このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。

「てごぉし隊」が空き家の片付け
移住者を増やして学校を守る

浅川初音


メンバーには大工や左官もいて
ちょっとした改修をすることもある

広島から
 庄原市にある山内小学校は児童数が減り、このままだと近隣の学校との統合もやむを得ないという話があるとのこと。廃校の危機をきっかけに、山内自治振興区では空き家を利用した定住促進プロジェクトに力を入れています。
 移住希望者に空き家を見てもらうのですが、その前の片付けが一苦労。「どこから手をつけたらええか」「歳とって大きい荷物をよう動かせん。家周りの草も刈れん」という持ち主が多かったそうです。
 そこで3年ほど前に、地区の住民有志で立ち上げたのが「てごぉし隊」です。「てごぉ」とは、この地域の方言で「手伝い」という意味で、空き家の家財の片付けや掃除を「てごぉ」する集まり。県立広島大学の学生も巻き込んで、メンバーは100人以上もいます。片付けで出た不要な家具などは「山内リサイクルマーケット」を開催して販売し、その売り上げを小学校や保育所に寄付しています。
「空き家を見せるときに片付いていたほうが『ここに住む!』って決まりやすい」と振興区の事務局長・実安裕美さん(74歳)。この3年で13軒の空き家が埋まり、46人が移住してきました。うち子供は23人です。何よりうれしいのは、「てごぉ」してもらった家に住む移住者が、今度は「てごぉ」するメンバーに加わってくれることです。てごぉし隊は、移住者が地域に溶け込むための役割も果たしています。

オンライン運動会で島民の心をつなぐ

向井道彦


運動会の思い出を話す様子を撮影

岡山から
 笠岡諸島の有人7島合同で実施する「島の大運動会」。島同士のつながりがまだ少なかった1998年から始まって20年以上続いてきましたが、2020、21年はコロナでできませんでした。22年は何としてもやっちゃろうと3月に実施したのがオンラインでの島の運動会です。「えっ? どうやったんですか?」と聞くとニヤリと笑う守屋基範さん(58歳)。守屋さんは笠岡市役所の職員です。運動会を運営するNPO法人かさおか島づくり海社の設立に関わり、現在は理事もしています。
 まずケーブルテレビなどが撮ったこれまでの運動会の映像を動画にまとめました。同時に、「島の主張」という島民が自分の思いを語る種目で、20年前に将来の夢を語った島民が今何をしているかを追った映像も撮りました。それを島の笠岡市職員や法人の役員10人ほどに見てもらって、思い出を話す様子をまた撮る。最後に作品として1時間半ほどに編集して、オンラインで共有しました。だから実際に運動会をしたわけではないのですが、翌年に心をつなぐ、とてもよい取り組みだと思いました。オンラインに慣れていない島民のために、上映会を行なうことも計画中です。
 動画の編集をしたのは兵庫県と島を行き来する映像作家。島外出身者にも活躍の場をしっかり設けるあたりが守屋さんのすごいところだと思いました。

村をあげての竹活用
竹パウダーのコンポストが好評

井上康生


竹チッパーの実演会

長野から
 放置竹林に困っているのは、青木村も同じ。農業委員会会長の塩澤正隆さん(79歳)は、「里山を覆ってしまってね、ほんと破竹の勢い。竹が侵入して荒廃農地化するところも増えた」と話す。
「竹を地域の資源として活用しよう」。農業委員会でそんな提案があり、2019年に青木村竹林活用推進協議会が発足。農業委員をはじめ、若手農家や直売所の出荷者組合の代表など12人が協議会の委員となり、村をあげての竹チップ活用プロジェクトが始まった。
 県の「地域発 元気づくり支援金」を使って、直径18㎝の竹まで砕ける25馬力のチッパー(350万円)と、竹パウダー製造機(50万)を導入した。それを1日3000円で村民に貸し出しており、地元農家7人から成る「大地いきいき研究会」など、放置竹林解消に取り組む有志も出てきた。
 切り出して粉砕された竹は、自分たちで利用するほか村内の直売所でも販売されている。いきいき研究会の場合は、竹パウダー1袋(20ℓ)を390円で売っている。販売実績と照らして、村が生産者に1袋につき200円補助するのもおもしろいところだ。
 協議会は、食生活改善グループやJA女性部など村の女性団体に竹パウダーを使った生ごみコンポストのつくり方を教える講習会も開催する。竹パウダーのコンポストは、乳酸菌の効果で悪臭が軽減され、ウジもわかないと好評だ。

農機の事故は
カッチャレンジャーが防ぐ!

