父ちゃんに情報を独占させない
ニラ農家女性勉強会
三浦大弥
栃木から
メーカー3社を集めて、収穫時の中腰姿勢をラクにするアシストスーツを使い比べる。こんなユニークな活動をする女性グループが上三川町にあります。坂本典子さん(60歳)が中心となって立ち上げた「にら女性勉強会」です。
2018年に発足し、メンバーは30〜60代の14人。会の目的は、女性が農業経営者の立場に立つための、風通しのいい情報共有やコミュニケーションの場をつくることです。
坂本さんは「栃木の農家の父ちゃんは、部会で出た情報を自分の内に秘めてしまう。細かい作業は女性がやっているのに、農業技術や経営の情報が入ってこないからわからない」と感じたとか。女性が農業経営に参加するための仕組みをつくりたかったと言います。
年に4回の勉強会で学んだことの一つがアシストスーツ。他には農薬の使い方やニラを袋詰めするときの上手な脱気の仕方、ハウスのビニール多年張りやウォーターカーテン導入によるCO2削減なども勉強しているそうです。実践的な組織を目指して、互いの圃場見学や、情報・疑問の交換も。女性だけだと知らないことを聞きやすいそうです。
母ちゃんならではの感性を生かして、もっといろいろなことをできるようになりたいと話す坂本さん。活動6年目、まだまだ伸びしろがありそうです。
農地も集落も次の世代につなぐ
「地域まるっと中間管理方式」
佐藤優紀
鳥取から
5年10年後の農業について話し合う中で、日南町多里地区では、耕作されない細切れの農地が増えていくことや、不在地主と連絡が取れないために借り手が使えなくなるのではといった課題が出ていました。そこで2020年にできたのが一般社団法人TARI。代表の糸田川啓さん(40歳)に話を聞きました。
多里地区では、8割(70ha)以上の農地を農地中間管理機構に預けて集積し、TARIに利用権設定をしています。本誌で何度か記事になっている「地域まるっと中間管理方式」です(2019年春37号p110など)。これによって担い手や請け負いを増やせる人にスムーズに農地をつなぐことができます。細切れの農地をまとめて新規就農者に渡すこともできました。
実際の耕作者にはTARIから「特定農作業受委託」をすることで、その人の裁量で収穫物を販売することもできます。
おもしろいのは、農地集積だけでなく、中山間直接支払や多面的機能支払もTARIが事務局として一体的に運用していること。「多面」ではオオサンショウウオの保護活動や防災見守りマップづくり、「中山間」では生産性向上加算で防除用ドローン2台を導入、集落機能強化加算で農業の短期インターンを受け入れています。短期インターンを経て地域おこし協力隊として活躍する人も出てきました。
地元に雇用を生む、
産地を守る若手リンゴ組合
辻 涼香
長野から
リンゴ産地の長野市長沼。ぽんど童(組合長・徳永慎吾)は若手リンゴ農家19人による生産組合です。メンバーの中村太士さん(42歳)からリンゴの産地を守る二つの工夫を聞きました。
ぽんど童では高齢化によって放棄された2haのリンゴ畑を管理しています。剪定はメンバーが集まって共同作業として行ない、摘果や収穫などの作業は子育て世代のお母さん方にお願いしています。これで自分たちの畑にも無理なく、雇用を生むこともできているそうです。
また、2023年1月に就農を希望する地域おこし協力隊の方がやってきました。新規就農の大変なところは機械や道具にお金がかかること。価格の高い機械は、協力隊の給与だけでは買えません。そこで、この隊員をぽんど童が受け入れて、共用のスピードスプレーヤや草刈り機などの機械を貸し出しています。
組合内での交流がリンゴの栽培技術の伝授にもつながるそうです。いろいろなメンバーに教えてもらうことで自分に合ったやり方を探せるといいます。
新規就農者の中には、資金の問題や農業の知識不足により定着できない人がいます。自分たちのこの活動が、地域の農家を増やすことにつながるといいと語ってくれました。
サッカー選手とサポーターが
一緒に参加する農園
辻 涼香
群馬から
「ハタケアカデミー」という社会人向けの週末農業学校を高崎市で開いてきた農家の深見航平さん(36歳)。2023年10月からは、地元のプロサッカーチーム「ザスパクサツ群馬」と共同で、「ザスパファーム」を運営しています。
深見さんによると、ザスパファームのイチ押しポイントは、選手とクラブチーム、サポーター、農家が相談し、60aの畑の野菜の作付けや参加して欲しい選手のリクエストなど、今後の方針を皆で決められること。
