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みどり戦略―有機農業を知りたい連載ルーラル電子図書館だより

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【みどり戦略―有機農業を知りたい】生産者と面積を増やす

農文協が運営する農業情報サイト「ルーラル電子図書館」で読者が注目した『季刊地域』の記事を連載形式で公開します。
今回ご紹介する「みどり戦略」コーナーは、オーガニックビレッジ宣言をした129市町村(2024年8月30日)のうち、早くから動いていた自治体が、23年8月時点でどんな有機農業推進の取り組みを始めているのかを聞いたものです *この記事は『季刊地域』2023年秋号(No.55)に掲載されたものです。

農家のやる気を盛り上げる研修圃場を設置

山形県川西町

丸太をウネに丸ごと埋め込む。巨大有機物の施用で、無肥料で10年以上の長期栽培が可能になるという 写真=曽田英介

有機栽培に役立つ新技術を試すための圃場を用意し、農家向けの研修を開催している。省力的な技術の導入で、有機栽培を始める後押しにつなげたいという狙いだ。これまでに水田の紙マルチ除草、畑の太陽熱処理などを試してきた。この7月に行なったのは丸太高ウネ栽培。農家の関心も高く、研修当日は40人以上が集まった。

市が独自の農業機械導入支援

新潟県佐渡市

 トキとの共生を目指してきた佐渡市では、42人の農家が55haで有機農業をしている(有機JASは取得していない)。その面積拡大のため、市独自の農業機械の導入支援を昨年から始めた。対象者は、有機農業をしている人とこれから始める人。支援額は1/2補助で最大30万円。

 昨年は水田除草機13台の購入を支援した。アイガモロボットでも乗用型除草機でも種類は問わない。今年は有機肥料や堆肥の散布機の導入でも利用できるようになった。

水田を無人で除草する「アイガモロボット」

有機ニンジン拡大のための機械を無償で借用

島根県浜田市

ハウスで葉物を有機栽培してきた農家が、露地でのニンジンの有機栽培に挑戦し、面積拡大を進めている。市の有機農業推進に協力するヤンマーアグリジャパンが、自動操舵機能付きの作業機械を無償で貸し出して支援。ウネ立てとマルチ張り、播種、除草について、それぞれの専用アタッチメントを利用することで省力化できた。

ニンジンの有機栽培は除草が課題になる。ウネに透明マルチを張っての太陽熱処理に加え、残った雑草には除草機を使って中耕除草を効果的に行なうことができた。生育は順調で、大ぶりで高品質のニンジンが収穫できたという。各地のスーパーや自然食品店などからの需要がある。今年は専用アタッチメントを購入し、本格的に栽培が始まる予定だ。

市では、有機JASの取得も進め、現在48haある市内の有機JAS圃場を5年後に65haまで増やすことを目標としている。

ニンジンの中耕除草の様子

ニンニク・ソバで有機栽培を増やす

熊本県南阿蘇村

南阿蘇村ではニンニクとソバの有機栽培技術の確立に力を入れている。ニンニクはイノシシやシカの獣害を受けにくく、現状3人が有機栽培している。春のさび病が課題だが、嘉定種(品種:早出し専用の上海種)ならさび病が出ても収穫まで行き着けることがわかったそうだ。

ソバは旧久木野村で在来種の栽培が盛んで、現在12.6haほどを農薬・化学肥料不使用で栽培している。連作による収量低下が課題だったが、土壌分析したところチッソ成分の不足が原因であることがわかった。

熊本県独自の認証制度「有作くん100」を利用して生産拡大につなげていきたいそうだ。

旧久木野村のソバ畑

有機農業の学校を設立 4年で34人が就農

兵庫県丹波市

 2019年、有機農業の技術から経営までを幅広く学べる「丹波市立農の学校」が開校した。

 全日制の「超実践型カリキュラム」をうたっており、講義1607時間(週5日程度)の7割を農場実習が占める。地元農家による授業もある。京都市の(株)マイファームが指定管理業者として運営する。

 定員20人。有機農業を学びたいと東京や北海道など遠方から移住してくる人もいる。開校から4年で58人が卒業、34人が市内に就農した。うち独立就農は18人で、ほかは雇用就農や半農半X。

 丹波市では現在111戸が184haで有機農業をしている(有機JAS認証取得以外も含む)。

移住して農業を始めた卒業生の嶺尾洋人さん(39歳、中央)と廣澤正道さん(39歳、左)。2人が慕う農家の岸下正純さん(73歳)と 写真=尾崎たまき

地元の高校生も巻き込んで有機農業を推進

鹿児島県南さつま市

今年から、市内の高校2校と連携した有機農業推進の取り組みを始めている。

1校目は食農プロデュース科のある県立加世田常潤高等学校。学校の農地を有機農業を志す新規就農者受け入れのための研修圃場として市が借用し、有機栽培の農家グループ「自然農法・オーガニック野菜推進委員会」に管理を依頼している。

委員会の農家が講師となって高校生に授業もする。生徒にとっては農家に直に教わることが刺激になり、インターンとして受け入れてもらう生徒も出てきている。次世代の有機農家を育てるのが目的だ。研修圃場の管理やインターンの受け入れにかかる費用には、有機農業産地づくり推進交付金を充てている。

もう1校は鳳凰高等学校。こちらは看護や福祉系の学科の生徒が学校の畑で有機農業を学ぶ。講師は、市が同じく交付金を使ってMOA自然農法文化事業団鹿児島県連合会に依頼。土づくり、タネ播きに始まり、とれた野菜を調理して食べるところまで、有機農業を楽しく体験してもらうそうだ。ご理解いただいたうえ、このディープなバラエティを活用いただければ幸いです。

有機農業の振興のため加世田常潤高校と連携

『季刊地域』2023年秋号(No.55) 「どこから手をつける? 生産者と面積を増やす」より


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『季刊地域』2023年秋号(No.55)の巻頭特集「有機で元気になる!」」のコーナーには以下の記事も掲載されています。ぜひ本誌(紙・電子書籍版)でご覧ください。

  • 市町村が有機農業の拡大に動き始めた
  • 学校給食を入口に 有機農業、始めました
  • 集落営農との連携で「地域の農業」に 有機農業で移住者を増やす
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農文協 著
特集:有機で元気になる! / ニッチな山の恵みで小さく稼ぐ
松中照夫 著
有機農業と慣行農業による「土の良しあし」「農産物の品質(栄養・安全性)」「環境への影響」など、消費者が抱くステレオタイプの「思い込み」や垣根をつくって分断する風潮に対し、科学的な根拠をもって、その間違いを一つずつ丁寧に解き明かす。堆肥も化学肥料も農薬も、その利用目的は作物をよりよく生育させ、高品質で収穫量を増やすことにある。問題は使用方法。有機農業でも堆肥を必要以上に与えれば、作物の品質や土、地下水、大気などに悪影響を及ぼす。健全な作物や土をつくるうえで、有機も慣行もどちらも大切な農業である。
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