このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。

千客万来
農家の手づくり花公園

青木大洋


パークにて上村さん夫婦とくまモン

熊本から
 上村富章さん(73歳)は、人吉市で米や野菜をつくるかたわら、個人で「あじさい蓮れん華げパーク」を経営するアグレッシブな父ちゃんだ。
20年ほど前からスギやヒノキの山林を自力で伐採し、約5haに植えたアジサイはなんと40種3万本。植えたきっかけは亡くなった母親の霊を慰めるためだったそうだが、今では重要な経営の柱になっている。
 今年はアジサイが見頃の6〜7月に500人ほどが来園。アジサイのほか、ツツジやサクラ、ハナモモ、モミジなどもあり、いつ来ても見どころがあるように工夫しているので、1年を通して来園者がある。コロナの前は年間5000〜6000人は来ていた。入園料は300円だ。
 コロナ禍と昨年7月の豪雨災害で地元が意気消沈する中、上村さんが思い出したのは花々を見て喜ぶ来園者の笑顔だった。この園をもっと人の役に立つ場所にしたいと考え、いろいろなイベントができるよう園内に農業用ビニールハウス(幅6m×長さ15m)を設置。そこで「うたごえ喫茶」を開催したり、本の寄贈を募ってミニ図書館をつくるなど、地域のよりどころになっている。ドライフラワーやマジックのワークショップ、農産物マルシェなども順次開催するつもりだ。
 今年は新たにホウキグサ(コキア)を2000株ほど植えたそうだ。秋には真っ赤に染まって園を彩ることだろう。

竹チップ入り堆肥で
有機農業を広めたい

栗山清美


堆肥センター

広島から
 安芸高田市の㈱リビングファーム広島では、市の堆肥センターの管理を受託し、昨年4月から竹チップ入りの堆肥をつくっています。荒れ放題の竹林が増え、地元林業グループが切った竹の処理に困っていることから、それを引き取って牛糞堆肥に混ぜることににしました。
 社長で農家の山本昭利さん(75歳)は「竹はケイ酸が豊富で放線菌が増えやすく土づくりに役立つ。地域の資源を循環させる有機農業をもっと広げたい」とのこと。社員は40歳前後の4人で、竹林整備も受託します。
 堆肥の原料は、業務用竹チッパーで粉砕した竹チップと、牛糞、おが粉、バーク。牛糞は地元酪農家5軒が1t当たり500円を支払って定期的に搬入します。これらを堆積・撹拌し、60〜70℃で3カ月以上発酵させて完成。年間生産量は2000tです。
 竹チップの混和率は20%が基本ですが、竹を切り出す人手が足りず混和率を3%に減らしたタイプも生産しています。20%のものは1t4300円、3%は2800円です。市民は市の補助金が適用され、1tが1000円引き(購入10t未満)、または2000円引き(10t以上)となります。
 竹の堆肥化により、放置竹林による景観悪化や倒伏の危険、鳥獣害も徐々に解消され、タケノコ生産もできるのではないかと期待されています。

ススキが地域を救うかも!
カヤ需要を狙う

江崎嵩弘


放牧地がカヤ場になった

長野から
 駒ケ根市の稲作農家は、冬場にスキー場などで働く人が多いそうです。林英之さん(44歳)もその一人で、冬はスキーのインストラクターをしています。
 しかし「これからウインタースポーツの人口はどんどん減るし、地域は高齢化する。地元を盛り上げるにはカヤが役立つかもしれない」と林さんは言います。
「カヤ(茅、萱)」とは昔から屋根に使ってきた草の総称で、ここではススキのこと。林さんは、数年前から12〜2月はススキの刈り取りもしています。高さ2〜3mのものを手刈りし、外周が65㎝になるように束ねて出荷すると、1束240円で売れるとのこと。
 出荷先は隣の伊那市にある「カヤネイチャービジネス」という会社で、茅葺き屋根の補修やカヤの販売を手掛けています。カヤは神社仏閣の修復などにも引き合いがあり、関連業者はカヤの確保に力を入れているんだとか。
 かつて牛の放牧地だったところがいいカヤ場になっていたりと、地元にもけっこうカヤ場があることに気がついた林さんは、「カヤ場は宝の山」と言っていました。やせ地でも勝手に育つので、「これが産業になれば地域も元気になるし、ススキは軽いから高齢者でも働ける」と目を輝かせていました。

