来たる4月24日、増田寛也氏(元総務相、現日本郵政社長)らによる人口戦略会議が、新たな地域別将来推計に基づいた新「消滅可能性自治体」のリストを発表するそうだ。10年前に発表された旧リストは「増田レポート」と呼ばれ、多くの批判・反論を巻き起こして話題になった。
新リスト発表は、最近よく聞かれる過疎集落からの「撤退論」とも呼応した動きだろう。その発表前に、『季刊地域』では「増田レポート」をどう受け止めていたのか、かつての記事からふり返ってみよう。
まずは「増田レポート」=地方消滅論のおさらいから――。
文=編集部
地方消滅論
2014年に元岩手県知事・元総務大臣の増田寛也氏と日本創成会議が発表した「増田レポート」は、20~39歳「若年女性人口」の30年間の推移予測(2010~2040年)にもとづき、全国の市町村の約半数にあたる896について「消滅する可能性がある」と指摘した。なかでも2040年の推計人口が1万人以下の523は「消滅する市町村」と名指しされ、「地方消滅」の衝撃が全国に走った。
「地方消滅」の要因を増田氏らはこう解説する。戦後、大都市圏への人口流出が続いた地方では、大都市圏より30~50年早く高齢化が進んでいる。今後高齢者人口が減少することで人口減少が一気に進み、それとともに地方の雇用を支えてきた医療・介護サービスの需要も減り、大都市圏への若者層の人口流出が加速度的に進行する。東京圏に移った若者が子供を産んで育ててくれればまだしも、東京は出生率が1・09と全国最下位。東京に人口が吸い寄せられ、地方が消滅し、やがてその東京すらも人口が減少していく。人口のブラックホール現象が起きようとしているのだという。
「増田レポート」は人口の東京一極集中という大きな流れに歯止めをかけ、地方の人口再生力を維持するために、「若者に魅力のある地域拠点都市」を中核とする「新たな集積構造」の構築を提言した(「ストップ少子化・地方元気戦略」)。この提言は国の「地方創生」政策として取り入れられていく。
「増田レポート」がインパクトのある形で東京一極集中に警鐘を鳴らし、東京と地方の関係のあり方を見直すきっかけを与えたことはたしかである。しかし、そのセンセーショナルな打ち出し方も一因となって、レポートをめぐる報道では、ことさら「消滅都市(自治体)」「消滅可能性都市(自治体)」がクローズアップされた。いっぽうで「地方元気戦略」の本質は、東京への人口流出を防ぐ「アンカー(錨)」としての「地域拠点都市」へ、投資と施策を「選択と集中」させることにあった。この二つがあいまって、「周辺の農山漁村地域からの撤退」を強く印象づけたことは否めない。ただでさえ平成の大合併で活力をそがれ、小学校の統廃合(廃校)などで追い打ちをかけられてきた地域では、あきらめムードが加速。実際国は「地域拠点都市」でのコンパクトシティ化(都市の中心部に居住と各種機能を集約して人口を集積。高密度なまちを形成すること)を進めてきた。
(『季刊地域 vol.30 2017年夏号』2017年夏30号「農村力発見事典『季刊地域』の用語集59ワード」より)