このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

不動産業兼ツバキ搾油所 体験教室も大盛況

水野研介


搾油器とツバキ油

愛知から
 碧南市の不動産業・松原孝史さんは、8年ほど前から、身近にたくさんあるが利用されていないツバキの実から油を搾っています。
 毎年10月頃、近くの山や神社からヤブツバキの熟成した実を段ボール箱10杯分ぐらいとってきます。
 自宅兼事務所に置いた搾油器は自ら考案したもの。実の皮をむき、ジャッキで12tの圧をかけると、1,2kgの実から500㎖の油が採れます。
 1シーズンに30〜40ℓの油を搾り、30〜50㎖のビンに詰めて1000円前後で販売。女性を中心にマルシェなどでよく売れています。
 小型の簡易な搾油器を使い、親子向けの油搾り体験教室も年間20回ほど開いています。タネから油が出てくるのを見るのは初めてという人がほとんどで、大人も子供も大興奮。さらにこの油から石鹸やリップクリームをつくる体験も評判だそうです。
 また、ツバキ以外の実も搾れます。たとえばクルミ油は、ツバキ油と同じく肌や髪に塗るほか、尺八職人からはつや出し剤として求められるそうです。
 要望に応えて小型搾油器の販売もしています。近くの茶農家には茶の実の搾油に、自閉症の子供の支援団体には体験用に売れました。
 油が評判となり、注文に応じきれないこともあるという松原さん。今後は自分の周りに油の搾り手を増やしていきたいと張り切っています。

どん底からの復活! 直売所再びにぎわう

小森智貴


にぎわう四季の里

静岡から

 川根本町の農家の主婦たちが1986年に開いた農産物直売所「四季の里」。ヘチマの化粧品などユニークな商品の製造・販売で一躍有名になり、来客数・売り上げともうなぎのぼりでした。
 しかし10年前ほど前から、お客の高齢化や観光客の減少で経営が悪化。多額の借金を抱えてしまいました。
 そんなどん底状態のなか、3年前に経営を引き継いだのが現代表の嶋育子さん。悪いことは続くもので、まもなく嶋さん自身が大病を患ってしまいます。
 しかし嶋さんは見事に復活。ここから四季の里の「反撃」が始まります。従業員の時給も下げて我慢してもらいながら、新しい取り組みを次々仕掛けていきました。
 まず始めたのは、高齢で来店できないお客への配達。長年通ってくれたお客を大事にしたいと、電話一本で届けます。
 商品を車に積んでの移動販売も始めました。年末年始以外は原則稼働。移動販売だけで1000万円以上を売り上げるようになったそうです。訪問がうれしくて余分に買おうとしてくれるお客を、「必要な分だけでいいよ」と従業員が止めるほどだとか。
 さらに、お正月などギフトの時期に、おまんじゅうなどの加工品セットの販売を始めたところ、これが大ヒット。何百という数の注文が入るそうです。

安売り競争を防ぐ
インショップへの分荷販売

渡邊紗恵子


道の駅で、ベニマルへの分荷作業。出荷農家みんなで手伝う

福島から
 平田村・道の駅ひらたの朝8時半。農家が持ってきた直売野菜が駐車場で仕分けされ、その一部がトラックで運び出されます。行き先は、福島県内を中心に展開するスーパー、ヨークベニマル5店舗。ここで「平田村の野菜たち」として販売されるのです。
 農家は、その日の出荷物のうち、何をどれだけベニマルで売りたいかを申告。道の駅の高野哲也駅長がそれを集計し、どの店舗に何をいくつ送るか振り分けます。
 この仕組みの始まりは、まだ道の駅がなかった2001年。その数年前にIターン就農した高野さんが、あるとき「農家はもっと自分で売る努力をしないと」と言ったところ、大論争が勃発。「じゃあ、言い出しっぺの俺が」と高野さんが営業活動を開始。結果、農家22人で「ひらた高原朝採り野菜の会」を結成し、ベニマルで野菜を販売することになったのです。最初は半信半疑だった農家もこの事業に続々参加。会員は38人に増えました。
 その後09年に道の駅ができ、会は解散しますが、道の駅から分荷する形でベニマルでの販売は続きました。
 今では道の駅での売り上げ金額のほうが大きくなりましたが、この仕組みは、道の駅に品物がだぶついて生産者同士で安売り競争になるのを防ぎ、農家のモチベーションを保つのに欠かせないと高野さんは考えています。

「ピーマン学校」と地域で育てる
新規就農者が毎年10人超

荒井康介


ミニハウス内耕起の実習

大分から
 臼杵市の野津ピーマン生産部会には毎年10人を超える新規就農者が加入し、5年前に67人だった部会員は107人になりました。
 彼らの受け入れ態勢の一つが、15年1月に開校した臼杵市アグリ起業学校、通称「ピーマン学校」での1年間の研修。夫婦・親子など毎年3組まで受け入れています。単身での入校も可能です。
 市から認定された農家が専任講師となり、専用施設で、1組5a程度の栽培管理を実地で学びます。
 雨の日や作業が少ない時期は、廃校になった小学校を利用しての座学。農家やJA・市・県職員などの講師から、土と肥料、病害虫などの栽培基礎はもちろんのこと、農業簿記や労務管理などの経営基礎、農地法や制度資金などの施策までみっちり学びます。
 さらに「部会研修」として、ピーマン生産部会の研修会や講習会に参加することもプログラムの一環となっています。
 もともと地域には、余った資材を貸し借りしたり、地域の顔役が移住者に空き家を斡旋したり、若手農家が作目を問わず集まって情報交換したりするネットワークが広く存在しています。ピーマン学校を卒業した後は、このネットワークがしっかり支えます。
「若いもんはかわいい。おれの若いときよりしっかりしてる」と、部会長・堀長夫さんは新規就農者に期待を寄せます。

