2021年4月5日発売 定価943円(税込)


特集 脱炭素化のワザ 農家・農村が先進地


[今号の撮っておき]

困りごとを仕事に

 地域の困りごとを仕事おこしにつなげるのは本誌のテーマの一つだが、子育てで困った経験を、同じ境遇の若いママたちに喜ばれる仕事に結びつけたのは猪原有紀子さん。

 7年前、大阪市内で暮らしていた猪原さんは、イヤイヤ期の長男と生まれたばかりの次男を育てながら育児ストレスで落ち込んだ。その後、ひょんなことから和歌山の農村地域へ移住。そこで新たな課題に出合ったことから写真のような商品が生まれた。

 これ以上はネタバレになるので、p98からの記事をご覧ください。元気が出ます。

 その記事にはないことで今号の特集と関わる話を加えると、人生をかけて「子供にとってよい社会を残したい」猪原さんは、原木シイタケのホダ木を並べた上で太陽光発電(ソーラーシェアリング)も始めている。

──編集部 写真=猪原さん提供

[今号の特集――田舎の本屋さん通信より]

 菅義偉首相は首相就任後初の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにして脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。いまだ収束が見通せない新型コロナの陰に隠れてきたが、この首相宣言を機に世の中が「脱炭素化」に向けて急に動き出している感がある。

 脱炭素化とは脱化石燃料のこと。化石燃料依存を抜け出すカギは再生可能エネルギー、すなわち『季刊地域』でいう「地エネ」(地域のエネルギー)の普及拡大だ。これは、農村から電気代・燃料代が大手電力会社や海外へと「だだ漏れ」するのを防ぐという意味をもつ。

 記事では、町をあげて地エネで脱炭素化に取り組む事例やFIT(固定価格買取制度)を活かした太陽光発電の最新事情、発電した電気を直流のまま利用するメリットと方法などを紹介した。ソーラーパネルの価格低下とともに、従来は一部のマニアが取り組んできたオフグリッド(電力会社の送電網から独立した)の地エネ活用が、一般の人でも取り組みやすくなっている。ふだんは地エネを自給自足しながら、足りないときに電力会社の電気に切り替えられるシステムもある。いわば電気のDIYを楽しむのにも役立つ。

 また、電動トラクタの開発事情を研究者に聞いた記事は近未来農機の可能性を感じさせる。じつは電気で動くモーターはエンジンよりも農業機械に向いている。エネルギーの利用効率が高いうえ、作業にともなう騒音・振動が大幅に減るという。

 それにしても「脱炭素化」とはおかしな言葉ではある。地球上の生命は炭素の循環に支えられている。炭素を燃料としてしか考えないから「脱炭素」なのだろうが、農家にとっては違う。農業とは、炭素を腐植として地力化したり、大気中のCO2を光合成によって生命につなぐ営みである。具体的には、生ごみや炭を農地で活かして「脱炭素化」につなげる方法、カーボンオフセット制度を森林管理に活かす町の取り組みなども取り上げた。

畑で野菜を育てながら発電するソーラーシェアリング(千葉エコ・エネルギー)