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地エネ最新号より試し読み季刊地域Vol.66(2026夏号)

千葉

未来を見据えた「望ましい営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」はどうあるべきか

執筆者:東 光弘(市民エネルギーちば(株)、(株)TERRA、ソーラーシェアリング総合研究所各代表取締役)

『季刊地域』66号(2026年夏号)「未来を見据えた「望ましい営農型太陽光発電」はどうあるべきか」より

期待が集まる一方で不良事例も

 2013年3月の農水省通達により正式に農地での営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が始まってから13年余りが経ちました。その数は年々増え続け、私の推計では全国で8000件を超えるほどになっています。多くの先駆者たちの粘り強い努力もあり良い事例も増えましたが、農業白書にもあるように、残念ながら2割程度が農業をないがしろにした不良事例として問題になっています。

 この13年の間に、市民も体感するレベルで地球温暖化が進行し、企業もサプライチェーンへの生き残りをかけ再エネを希求するようになりました。一方で、環境を破壊するいわゆる野立てメガソーラーの太陽光発電に自治体の規制が高まり、国民的な反感も高まる中で、環境配慮型に分類される営農型太陽光発電へ注目と期待が集まってきています。

 このような背景のもと、25年7月から農水省で開催されてきたのが「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」です。6回の検討会を経て、4月に「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」が示されました(本文の後ろに掲載)。今後、パブリックコメントなどを経て、年内に新しい枠組みへ移行する方向とのことです。

規律強化だけでは「半分足りない」

 農水省の「考え方」に対しては、すでに一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟や国内の大手再エネ発電事業者の団体であるREASP、自然エネルギー財団などから提言がなされています。それらの意見に関して、私は同意できる部分と異なる見方をしている部分があります。基本的に「悪いものは排除して、良いものは伸ばしていく」方向はいいと思いますし、議論が顕在化・活発化することもいいことだと思います。

 私たちの市民エネルギーちばからも検討会の委員に1名が参加していますが、彼と私も意見が完全に一致しているわけでありません。様々な点で主張が異なることはごく自然のことだと思います。

 各団体からの提言や報道から受ける印象は、ソーラーシェアリング=営農型太陽光発電への「規律強化」に対する危惧です。私も、問題事例の解決には役立っても、ソーラーシェアリングと日本の農業の可能性を伸ばしていく観点からは不完全な内容だと思います。農業政策としては半分足りないと感じるのです。

 以下、農水省の「考え方」について論点になっていることと、現時点(4月末)での私の考えを述べたいと思います。

提言・意見が寄せられた論点

▼遮光率30%未満

「遮光率が30%未満」という表現が記載されました。しかし、30%未満を「推奨します」なのか「助成金をつけます」なのか、あるいは30%未満でなければ「許可しません」なのか、などの記載はまだありません。

 現状の栽培作物(下図)を見れば、どのような扱いになるにしても、たとえばお茶は50%、ブルーベリーは40%など品目ごとの追加記載が必要です。私たちが10年以上栽培している大豆や大麦でも、遮光率33%で問題なく生育することが確認されています。

 私たちは3月に、千葉大学園芸学部の敷地内の水田に7区分のテストプラントを設置しました。イネの生育状況や収量、2等米比率、食味値などを、遮光率や太陽光パネルの種類を変えて比較します。同様の設備をまずは日本の各ブロックへ、最終的には47都道府県すべてに設置して、水田だけでなく様々な作物の検証を行なうことが急務だと考えています。

 それに、光合成には遮光率だけでなく、パネルのサイズや向きによる光と影の移動時間サイクルも重要な要素であることが明らかになってきました。こうした観点から最適なシステムを考えていく必要もあると思います。

▼栽培品目

「米・麦・大豆」が「推奨品目」とされていますが、圃場サイズという観点が抜け落ちているのが残念な点です。圃場面積の大・中・小に応じて農業経営の観点から最適な品目があり、それぞれの営農モデルごとに魅力も価値もあると思うからです。穀物類に限らず、地域特性や温暖化への適応も考慮して、様々な品目でいろいろな試みが進むことも期待されます。

 また、ソーラーシェアリング導入と相性の良いAIによるIoT、ロボット化や、様々な農業機器の自動運転化などを視野に入れることも重要と思います。

営農型太陽光発電施設の下部農地での栽培作物
(面積上位20品目)
営農型太陽光発電施設の下部農地での栽培作物(面積上位20品目)

