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トモシビソウ日記連載

福島

【トモシビソウ日記 第2回】本と一緒に草花ブーケも

菅家洋子さんは、ご夫婦でカスミソウを栽培する農家。その家業の傍ら、出店本屋「燈日草トモシビソウ」を開くようになって4年目になります。菅家さんが暮らす福島県西部の昭和村では、廃校を利用した交流・観光施設「喰丸小くいまるしょう」で村民がお店を開く事業を村が進めているとのこと。月に3~4日(週末)、菅家さんはここで小さい本屋を開くのです。本の仕入れ方などの詳細は『季刊地域』vol.58(2024年夏号)で紹介しています。この連載では燈日草ともしびそうの日々の様子を綴ってもらいます。本を通した素敵な出会いがあるそうです。

菅家洋子(福島県昭和村・花農家)

4年目 

5月、ある日の「燈日草」。

サクラが終わり、新緑の季節本番。出店している「喰丸小」の教室の窓を開けると、そよそよと入ってくる風がとても気持ちいい。校庭の木々、新しい緑がまとう澄んだ空気が舞い込んでくるようなさわやかさ。

5月15日で「燈日草」は4年目を迎えた。正直、よく3年間やって来られたなぁと思う。収支のこともあるし、農業の仕事をしながら出店を続けること、そして何かを継続していくということがあまり得意でない自分のこと、諸々につまずきながら。ありきたりに聞こえるかもしれないけれど、やはり、来てくださる方がいてくれるからこそ、今日まで続けることができた。足を運んでくれる人がいて、本を選んでくれる人がいて、顔を合わせて、言葉を交わして。改めて思うと、すべて宝物だ。

窓の外の木はすっかり緑色

「燈日草だより」

隣町から初めて来てくれた女性が、これまでの「燈日草だより」を全部ほしいと言ってくれた。2021年のオープン時から発行している「燈日草だより」は、その時々の話題を4、5個ほど取り上げて載せているA4用紙1枚、無料配布のおたよりだ。5月号で「No.26」になる。閲覧、持ち帰りができるよう店内に置いたファイルを見て、女性はそう言ってくれたのだった。

言ってみれば、ただの私が書いた、ただの紙。それを26枚持って帰ろうというエネルギー。そしてこの「燈日草だより」にそんな価値を見出してくださったんだと思うと、驚きと嬉しさがあふれた。

仕事やあれこれのさなか、「燈日草だより」は、ほとんど出店前日の深夜か当日早朝に書き上げることになってしまう。一銭にもならない、だれが読むかもわからない紙切れ一枚のために、時には何日もかけて書いたり消したりする。たぶん、なくても誰も困らない。私ですら。だけど、「こんなもの」と思うようなことが不思議と楽しくて、大切にしたいと思うことがある。「燈日草だより」は、そんなものの一つかもしれない。

「燈日草だより」No.26

春色のやさしい花束

「日々を燈す、本と植物」の「燈日草」では、本とともにお花も販売している。5月最初の出店で、今年初めての「草花ブーケ」を販売した。農家として出荷用に栽培している花が咲くのはもう少し先なので、野にある花を摘んで束ねた。菜の花、あさぎ大根(アザキダイコン)の花、スイバ、それに室内で冬越しした栽培の花「クナウティア・アルベンシス」。春色のやさしい花束になった。

母の日が近いので近所の姉さま(昭和村では先輩女性のことをアネサマと呼ぶ。男性だとアンニャ)にプレゼントするという友人が購入してくれたり、群馬からたびたび足を運んでくださる常連さんは、「長く飾って楽しんだよ」と後で教えてくれた。

6月からは、わが家で育てた花を店頭に並べられる予定。本と花束、いい組み合わせだと思う。

草花ブーケ

著者:菅家洋子(福島県昭和村・花農家)

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