2018年4月5日発売 定価926円(税込)


特集 継業 むらに必要な職業 誰が、どう継ぐ?


[今号の撮っておき]

むらの鍛冶屋

 干場健太朗さん(37歳)が、勤めていた役場を退職して「ふくべ鍛冶」を継いだのは2015年のこと。石川・能登の農家・漁家を100年以上支えてきた鍛冶屋の4代目だ。父親のもとで修業するかたわら健太朗さんが始めたのが「移動鍛冶屋」。鮮やかなワインレッドの車が、童謡「むらの鍛冶屋」を流しながら近隣の集落を巡る。

 ふくべ鍛冶の移動販売は、1908年(明治41年)に創業した初代が馬車を引いてむらに出向いたのがルーツとのこと。それから1世紀余り。農業も漁業も機械化が進み、人口が減るなかで、鍛冶屋も店でお客さんを待つだけでは商いが難しくなってきた。そこで4代目は「原点回帰」と、能登町内の集落を回り始めた。

 毎週木曜と金曜。新品も売るが、研ぎや修理が必要な金物を預かっては、再生品を1週間後に届けて回る。運転免許を持たない高齢者が、大きな鍬を持ってバスで往復するのはたいへんだ。毎週やって来る移動鍛冶屋は予想以上に喜ばれ、お客さんが増えたそうだ。

 あらためて「むらの鍛冶屋」の歌詞を読んでみた。第2次大戦中は国策により削除されていたという3番がいい。

     刀はうたねど 大鎌小鎌 馬鍬に作鍬 鋤よ鉈よ

     平和の打ち物 休まずうちて 日毎に戦う 懶惰の敵と

 むらの鍛冶屋は、平和のための道具を今日も打つ。

──編集部  写真=橋本紘二