農園には、そうして選ばれた6人の選手が関わっています。サポーターにとっては、選手と間近に交流できる貴重な機会です。参加費を払えば、サポーターの家族や友人も加わることができるので、多くの子供たちも農園にやって来ます。
現在、20組のサポーターが参加。播種や収穫のときだけでなく、いつでも農作業ができます。深見さんと4人のスタッフが主に管理しますが、選手が練習後に手伝いに来ることもあるそうです。
収穫した野菜の余剰分は「ザスパ農園野菜」として販売中。試合のときには他のサポーターのみなさんに人気だったとのこと。
選手やサポーターが農業に興味を持つきっかけにもなり、野菜を手に取ることで地元のサッカーチームを知るきっかけにもなるといいます。
「島内フェアトレード」、
マンゴー農家を加工で支援
杉野沙歩
鹿児島から
以前は役場の営農支援センターに勤めていた喜界町の園田裕一郎さんは、現在はメロンやパッションフルーツを育てる農家。最近、「島内フェアトレード」として農産加工にも乗り出しました。「手塩にかけて1年育てたマンゴーを2tも廃棄した」という悔しい話を農家から聞き、これはいかんと始めたそうです。
マンゴーの収穫は台風の襲来時期と重なります。島外へ出荷するための船が台風で欠航するのは毎年のこと。完熟したマンゴーは10日以上欠航が続くと腐敗してしまいます。島内で売っても、1㎏300円という安値になってしまうことが珍しくありません。
そこで園田さんは、本来ならばA品として出荷される島のマンゴーを1㎏800〜1000円で6軒の農家から買い取り、ドライフルーツに加工しています。砂糖も酸味料も無添加です。
2023年8月に販売開始。飛行機の機内販売にも採用され、ふるさと納税の返礼品にもなり、10月までに800袋売れました。
「ドライフルーツを入り口に、島のマンゴーの美味しさを知ってもらい、次は青果で購入してくれたら嬉しい。仲間の農家支援が第一の事業。しっかり売らないとうちは赤字です」と園田さん。島の農業への熱い想いが伝わってきました。
集落の文化をつなぐ「もばた文化塾」
多田勇慈郎
静岡から
静岡市茂畑の杉山正明さん(63歳)は「もばた文化塾」の代表。高齢化や子供の減少で集落の行事の維持が難しくなるなか、26年前に結成されたこの組織がむらの文化を守っています。
青年団がなくなり開催されなくなった祭りを継承したことがきっかけでした。以来、子供会でやっていた祭り、どんど焼きのような地域の行事の企画・運営を文化塾のメンバー27人が担っています。
祭りには以前は地区外の人も集まりましたが、コロナが流行り始めてから茂畑の人だけで「もばた祭り」を11月に開催するようになりました。この祭りの特徴は、地域の人の趣味を展示するコーナーです。絵画や魚の剥製、魚拓、ドライフラワー、キクの展示……。「長年、近くに住んでいるのに、この人はこんなものが好きだったのかと驚いた。茂畑だけの祭りにすることで、住民が熱中しているものや好きなものを展示することができた」と杉山さんは言います。耕作放棄地の解消のために育てたソバを使った手打ちそばの試食会もありました。
営業で農村を回っていると、昔からある行事がなくなるのはさみしいという声をよく耳にします。もばた文化塾のように、集落の文化と人を縦にも横にもつなぐことができるといいなと思います。
モミガラボイラーを使う企業が
くん炭を農家に提供
岩手から
盛岡市にある東日本機電開発株式会社は、地域の農家を支える様々な活動をしています。その一つが自社で商品としても扱うモミガラボイラーを利用した貢献です。地域の水稲農家が処理に困っていたモミガラを無償で引き取り、モミガラボイラーによる自社の床暖房(工場・事務所)に使用しています。
以前はすべて灯油を使っていましたが、一部をモミガラボイラーに切り替えることで、灯油代金を5カ月分の約38万円節約できたそうです。それに伴ってCO2排出量も12t以上削減できたとのこと。
10月から4月までの暖房期間、燃料に使われるモミガラは約8tです。ボイラーに一度火を入れると、供給機から自動で燃焼室に送られて燃え続けます。燃焼後はくん炭になってフレコンバッグに排出され、一日に260〜350ℓもたまるそうです。
私が素晴らしいと思ったのは、このモミガラくん炭を、農家へ無償配達している点です。環境分野の研究・開発をする同社の環境事業部が掲げるスローガンは「健土・健食・健民」。岩手の土をよくしていこうという考えのもと、農家に還元しているそうです。
なお、くん炭に加えススが融雪剤にもなるので、廃棄物はほとんどゼロだといいます。






