このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

渡りをするチョウで観光客誘致

香川貴文


アサギマダラとフジバカマ

長野から
 宮田村は、2000㎞を旅するチョウ、アサギマダラが飛来する村として観光地化を考えた。
 2014年、幹線道路沿いの600㎡超の土地を「アサギマダラの里」と名付け、このチョウを誘引する準絶滅危惧種のフジバカマを植栽。苗は、大町市の栽培農家の株分け作業を手伝い、無料で分けてもらった。
 村内外の約60人にフジバカマの「里親」になってもらい、管理を頼んでいる。各10㎡の区画の草取りなどをしてもらうほか、4月か10月には混んできた株から株分けをする。
 無償のボランティアだが、遠く愛知県から来ている人もいるという。

オレたちのリンゴでシードルづくり

西ノ坊夏生


THE COZY

長野から

 飯田市は果樹の産地。傾斜地にリンゴやナシの樹が一面に並び、そこから飯田盆地が見渡せます。
 JAみなみ信州青年部果樹班でシードルの話が持ち上がったのは2016年のこと。傷物のリンゴを廃棄するのがもったいないと、メンバーの一人が提案したのです。
 シードルづくりの研究は、さまざまな品種のリンゴを、さまざまな比率で組み合わせることから始まりました。試行錯誤を繰り返し、選んだのが「シナノゴールド」「シナノスイート」「ふじ」「紅玉」。風味の鍵は紅玉が握っているそうです。紅玉はもともと、シードルをつくる以前は受粉樹としての活用しかなく、あまり消費されていなかった品種。シードル計画を機に、紅玉の果実にもスポットライトが当たるようになりました。
 そして18年に誕生したシードルの名前は「ザ・コージー」。リンゴの主な生産地である座光寺という地名とかけています。
 今年4月には、さらに改良を進めたものを発売。391kgのリンゴからフルボトル(750㎖、1800円+税)が370本、ハーフボトル(350㎖、1200円+税)が300本できました。3カ所あるJAの直売所や、地元の酒屋さんなどで販売されています。シードル部門のリーダー、福田博之さん、来年は1000本の生産を目指したいとのこと。

20年放置された棚田を復活 てっぺん公園からの絶景

渡邊紗恵子


福島てっぺん公園から望む棚田

長野から
 豊丘村福島地区には約1.2haの棚田があり、うち約70aは20年の間放置されていました。5年前、「このままではみっともない。復活させよう」という話が持ち上がりました。集落の春の宴会の場でのことです。
 自分たちで頑張るだけでなく都会から来て楽しんでもらいたいと、オーナー制にすることを計画。事務局を担うNPO法人だいちが新聞広告を出したところ、名古屋や関東などから応募がありました。現在6組のオーナーがいて、田植え、イネ刈り、収穫祭等のイベントを行なっています。
 しばらく米の作付けをしていなかったので、初年度はヒマワリやドームギクを植えて鑑賞しました。
 翌年からは酒米をつくり、できた酒は地区の獅子舞にちなんで「牡丹獅子」と名付け、村内の道の駅で販売したりオーナーにあげたりするようにしました。
 また、膝まで埋まるほどぬかる田はハス田にしています。
 現在、地区に荒れた田んぼはもうありません。5年前とは見違えるようです。
 さらに、この棚田を見わたせる「福島てっぺん公園」を行政がつくってくれました。飯田や伊那のまち、山々を見下ろすことができて絶景です。公園にはほうきがおいてあり、ほうきに乗って空を飛んでいるような写真も撮れます。7月に灯籠祭り、冬にはイルミネーションも催されます。

遊びも農作業も水力発電も体験にいらっしゃい

板垣紫乃


水力発電の仕組みを描いたボード

長崎から
 長崎市琴海戸根町の約30aの棚田でアイガモ農法を実践する吉川栄二さんは、前職の関係で電気に強い。作業場の横を流れる水路から水を引き、水車で発電している。
 水車は1分間に45回転、発電機は1800回転。1.5kWの電気をつくり出し、電力会社の電気が通る10年ほど前までは作業小屋の電灯、冷蔵庫などすべての電力をまかなっていた。現在も、この発電設備はいつでも動かせるようにメンテナンスしているという。また、ベルトを掛け替えれば水車で精米機も動かせるそうだ。
 棚田とその周辺は、子供たちが自然の中で遊べるようにと吉川さんがこつこつつくった「清流と棚田の里」。田植え、お茶摘み、ウメの収穫に、焚き火や田んぼでのどろんこ遊び、川遊びも体験できる。さらには釣り堀や高さ10mのツリータワー、高さ3m、長さ15mの空中スライダー、薪ボイラーで沸かす一度に10人が入れる露天風呂まである。
 吉川さんは、数式やコイルのイラストが丁寧に書かれた手づくりのボードを見せてくれた。これを使って、体験に訪れた人たちに発電の仕組みを教えるそうだ。ふだんはスイッチを押せば得られる電気、その大切さを子供たちに少しでも理解してもらいたいという。

