「鹿角りんご」や「北限の桃」の産地として知られる秋田県鹿角市。ここでSDGsな取り組みが図書館を中心に広がっている。鹿角市立花輪図書館では運営予算が限られている中、家にあるものや本来捨ててしまうものを活用して楽しい雰囲気の図書館づくりを行なっている。重要なのは、自分たちで知恵を出すこと、そして利用者や外部とつながることだ。
例えば、閲覧室の椅子の脚カバー。床の傷防止や椅子を引く時の騒音対策で、図書館には欠かせないものだ。200個以上必要で購入すると結構な金額になるので、職員が毛糸を編んで手づくりし始めた。すると利用者の方々も家で余っている毛糸を持ち寄り、一緒に編んでくれた。完成品を見て、図書館づくりに参加できた、自分たちの図書館だと喜んでくれたそうだ。今は古くなってきた脚カバーを、市内の認知症関連団体が新調してくれている。
また、児童室には、段ボール箱や貸し出しレシートロールの芯を再利用した手づくりのブックスタンドが並ぶ。児童書の陳列では表紙を見せる「面出し」が特に有効だが、そのためのスタンドの数は限られている。そこで、図書館にたくさんある段ボール箱などを使ってつくってみた。エコな面はもちろんだが、落としても子供がケガすることがないという安全性の点でも優れている。学校図書室担当研修の場で先生につくり方の説明をしたところ小中学校にも広がり、児童生徒と一緒につくったところもあるという。
「ないものがあると人って頭を使うし、それが楽しい。最近は『これ余ったけど何かに使える?』と声をかけられることが増えた。周りを巻き込みながら、みんなの図書館をつくることが大切だ」と小林光代館長は話してくれた。
文=水野隆史(農文協 東北支部)