▼「農山漁村再生可能エネルギー法」との連動

 農水省の発表では、「農山漁村再生可能エネルギー法」に基づいて「国が営農型太陽光発電のあるべき姿を明確化し、地方公共団体等がそれに沿って適否を判断できるように関連制度を見直し」と明記されています。方向自体は間違っていないと思いますが、中小規模のものに関しては、これまで通り独自のチャレンジを許容する余地を残していくことが好ましいと感じています。

 自治体と下図のような協議会の枠組みをつくるには時間がかかってしまうことが予想されます。

農水省の「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」より

・再エネの導入による地域の活性化
・農林漁業の健全な発展に資する取り組み
・農林漁業との土地利用の調整等について協議

日本の農業を13年前と比べると…

 営農型太陽光発電が正式に認められた2013年当時は、前年に組閣された第2次安倍内閣でした。成長戦略に基づき策定された「農林水産業・地域の活力創造プラン」の中には、その後10年間で、①農業・農村全体の所得を倍増、②40代以下の農業従事者を40万人にまで拡大、③担い手の米の生産コストを当時の全国平均比で4割削減、などの内容が明記されています。

 しかし実際には13年を経て、①物価が上がっているにもかかわらず「所得は横ばい」、②40代以下の農業従事者は31.1万人から12.5万人に減少、③労働時間は減少しましたが、円安と資材高騰の影響で生産コストは上昇しています。

 加えて昨今は、AIの台頭、世界的な戦争、進行する地球温暖化など、様々な不確定要素が追い打ちをかけてきます。日本の農業は、13年前の状況以上に瀕死の状態なのです。農水省も私たちもこれまでの先入観を捨て、「規律」だけでなく「創造」も加え、すべてのステークホルダーとともに健全な農業と健全な営農型太陽光発電を模索する時期に来ています。私自身も今回の検討が、日本の農業の将来にプラスになるように最後まで粘り強く関与していきたいと考えています。

希望する未来は自分たちで創る

 望ましい未来は、他人から与えられるものではなく、自分たちで獲得していくことが必要です。私自身は、これからの社会環境を考えると、人が集い、コミュニケーションに溢れる農業が、精神的にも経済的にも望ましい農業の形になると考えています。これまでの農業経営の発想の延長線上に未来の農業は存在しないと心から思います。仮にすべてがロボット化された農業が実現するとしても、それはその条件にあった一部の場所で必要な量を満たすことができるだけでしょう。ロボット化が必要条件だとしたら、そこからこぼれ落ちた地域は農業が存在しない社会になってしまいます。農村は農業があるから活き活きと機能する場所だと思うのです。

 同時に、ホルムズ海峡に依存しない農業を見つけることができなければ、今後、農業を継続していくことはとても困難でしょう。私たちが思い描く「希望する未来」は自分たちで創る。ソーラーシェアリングはそのカギになる新しい農業のかたちだと思うのです。

太陽光発電
市民エネルギーちばが運営するソーラーシェアリング施設(千葉県匝瑳市)。協賛する企業の社員が援農にやって来た

農水省の「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」より
①営農に関すること
・(営農者)地域計画に位置づけられた者であること
・(営農者)栽培する品目について50万円以上の生産・販売実績等を有している者であること
・(品目)地域で栽培され、販売ルートが確立している品目であること(米・麦・大豆は一定の遮光環境下でも適切な栽培管理を前提に規定の単収を確保することが可能)
・(品目)原則毎年収穫可能な品目であること等

②発電設備に関すること
・遮光率が30%未満であること
・機械作業に支障がないものであること(最低地上高3m以上、支柱間隔4m以上)等

③地域との共生に関すること
・地域の農業者や周辺住民をはじめとした地域の合意(*)が得られていること
・発電事業者から営農者等に対し適正な利益還元を行うこと
・土地改良事業の施行や農業経営の規模拡大等の施策の妨げになるおそれがないこと
・撤去費用の確保が確実であること 等
*「地域の合意」を得るために、農山漁村再生可能エネルギー法では上図のような協議会を設けることが求められている。


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【第1部 ソーラーシェアリングの理念】
1章 ソーラーシェアリングは新しい農業
2章 農村を再エネの先進地に
3章 新しい農業の可能性

【第2部 ソーラーシェアリングの技術と経営】
4章 プランの構想
5章 農業委員会への届け出
6章 設備の選択と建設
7章 電気の販売先と送電
8章 急速に進化する太陽光パネル
9章 太陽光パネルのリサイクル問題
10章 資金調達のさまざまなスキーム

【第3部 ソーラーシェアリングで描く未来】
11章 ソーラーシェアリングで地域おこし
12章 本気の企業との提携
13章 海外で進むソーラーシェアリング

【第4部 ソーラーシェアリングで活気づく人と地域】
設置事例

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