このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。

移住者を増やす、
広葉樹で自伐型林業

三浦大弥


チェンソーの講習会

群馬から
 町の総面積の9割が森林に覆われるみなかみ町では、岐阜県のオークヴィレッジ㈱と包括連携協定を結び、「森林を育む広葉樹林産業化プロジェクト」を始めました。農林課林業振興係の小此木猛さんによると、広葉樹を活かした林業の6次産業化と地域活性化を目指すプロジェクトだそうです。
 みなかみ町は広葉樹の「自伐型林業」を推進しています。昔からの林家のように、チェンソーと小型の林内作業車を使って、自力で木を切って売る林業の形です。
 町では、林業初心者向けの機械の講習を年に1度開催してきました。講習を通じてできたグループ単位で始める人が多く、現在約130人が取り組んでいます。燃料を満タンにして返せば林内作業車を無料で借りられる仕組みもつくりました。
 伐採された広葉樹はオークヴィレッジへ。クリやコナラは椅子に、カエデはヘッドホンになるそうです。同社で販売されるほか、町のふるさと納税返礼品にもなっています。
 一般に広葉樹はチップにしかならず、採算が取れなかったのが、企業との提携でお金になる販路ができました。それが、アウトドア関連などの他の仕事と組み合わせて自伐型林業をする移住者を増やしています。

20年以上続く、
地元の「こだわり農産物」給食

長谷川貴央


認証のための圃場調査

高知から
 四万十市は、2002年から学校給食に無農薬・減農薬の地元食材を使い始めた先進地。小学校13校と中学校8校の給食に、市独自の「四万十こだわり農産物認証制度」で認証された農産物が使われている。
 じつは、四万十市で学校給食が始まったのもこのときから。当時の市長が、給食が始まったのが遅い代わりに「オーガニック給食をやりたい」と言ったのがきっかけだったという。
 生産者は「環境にやさしい農業のための研究会」(会員20人)のメンバーで、野菜は9人がすべて無農薬で、米はやはり9人が無農薬・減農薬で栽培している。研究会の事務局と市農林水産課の職員が年に1回圃場を調査して認証するそうだ。
 川村祐子さん(69歳)は「中村くらしを見直す会」の代表で研究会の事務局も務める。自身が経営する自然食品店でもメンバーの野菜を販売しながら、この仕組みを支えてきた。
 現在、給食の食材は米が100%、野菜は30%が認証を受けたもの。米の価格は無農薬米が1㎏550円、減農薬米が380円。野菜も含めて、慣行栽培のものより高めの値段で市が研究会から購入している。合計額は約1700万円で、その1割ほどが研究会の運営費として認証の経費などにも充てられるそうだ。

島の情報は、
皆が使うラインで発信

原田順子


スマホ教室の様子

岡山から
 岡山県地域おこし協力隊の活動発表会&交流会にて、笠岡市の地域おこし協力隊員・片岡玲実奈さん(24歳)にお会いしました。
 高知県佐川町出身の片岡さんは大学卒業後すぐ、笠岡市の白石島に赴任しました。
「20歳そこそこの子に何ができるの?」と初めは島の人に言われたそうです。交流を重ね、仲よくなると、島内放送の音が聞こえにくいために、いろいろ困っていることがわかりました。例えば、船が止まったことやごみ収集の日程など、ライフラインを支える基本的な情報入手ができていないのです。
 多くの人がスマホは持っていて、ラインアプリを入れていることをつかんだ片岡さんは、ラインを使って島内情報の発信を始めました。
 白石島と書かれたページを開くと、「船時刻表」「天気・潮汐」「病院情報」「防災情報」「白石情報」「ゴミ情報」のボタンが並んでいます。これを押すだけで、情報が出てきます。
 島でやっているスマホ教室で、使い方を教えながら参加者に登録してもらったそうです。そこから口コミで広がり「玲実奈ちゃん、私のにも入れてよ」と頼まれることが増えました。今では、島の4割の方が登録してくれています。

若手「草刈り隊」、
早朝から小遣い稼ぎ

菊池七和子


草刈りする隊員

長野から
 寺島渉さん(74歳)の住む飯綱町古町集落は、耕作放棄地を花桃公園にした話が以前の本誌で紹介されました(2020年春41号)。一方、高齢で手が回らなくなった農地の草刈りには、2020年に発足した「古町草刈り隊」が活躍しています。
 隊員は地域の担い手のほか、サラリーマンや移住者など計14人。刈り払い機の使い方をマスターした5人の女性も参加しています。集落では、中山間直接支払を利用して4台の刈り払い機を用意しており、機械を持っていなくても草刈り隊に入れます。レンタル費用は無料です。
 作業は、土日の朝6時から数時間。年に8軒ほどの農家から、1軒につき年間3〜4回の依頼が入ります。隊員の多くは30〜
40代で、子育てなどでなにかとお金がかかる世代。休日の朝の時間を利用して、ちょうどよい小遣い稼ぎになっているそうです。
 賃金は1時間あたり2500円。依頼者が負担するのはその半額で、残りは中山間直接支払から支払われます。
 じつは依頼者の負担金というのも、本当は負担にはなっていません。古町集落では中山間直接支払の半分を地権者に配分しています。
草刈りを頼む人は、そこから支払うので草刈りを頼みやすいようです。

