澁澤敬三が「宮本くんの足跡を赤インクで印していったら、日本列島は真っ赤になる」と言った宮本常一と同じように、江戸時代、北海道と東北地方の一部以外はほぼ全国を旅した農学者・実践家に大蔵永常がいる(1768〜1861)。2人は膨大な著作を残し、また定職に就くのも遅かった(宮本58歳、永常67歳)。永常は代表作『広益国産考』の冒頭で「一国を豊かにするための方法としては、まず下々の人民の生活を豊かにし、その結果として領主の利益となるように計画すべきである」(現代語訳)と述べている。
また宮本常一は自伝的『民俗学の旅』をこう結んでいる。
「これから先も人間は長い道を歩いてゆかなければならないが、何が進歩であるのかということへの反省はたえずなされなければならないのではないかと思っている」
企業活動の量的拡大だけが進歩であるかのようなTPP論議がまかり通っている。だが、現在の地域や国民の疲弊はそうした進歩の結果ではないのか。今こそ旅に学び、地域と人びとの暮らしをみつめた2人の言葉をかみしめたい。[甲斐]

小学校を改築した、岩手の「畑学び舎農産物直売所」は、道の駅みたいに大きくはないが、ゆったり過ごしたくなる雰囲気がある(8ページ、表紙写真も)。出荷にきた立花ツルさん(74歳)にお話をうかがうと、組合員になって、いろいろ新しいことに挑戦するようになったという。主な情報源は川崎市で大工をしている息子さんで、北陸出張の折は、加賀野菜の金時草を送ってくれた。金時草は挿し芽で増やす。最初はさっぱり売れなかったが、テレビの料理番組で話題になり、よく売れるようになった。昔、石鹸がわりに使ったサイカジ(チ)の実を試しに出してみたら、「なつかしいし、環境にやさしい」と、お客さんから手紙をもらった。いまも息子さんがすすめた芋を試作中。直売所がツルさんのはりあいのもとになっている。[阿部]

休校中の飛島小学校(38ページ)を拠点とした「飛島いきいき体験スクール」は、子どもの来訪が楽しみな島民の協力で学校再開後も継続している。夏場の3日間、島に滞在して漁や一夜干しなどを体験。市内29校のうち、当初の参加は3校だったが、2010年は12校に。渋谷家の子どもたちも、本土の同世代と交流できる楽しい時間だ。[馬場]

廃校で「コミュニティビジネス」をどう仕組むか?「別俣農村工房」(12ページ)の次なる夢は「週末の食堂」だ。メンバーの長井和子さんは、3年前に食品衛生管理責任者の資格を取得、「別俣には食堂が一軒もないので、帰省した人が集まれる場所をつくりたい」と燃えている。〈思い出校舎〉を舞台にむらの〈小さな仕事〉が生まれそうだ。[蜂屋]

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