「開国と農業再生の両立」を説く菅首相は市民運動出身だが、その運動とは、70年代に「都市のサラリーマンはなぜ住宅が持てないのかと考えて」、農地の宅地並み課税を求める運動だったとか。
時代は下がって80年代後半、「サラリーマンの暮らしがよくならないのは農家のせい」と、マスメディアが連日農業バッシングをくり広げ、それに乗じて三大紙に「『農地』から都心へ30分/『宅地』から都心へ2時間」と題する広告が掲載されたことがあった。「アメリカなどから米の輸入をして、いまよりも安く販売すれば、単に米が安くなるだけでなく、貴重な平地が解放されることになり住宅問題が一挙に解決」と、大前研一を引用する広告の主は不動産会社。地価高騰、地上げが社会問題化していた時期である。
87年、そのバッシングに対抗して本誌の前身「増刊現代農業」は創刊された。創刊2号に「経済効率を唯一の原理とし、他者=農家に対する敵意と憎悪を熱源とする社会改革に、はたして国民は未来を託すことができるのでしょうか」と書いた思いが今よみがえる。[甲斐]
長野県中川村で行なわれた「全村挙げてのTPP参加反対デモ」(12ページ)の行進の中に、イエルカ・ワインさん(67歳)の姿があった。チェコ出身の陶芸家で、村内に残る築130年の古民家に住む。絨毯を織り、薪ストーブを自作し、畑で野菜も育てる自給的な暮らしだ。日本文化を愛し、大鹿村と中川村に長年住み続けてきたイエルカさんには、TPP参加で「日本がアメリカのような暮らしになる」ことが愚かなふるまいと映る。「私はアメリカにも住みました。おカネは豊かな国ですが、食は豊かではありません」。イエルカさんの心配は、日本が少しずつ良さを失っている気がすること。「熱湯に飛び込めば、蛙は熱さに気づきますね。でも、鍋の水につかって火にかければ、熱さに気づかない。
この鍋の蛙が日本なのです」。[阿部]
丸子で最初に無人直売所を始めた関雅則さん(84ページ)。昔はニワトリもブタもヤギも飼っていた。「農協とは70年来のつき合いだが、昭和10年代、産業組合(農協の前身)はたとえ卵1つからでも受け入れてくれた」。関さんとともに丸子で直売所を育ててきた伊藤良夫さんの「原点をいかに共有していくか」という言葉と重なった。[馬場]
高知県中土佐町で大ブームの発酵液「えひめAI」(106ページ)。ホームセンターでは、家庭用キットが年間250セット売れており、人口8000人のまちで、なんと60トンもの自家製「えひめAI」をつくる。今回は24時間で簡単にできるバージョンを大公開! 使えば台所から風呂、トイレまでピカピカになるので、ぜひお試しあれ。[蜂屋]