地域の困りごとは宝物
おてこ衆が解決

津田美優


休憩中のおてこ衆

長野から
 筑北村には、NPO法人「わっこ谷の山福農林舎」があります。「地域の課題を宝物としてとらえ、仕事にし、地域で活躍するプレーヤーを増やしたい」。こんな想いから2019年に設立され、15人のスタッフが、新規就農・就林希望者の支援、その他就労支援など、地域に住む人の相談窓口になっています。
 また「おてこ衆」派遣のシステムもあります。お手伝いさんを意味する長野県の方言「おてこ」が由来。軽度の障害を持つ人も含めて、20〜60代の120人ほどが登録しています。
 草刈りや農地の土づくり、収穫作業、引っ越しの手伝いや墓守など、年に170件ほどの依頼があるとのこと。依頼内容に合わせて、個々のスキルを生かせる登録者が派遣されています。料金は、依頼ごとに見積もりを提示して決めるそうです。
 刑務所を出所後に「おてこ衆」となったある方は、草刈りなどの仕事を手伝ったとき村人に言われた「ありがとう」の言葉が心の回復のきっかけになったそうです。
 代表の和栗剛さん(47歳)は、それぞれの人に合った仕事と誰もが知り合える場をつくり、多様な生き方をしてきた人が活躍できる「なないろの社会」を目指したいと言います。

再生した棚田でオーナー制、
にぎやかに収穫体験

多田勇慈郎


田植えをするオーナー

群馬から
 沼田市薄根で一番高齢化が進む石墨集落。ここの美しい「石墨棚田」が2022年、農水省の「つなぐ棚田遺産」に群馬県で初めて登録されました。背景には18年に始まった棚田の再生活動があります。薄根地区振興協議会で、若手も加わり地域をよくするために何が必要か議論し、決まったそうです。
 しかし10年以上放置された棚田の米づくりは、2年続けてうまくいきませんでした。土が肥えてチッソが多かったので、イネが激しく倒伏してしまったのです。茎を硬くするためケイ酸カルシウムを入れるなどの工夫で3年目から収穫できるようになりました。
 19年からは棚田のオーナー制度を導入。田植え体験やホタル祭り、収穫体験にたくさんの人が訪れるようになりました。ファミリー向け、法人向け、ホリデーファーマー向けから選べ、ファミリー向けの料金は、100㎡で3万6000円です。
 毎年続けてくれる方もおり、現在は32組1法人のオーナーがいます。東京や神奈川など県外からもやって来ます。多いときは100人近くの人が集まるそうです。
 収穫体験の日は、薄根の住民がお昼を用意。育てているお花をブーケにしてプレゼントする人もいて、地域の人たちもやりがいを感じているようです。

じつは果樹園だった…
竹林の管理、無償で請け負う

辻 涼香

整備した竹林

愛媛から
 農業なら、自分のペースでできるから子供との時間をつくれるようになるのでは……。そう思って10年前に松山市にUターンした重松弘美さん(50歳)は、耕作放棄地だらけの故郷の風景にショックを受けたそうだ。
 荒れた竹林をすみかにイノシシやハクビシンが跋扈するのを見て一念発起。20aの耕作放棄田で青パパイヤをつくったり、80aの竹林の管理を担う農園・チロポン村を始めた。
 古い竹を切り、新しい竹を残してタケノコがとれるような竹林にした。竹に負けずに生き残った甘夏や伊予柑の樹も発見。もとは果樹園だった!? 切った竹をチップにして敷き詰めたことで、草を抑えただけでなく地温が上がり、上質なタケノコを早期収穫できるようになった。
 傾斜が45度もあるような場所ばかり。重松さんは所有者に声をかけて、そこでとれた作物を収穫・販売させてもらう代わりに、無償で管理を請け負う畑(竹林)を増やしてきた。
 タケノコは湯がいたものを直売。また、収穫時期をほんの少し逃した竹を塩蔵しておき、「めんま」や「たけのこご飯の素」として販売している。
 無農薬のカンキツも収穫できる。形が悪くなってしまうので、マーマレードなどにして売ることを考えているそうだ。

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