櫻井歓太郎


おそろいのユニフォームを着て講習会を受講

青森から
 類家裕子さん(67歳)は五戸町でナガイモやカボチャをつくる農家です。2003年に農機具の事故防止を目的にした「カッチャレンジャークラブ」という組織を立ち上げました。「カッチャ」は方言で「お母さん」のこと。カッチャとチャレンジャーを合わせた面白いネーミングです。県民局の提案を受けて五戸地域の大型特殊免許を持つ女性農家で結成され、現在は11人で活動しています。
 農協のイベントなど人が集まる場所で農作業事故防止のパンフレットやチラシ、ステッカーを配ったり、自分の家の前にのぼりを立てたりして、地域の人たちの安全意識を高めるのが主な活動です。さらに年に1度は県民局や農機具会社主催の講習会を受講し、自分たちも学んでいます。また女性の目線からみた動きやすい農作業着のアレンジも行なっています。
 活動の際は、「目立たないと!」という思いでつくったお揃いのピンクのジャンパーと帽子を身に着けます。色が鮮やかなので、集まっていると遠くから幼稚園児に見間違えられたこともあります。
 類家さんは「新聞で農作業事故の記事を見るとショックでガクッとする。まずは自分の周りから事故を起こす人を出さないというつもりでやっている。会をつくったおかげでメンバーの意識が変わった」と話していました。

和牛のルーツ「千屋牛」を
地元の小学校で飼う

原田順子


校庭での散歩

岡山から
 新見市は和牛のルーツとされる千屋牛が特産ですが、昔に比べて牛農家が減ってきています。地域の子供たちに千屋牛を知って直接触れ合ってもらいたいと、新見市役所は市内の小学校へ和牛の貸し出しをしています。2014年から始まった取り組みで、希望する小学校へ1〜2週間程度、協力牧場から牛を貸し出します。毎年9〜11月に4、5校が牛を受け入れています。
 受け入れの前に牛の面倒の見方について1時間ほど指導を受け、何かあった時のために獣医さんの連絡先も教えてもらいます。その後、牛とエサ、木製の囲いが牧場から学校へ届けられます。牛は100〜120㎏ほどのメスの子牛です。子牛の愛称を決めたのち、子供たちがエサやりや校庭の散歩、ブラッシング、敷きワラや水の交換などの世話をします。
 上市小学校は毎年この取り組みに参加しています。児童も先生も牛飼いの経験がないので、近所の老人クラブの方々が日替わりで手伝いに来てくれます。校長の井石雄也さんは、「何事にもあまり興味を示さないような子供でもキラキラした目で牛の面倒を見ていて、この子もこんな反応をするんだと驚きました。生き物はいいですね」と言います。
 この和牛貸し出しで牛に興味を持った児童が、生物生産科のある地元高校に進学し、牛の飼育を勉強する例も出てきているそうです。

シカの骨まで商品化「鹿骨おだし」

上野亮太


「鹿骨おだし」と猟犬

長野から
 泰阜村ジビエ加工組合では、解体処理施設で廃棄されるシカの骨でだしを取って商品化した。その名も「鹿骨おだし」。シカの脚骨・胸骨・骨盤を、髄からうまみが出るよう半割りにして8時間以上煮込んだスープで、2020年冬から販売している。
 商品を発案した、解体処理施設の代表・井野春香さん(34歳)は、「豚骨スープよりはさわやかな風味で、牛骨スープに似てるんだけど、シカならではのうまみがあります」と言う。味噌汁や煮物、カレー、ドレッシングなどの隠し味にも使え、リピーターが増えているそうだ。
 愛犬家からも引き合いがある。原液のままドッグフードにかけると犬の食欲がアップ。夏場は水で10倍ほどに薄めて与えてもいい。スープにはコラーゲンが染み出ているので、犬の毛艶がよくなるとのこと。「犬にも人にも必要なアミノ酸やミネラルが豊富で、うちも猟犬や飼い犬と一緒に飲んでいます」と井野さん。猟友会にも入っていて、自分でもシカを獲る。
 去年解体したシカは186頭で、骨の量は全部で500㎏ほど。うち350㎏がスープの原材料になった。肩骨やあばら骨は犬のジャーキーにして、捨てる骨はなるべく出さない。スープは年に300㎏ほどつくり、レトルトパウチに入れて200g750円(税込)。村役場や直売所、インターネットでも販売している。

和牛の糞尿でも
バイオガス発電が始まった

渡邊紗恵子


バイオガス発電所と肉牛団地。
円形の施設が発酵槽

山形から
 米沢牛の産地・飯豊町では、20年夏から和牛の糞尿を活用した「ながめやまバイオガス発電所」が稼働しています。運営するのは東北おひさま発電㈱で発電出力は500kWです。
 バイオガスは嫌気性発酵で得られるので、牛なら一般には水気の多い乳牛の糞尿が使われます。しかし、和牛の肥育農家が多い飯豊町でも、規模拡大や後継者育成のハードルとなっていた糞尿処理の解決法としてこの方法を選びました。
 国の事業などを使って建設されたバイオガス発電所に隣接して、町では肉牛団地を整備しました。ここで4軒の農家が肥育牛と繁殖牛を計1000頭ほど飼育しています。
 各牛舎の地下にはパイプラインが設備されていて、なんと糞尿はそれを通じて発電所の貯留槽へ送られるのだそうです。水分が少ない肉牛の糞尿を流すには、発電過程で出た液肥をパイプラインに循環させて利用しています。糞尿が電気を生み出すということもあってか、農家の糞尿処理費は無料です。
 液肥の活用は今後の課題だそうで、現状は牧草地40haや農地10haに散布しています。肥料としてより有効に利用するため、町が試験栽培をしている子実トウモロコシ3haに10a10tまいたところ、化学肥料で栽培した区と同程度の収量が得られたそうです。

コメントは受け付けていません。