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地域計画をつくろう連載季刊地域Vol.47 (2021秋号)試し読み

【どうする?地域計画①】人口減少時代の農地利用はどうする?

これまで人・農地プランが地域での話し合いにより作成されてきましたが、農業経営基盤強化促進法の改正により「地域計画」として法制化され、昨年から作成が本格化しています。そこで編集部では、過去に掲載した記事の中から「地域計画」づくりの参考になりそうなものを選んでみました。ぜひご覧下さい。

まとめ = 編集部

日本の人口は減少局面に入っている。とくに農村部は都市よりも速く減少が進むことが予想されており、政府は農地の利用のしかたや関連施策について見直しを始めている。

人口減少が進む日本

2050年の日本の総人口は、20年の8割に減ることが予想されている。今後100年で、100年前の水準に戻っていく可能性がある。

日本の総人口の推移

出典:農水省・新しい農村政策の在り方に関する検討会資料、編集部で一部改変

市区町村・人口規模別の人口減少率

出典:農水省・新しい農村政策の在り方に関する検討会資料、国交省国土政策局作成

担い手の農地受け入れも限界…

 農水省が行なったアンケート調査によると、高齢化などで離農する農家の農地に対し、地域の担い手だけでは受け入れが限界とみる市町村が8割を上まわった。

調査は「令和2年度農地バンク事業(農地中間管理事業)の活動状況等に関するアンケート調査」としてオンラインで実施。全国の都道府県502市町村を無作為に抽出し依頼したところ405市町村から回答があった。担い手(指導農業士、農業法人協会会員)自身への同様の質問では、少しなら受けられる(41%)、あまり受けられない(25%)で、66%がやはり限界を感じているようだった(1440人のうち795人から回答)。

兼業・多業農家、半農半Xも「担い手」
経営規模の大きな担い手だけでは農地を引き受けられなくなっている現状を受け、農水省は「人・農地プラン」の見直しも始めた。人・農地プランとは、農家どうしの話し合いに基づいて地域農業の将来を明確化するもの。従来、農地の受け手は認定農業者などの「中心経営体」とされてきたが、農業以外の仕事も組み合わせて働く兼業・多業農家、「半農半X」も位置づけられることになった(『季刊地域No.46 2021年夏号』p81 参照)。

農地を「粗放的」に利用、植林も

農地としての維持が困難な土地の利用法を議論した農水省の「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」が、6月に下記のような方向性を示した。農地は農業生産に有効利用することが大前提だが、使い切れない農地については、図の2〜3のような段階的な利用法を示し、最後は木を植えて森林にすることを提案している。

長期的な土地利用の検討の方向性

*有機栽培を「粗放的な利用」と言ってよいのかどうか? ただ、まとまった面積の耕作放棄地などで有機農業をすると、化学合成農薬などの使用禁止資材の飛来・流入を防ぎやすい利点がある。また「有機認証」を取得するには、通常は使用禁止資材を使わない「転換期間」2年を経て認証が得られるが、耕作放棄地で有機農業を始めた場合は、転換期間が1年に短縮される(編集部)。

「粗放的な利用」を支援する交付金

 21年度から農水省の農山漁村振興交付金のメニューに「最適土地利用対策」という項目が加わった。荒廃した農地や荒廃のおそれがある農地を地域ぐるみで有効活用するのに使うことができ、放牧や養蜂の蜜源作物をつくるなど、農地の「粗放的な利用」を支援する。農地の整備費用のほか、放牧に必要な家畜のレンタル料や蜜源作物や緑肥の種苗代、電気柵の設置費用などに充てることができる。

 支援対象になる事業実施主体は、市町村、JA、土地改良区、農地中間管理機構、地域協議会。地域協議会を組織する場合は、農家や地域住民が構成員となったうえ、市町村が加わることが条件だ。

使い切れない農地の活かし方

この特集では、農水省が検討を始めたような方法ですでに農地を活かしている事例を取り上げている。

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