石積みの棚田や茶畑に囲まれた中山間地に八女市立図書館星野分館はある。書店がないこの地域では、図書館は貴重な存在だが、車など「足」がない人には不便もある。そこで活躍するのが、集落を巡回する移動図書館だ。今回、司書の柿原富久美さんにお願いして「走る夢のぶっくらんど号」に同行させてもらった。

移動図書館の貸し出し期間は1カ月。多い日は1日に30人以上が利用する

 10時に分館を出発したぶっくらんど号は、山道をグングン上り、20分ほどで一番山奥の集落に到着。スタッフの高木好子さんが車を降り、付近の家に声をかけると、3〜4人が集まって本を選び始めた。推理小説が好きな主婦、料理が好きなおばあちゃん……、高木さんはそれぞれの好みに合わせてオススメ本を紹介する。移動図書館は半日で8〜9カ所の集落を回るので、1カ所の滞在時間は20分ほどだが、みなさん、図書館が来るのを心待ちにしているようだ。
 移動図書館のきっかけは、20年ほど前にさかのぼる。当時は八女市への編入前で、星野村公民館図書室の司書だった柿原さんは「子供たちが本に触れる機会を増やしたい」と、子育てママさんたちと図書ボランティア会「夢の扉」を結成。2000年から軽トラの荷台に本を300冊ほど積んで、月1回、小学校の校庭や集会所を回る移動図書館を始めた。公民館図書室の本だけでは足りないので、県立図書館にも協力を要請。草の根の活動が実を結んで、03年、村が1000冊積める現在の車両を導入してくれた。
 柿原さんは、季節や運行ルートによって車に積む本を替える。あのルートは茶農家が多いから農業の実用書を、今週は老人ホームに寄るから大活字本を入れようなど、選書は「利用者に合う本を見つけるソムリエになったような気持ち」という言葉が印象的だった。

走る夢のぶっくらんど号の運行は毎週水曜日(10時すぎ~14時すぎ)。旧校区単位に分けた4コースを週ごとに回る。写真左から高木好子さん、柿原富久美さん、運転手の小井手勝也さん

福岡県八女市
八女市立図書館星野分館

文=農文協九州・沖縄支部 佐藤 圭

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