出井亘さんが「地元の小麦でパンを焼きたい」と、2010年に立ち上げた「大山こむぎプロジェクト」。30年ぶりの県産小麦復活に野口さんをはじめ4軒の農家が呼応。13年には収穫量36tとなり、学校給食のパンにも利用されるようになった。
15年には、生産農家も大山山麓を中心に8軒に広がり、収穫量も69tに増えている。
昨年10月には、同プロジェクト〝創る会〟が発足。農家、パン屋、ビール会社、レストランが連携し、小麦製品の商品化と県外進出も視野に入れた販路拡大を目指す。
新規就農者も活躍、地域の法人で水田放牧
小森智貴
岡山から
「これならうちでもできそうだ」。高梁市西山地区の吉家仁さんは、市内増原地区の耕作放棄地での短角牛放牧(本誌14号参照)を視察してそう思った。2013年には16戸の農家で任意組織「西山維進会」を立ち上げ、耕作放棄田2haで黒毛和牛2頭を飼い始めた。
牛たちは想像以上の働きをしてくれたそうだ。そこで翌年にはさらに2頭増やし、初めて子牛をセリに出した。牛飼いの技術はほとんど誰も持っていなかったから、「売れれば十分」と思って参加したセリだったが、肥育農家から「足腰がしっかりしている」と喜ばれ、予想の倍の80万円で売れた。
いつまでも任意組織では農地を借りる契約ができないうえ、子牛の販売収入についての税務申告上も具合が悪い。そこで16年1月には法人化。農事組合法人西山維進会となり、農地中間管理機構を通じて8haの借地契約を結んだ。放牧する母牛も4頭増やし8頭に。また、水稲・トマト・ブドウ(ピオーネ)の作業受託も始めた。
維進会には、新規就農者も加わっている。市の募集で新規就農した30〜40代が西山地区には10人近く定住し、トマトやピオーネをつくっている。彼らが牛の世話や牧柵の設置・管理もこなしてくれる。
放牧できれいになった農地は、今のところ維持するのが精一杯の状態だが、いずれは、さらに新規就農者を呼び込むために活かしたいと吉家さんは考えている。
ロケットコンロづくりなら、男性高齢者も参加したくなる
原田順子
岡山から
新庄村社会福祉協議会では、町の高齢者の介護予防のため、地域のボランティア組織が運営する「スマイルサロン」を毎月第1・第3水曜日に開催。コツコツと活動を積み重ねてきました。
しかし、体操や手芸を中心としたプログラムのためか、男性高齢者の参加が少ないのが課題でした。とくに冬場の農閑期ともなると、高齢男性が人とふれあう機会はめっきり少なくなってしまいます。
倉敷市から移住して新庄村社会福祉協議会で働く作業療法士の中塚直希さんは、サロンボランティアの皆さんと話し合う中で、ものづくりの企画なら男性が来やすいのではないかと考えました。そこで、前からつくってみたかったロケットコンロ(ロケットストーブ)を皆でつくってはどうかと発案したのです。
さっそく企画を立てたところ、これまであまり参加しなかった男性高齢者もサロンに来てくれるようになりました。1〜3月で3台をつくりました。
4月にはスマイルサロンが100回目を迎え、記念に高齢者から小学生まで多世代が集うパーティーを開催。40人が集まりました。このとき、皆でつくった3台のロケットコンロが大活躍! けんちん汁を温めたり、燻製をつくったり、もちを焼いたりしました。
「次はピザ窯をつくってみようか」という話が持ち上がっているそうです。