市街地近郊の農家、
農業体験をウリにする

井上康生


講習会の様子

和歌山から
 貴志正幸さん(63歳)は、和歌山市で農業体験をウリにした農業経営をしている。米づくり体験は、市内の小学校や生協の組合員向けに昔からやってきたが、農協の勧めで、4年ほど前から野菜の育て方を教える体験型の市民農園「梅原ファーム」を始めた。
 地名を冠した梅原ファームは、1年制の野菜づくり塾で、春秋それぞれ約15品目を作付ける。貴志さんが品目を決め、タネや苗、肥料、農具を準備し、隔週で金曜日と土曜日に講習会を開く。そこで教えたことを年間を通じて実践してもらうという流れだ。
 畑は市街地近郊にあり、5aを25区画に分け、1区画20㎡の体験料は年間4万3800円(税込)。体験料には参加者が持ち帰る農産物代も含まれる。
 4期目の今年は、定年退職した人や子供連れの家族、友人同士、サラリーマンもいて21区画の利用がある。米づくり体験に参加した縁で申し込んでくる人もいるが、みんな野菜づくりは初心者だ。
 各自の区画の作業はすべて自分でやり、できた野菜は全部持ち帰るのが基本。「野菜づくりが学べるうえに、スーパーで買うよりお得」と好評だ。翌年は他の市民農園で挑戦する人も多いとか。
 市もこうした取り組みを応援しようと「市民農園開設等促進事業補助金」を創設。貴志さんは、今後さらに体験農園を拡大するつもりだ。

飫肥杉の端材でつくった
田んぼダムの枡

青田浩明


飫肥杉の排水桝

宮崎から
 約20年前、日南市を流れる広渡川が豪雨で決壊し、洪水被害が出た。そんな背景もあり、流域に位置する甲東地区では、多面的機能支払の「甲東環境保全活動組織」が減災を目的に、2014年から田んぼダムに取り組んでいる。
 雨を一時的に田んぼに貯めて下流域の洪水被害を軽減するのが田んぼダムだが、活動組織では貯水のために排水口に設置する枡を会員が自作している。しかも、地元の「飫肥杉」の端材で製作しているのだ。樹脂を多く含んでいるのが特徴の飫肥杉は、水に浸しても腐りにくいのがいいところ。強度も十分で5年ほどは使えるそうだ。
 枡の田んぼ側に板をはめ込んで水位を調整するしくみ。幅7㎝の板が3枚あり、3段階で水位を変えられる。田んぼダムにする時は3枚ともはめ込み、田を干す時は板をすべて取る。地区内31haのうち、現在は約20haまで導入が拡大した。
 田んぼダムの排水調整装置には、大雨の時には放っておいても水が貯まる「機能分離型」の装置もあるが、この枡は手動での調整が必要だ。だが、農家はもともと田んぼに通うのはあたりまえだと思っているので、田んぼダムのための水位調整に負担感はない様子。また、甲東地区では共同活動の一環で枡の点検・補修、見回りもしている。

むらの農地を守るため
独自設計の中山間直接支払

見上太郎


集落の田んぼと名越さん

広島から
 12世帯が暮らす庄原市後田集落。ここで中山間直接支払の集落協定の代表を10年以上務める、名越峯壽さん(79歳)に話を聞きました。
 中山間直接支払は「個人配分」と「共同取組」に分けて活用できるのですが、個人配分は農地面積ごとにその耕作者に配分するのが一般的です。しかし、後田では農地面積の大小に関わらず一律配分するそうです。
 「大きくつくってるところは米の収入が多いから、機械や道具をちょっと買ったりしても大丈夫。でも小さいところは大変。同じように機械や道具は必要なんだから」と名越さん。自分の個人配分が10万円ほど減ることを承知でみんなを説得して回り、納得してもらいました。
 組合員資格を、A=地主で自ら耕作している人、B=農地を借りて耕作している人、C=地主で耕作していない人の三つに分け、AとBに年10万円を一律配分。また、AやBが共同で草刈りをする場合は、時給1000円を共同取組分から支払います。
 2016年に大雨でアゼが崩れて補修が必要になった時は、補修経費から市の助成分25%を差し引いた額の半分を地主負担、もう半分を共同取組分から充当しました。「地主は耕作してもらうことで地代の米が得られるんだからね」と名越さん。小さい耕作者に寄り添った独自の制度設計がおもしろいと思いました。

子供たちのためにつくった
巨大デントコーン迷路

櫻井歓太郎


上から見た迷路

宮城から
 涌谷町で稲作と酪農に励む齋藤常浩さん(42歳)は、牛の飼料になるデントコーンを14ha栽培しています。そんな齋藤さん、コロナ禍で子供たちが楽しみにしているイベントが次々なくなっていくことを残念に思っていました。「夏休みの思い出づくりに何かしてあげられないか」。そこで、農家仲間や役場職員、地域おこし協力隊員など地元の有志6人を募って実行委員会を組織し、デントコーンの巨大迷路をつくることにしました。
 4月下旬、約1haの圃場に播種し、迷路の形に間引きしたのは6月下旬です。作業はJA青年部涌谷支部のメンバーが協力してくれました。
 イベント当日の7月31日、8月1日には、デントコーンは高さ3m超まで生長。2日間の運営を手伝ってくれたスタッフはのべ60人ほどで、迷路の参加者は1540人。迷路を駆け回る子供たちはマスク越しでもわかるほどに笑顔がはじけていたそうです。迷路内には涌谷にちなんだクイズラリーも用意しました。
 1年限りにするつもりだった齋藤さんですが、反響が大きく「来年も頑張りたい!」と宣言。迷路になったデントコーンは8月下旬に刈り取られ、齋藤家の牛のエサになりました。
 このイベントの動画はユーチューブ「真夏のとうもろこし巨大迷路ゴールドデント777WAKUYA」で公開中です。

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