無人直売所に生産者の顔写真がズラリ

見崎義顕


しもじゅう農産物販売所

宮崎から
 日之影町の大人集落にはとても素敵な無人直売所「しもじゅう農産物販売所」がある。壁に、昔使っていた農具が飾られ、その下には15人の出荷者が笑顔で写った写真が並ぶ。集落内の年中行事の様子を紹介する写真もある。そして主役の野菜がずらり。店の軒先にはスギの木でつくったベンチとテーブルがあり、人々の憩いの場となっている。
 この直売所の発起人は丹部俊夫さん。始まりは、各家で残る自給野菜をなんとか活かせないかという想いだった。出資金として一人当たり2万円を集め、町の補助金が加わり、4年前に完成。
 売れ行きは上々で、夕方にはほとんど売り切れ、町外からもかなりのリピーターがいるとのこと。
 好調の裏には、皆で話し合って決めたルールがある。野菜の品目ごとにグラム単価を統一し、不公平感が出ないようにしているのだ。また、出荷者個人ごとに鍵付きボックスが設置してあり、代金はここに入れる。集落外の農家が出荷する場合は、手数料をとって丹部さん名義で販売し、維持費に回しているそうだ。
 出荷者はみな高齢だが、今まで食べ切れなかった野菜がお金に換わることで、農業への意欲が増したという。野菜だけでなく、漬物やジャム、果汁シロップなどの加工品や、まな板まで売っている。

「半年借地」で地域から農家を減らさない

三輪里子


大西規夫さん(写真=赤松富仁)

香川から
 観音寺市で外国人技能実習生を含め15人を雇用する㈱中大の大西規夫さんは、地域の農家から農地を預かり、レタス(16ha)や青ネギ(6ha)などの露地野菜を栽培しています。
 特徴的なのは、通常の借地に加え、5人ほどの地主さんから計約3haの水田を半年だけ借りていることです。イネ刈りが終わった後に借りてレタスを栽培し、作が終わった後、代かきまでして返すという仕組みです。地主さんは代かきの必要がないので、トラクタなしでも米がつくれます。借地はレタスをつくるときだけにすることで、田んぼを完全に他人に渡してしまった感覚にはならないそうです。
 また、地主さんによっては田植え・イネ刈りの機械作業まで請け負いますが、その場合も普段の見回り・水管理は自分でしてもらっています。田んぼの状態は持ち主がよくわかっているし、水管理なら高齢になってもできます。大西さんにとっても、広範囲の田の見回りをしなくてすみます。
「大切なのは、それぞれができる範囲で農家を続けられるようにすること、地域から農家を減らさないようにすること」と語る大西さん。地域の皆さんからの信頼も厚く、外国人実習生と一緒に掃除などの地域行事に参加することで、実習生と地域との信頼関係も深まるそうです。

ヒツジで農家と園児が交流

小森智貴


ヒツジと遊ぶ園児たち

長野から
 飯田市に住む岩崎勝さんと地域の仲間10人ほどが30年以上前につくった炭焼きグループ「竹炭会」は、10年ほど前、新たな活動としてヒツジ(サフォーク種)の飼育を始めました。
 酪農家だった岩崎さんが昔ヒツジも飼っていて、そのおいしさをよく覚えていたのだそうです。現在、4頭飼っています。肉は、自分たちで食べたり、地区の人を招いてふるまったりします。
 最初、飼育場所は運動場を借り、当番で土手草を刈ってエサとして与えていたのですが、竹炭会には非農家もおり、これがなかなか大変です。そこで、竹炭会の活動場所にしていた20aの水田を牧草地に変え、簡単な柵をつけて放牧しました。
 すると、ヒツジが地域の保育園児たちの人気者に! いつしか放牧場が複数の保育園のお散歩コースになりました。園児たちが柵の中に入ってヒツジと一緒に駆け回って遊んでいくのだそうです。最近は、生まれた子ヒツジの名前を園児たちが決めています。人に体当たりをする子ヒツジは五郎丸という名前だそうです。おかげで竹炭会のメンバーは、今まで交流のなかった世代ともつながることができたといいます。
 さらに、ヒツジの毛を刈って畑の周りにまくと、ニオイを嫌ってハクビシンが寄ってこないそうです。

農家を継いだ名物3きょうだい、コツは分業

宮本奈緒


次男・光さんと次女・真理さん

長野から
 佐久市のミニトマト農家、田中文明さんの子供は4人きょうだい。うち長女、次女、次男の3人が家に戻って農業をしています。
 文明さんは一度も「継いでくれ」と言わなかったそうです。しかし、子供たちが東京の大学に通っているとき、いつも家の野菜を送っていました。
 次女の真理さんは初め家業を継ぐ気はなく、体育教師をめざして運動部で頑張っていました。部活が忙しくて家から送ってくる野菜を食べきれず、他の部員にも配っていたところ、なんと野菜嫌いだった同級生がみんな野菜好きになってしまい、自分の家の野菜のおいしさにそこで気付いたそうです。
 自信の持てるもの、皆が喜んでくれることの喜びに気付いた真理さん、家の農業を継ぐことに決めました。
 一方、軽井沢の洋菓子店で働いており、もともと食べることに関心があった長女の結理さんも、同じ頃に戻ってきました。
 この姉妹、今はトラクタも乗り回す名物姉妹です。
 次男・光さんも種苗会社勤めを経て、自分のやりたいことをやる、と帰ってきました。
 3人にうまくやるコツを聞いたところ、それは分業。寡黙な結理さんは技術面を父から継承し、話好きの真理さんは営業に。チャレンジャーの光さんは、最近人気のアスパラをやろうと勉強中です。

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