先人の知恵を次代に
足かけ9年の聞き書き集が完結

原 敬介


『「むら・人・くらし」の聞き書き集』
(全県版)

山口から
 山口県生活改善実行グループ連絡協議会は、口伝えで伝承されてきた先人の知恵や技、地域の文化を次世代に残そうと、2008年から、『「むら・人・くらし」の聞き書き集』の編集・発刊に取り組んできました。
 県内を8地区に分け、各地域の生活改善グループ員が中心となって、昭和10年代以前生まれの方(中には大正生まれの方も!)に、農業や生活のことを聞き取ります。地区ごとに冊子を発行し、これに全県版を加えた全9巻が、2016年、ついに完結しました。
 例えば、日本海に面した半農半漁地域である長門市油谷地区が載った巻を開くと、「ヨモギの葉で水中眼鏡をこすると曇り止めになる」「鼻づまりのときは、ドクダミをもんで鼻につめる」「乳が出ないときは、生きたメダカを飲ませる(牛? 人?)」などユニークな言い伝えがこれでもかというほど。
 伝統料理や冠婚葬祭、地域の行事のことも詳しく記されています。また、「役牛を左に行かせるときは『さし、さし』と声をかけながら手綱で右横腹を小刻みに叩き、右に行かせるときは手綱を引き寄せ鼻輪が右に向くように強く引き……」などの農業技術も。
 各巻とも300部以上印刷し、小学校の児童に配布したり、公民館に置いたりしています。県外に住む地元出身者に冊子を届けるグループもあるそうです。

堆肥散布から草刈りまで
「たよろー」にお任せあれ

高橋明裕


ビートの収穫を受託

北海道から
 経営の大規模化が進む一方で人手不足に悩む士別市多寄地区の農家。高価な専用の機械を使う作業が増えてきた一方、「トラクタは2台あるけどそれを使えるのは1人だけ」という家も。そんな農家の課題にコントラクター組織㈱サポートたよろーが応えています。
 この組織、2013年に任意団体として立ち上げ、17年8月に法人化。迅速にいろんな事業を展開できる株式会社の形態を選びました。役員は地区の農家6戸です。
 60代の2人(地元の元農協職員と離農者)をオペレーターとして雇用し、機械作業を受託します。機械は、一部を会社で所有し、他は役員が所有するものを借り上げています。
 春は融雪剤や堆肥、地元の製糖工場から出るライムケーキ(テンサイ糖の副産物で、土壌改良剤や石灰質肥料などになる)の散布作業、夏は牧草の運搬(酪農法人からの受託)や草刈り、秋には米やビートなどの収穫と、3シーズンにわたって大活躍。
 さらに、多面的機能支払の活動組織からも、市道の路肩の草刈りを受託しています。
 現在、冬の間は会社は休みだそうですが、将来的にはオペレーターを通年雇用し、地域で課題となっている空き家の解体作業や酪農家の搾乳作業、ハウスの建設なども受託できるようにしていきたいと、発足当時からの代表・笹村等さんは言います。

茶畑に自分がいる風景をお土産に

渡辺謙吾


茶畑での記念写真つきのお茶

静岡から
 静岡市葵区松野の㈲クリーンティ松野は、地域の茶農協が元になって2000年に設立した会社。90人の農家(茶園面積47?ha)から茶葉を買い上げ、歴史ある「本山茶」を製茶・販売しています。また、茶園の土木工事なども農家から請け負っています。
 さまざまな営業活動で販路を広げてきましたが、「商談に出かけるだけでなく、産地へ人を呼んではどうか」という考えから、15年に「お茶ツーリズム」事業を始めました。茶摘み体験や製茶工場の見学、お茶の飲み比べができ、特製「お茶の天ぷら」も食べられるというものです。台湾など外国からの観光客も含め、年間200?300人が訪れるようになりました。
 さらに、お茶ツーリズムに来たお客さんにもっとお茶や茶畑に関心を持ってもらいたいと、ある仕掛けをしました。
 それはお客さんに渡すお茶のお土産。お茶の入った袋には、茶畑の中で撮ったお客さんの記念写真が貼り付けてあります。帰り際にこれを渡すと、お客さんは「ああ、あのときの写真だ」と喜んでくれるそうです。
「お茶畑の風景のなかにお客さんがいないと意味がないんです」と語る総務部長・箕輪匡人さん。お客さんが、少しでも茶畑と自分を重ねて感じてくれるよう願っています。

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