ユニークな取り組みで注目される岩手県の紫波町図書館は、「子供たちと本をつなぐ」「地域に関する資料を網羅的に収集・保存する」「紫波町の産業(農業)支援をする」の三つをコンセプトに掲げ、2012年にオープンしました。
 農業支援を目指し、当初は農業の本棚を充実させましたが、肝心の農家は日中作業に忙しく、専門的なことはJAや農林公社に電話で相談するので、市街地の図書館に来ることはありませんでした。主任司書の手塚美希さんは「図書館が地域に出向き、農家とつながれないだろうか」と考えたそうです。ちょうど、私たち農文協でも図書館の住民向けサービスの支援として農家を集めた「野菜づくり講習会」を提案していたので、すぐに意気投合。14年から「出張としょかん」が始まりました。

民館で出張開催する「野菜づくり講習会」。直売所農家や家庭菜園愛好家など、毎回30人前後が集まる。マイクを持つのが司書の手塚美希さん

 野菜づくり講習会は農閑期を利用し、司書と農文協職員が町内9地区の公民館に出向いて行ないます。会場では『野菜づくりのコツと裏ワザ』(農文協)のDVDを上映し、農文協の営業マンが重曹で大きな根菜類がとれる工夫などを紹介します。一方、司書は図書館から持ってきた関連本を並べ、その場で図書カードをつくって貸し出します。
「地域に出て情報を集め、そこから課題を見つけ出す。それが選書の参考になり、住民に役立つ情報としてフィードバックできる」と手塚さん。出張としょかんがきっかけで農閑期に図書館を利用する農家が増え、困りごとなどの具体的な話が聞ける関係性ができてきたといいます。
 出張としょかんは公民館での野菜づくり講習会に留まらず、小学校の調べ学習講座や商店街の活性化イベントでも実施。人と本をつなぎ、図書館の認知度を高めています。

官民複合施設「オガールプラザ」にある紫波町図書館。毎年18万人ほどが来館する

文=農文協 東北支部 水野隆史 

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