今から10年前、『季刊地域』では「米価下落に反撃開始! お米の流通読本2015」を特集しました(2015年冬号(No.20))。この30年間で米が一番安かった当時と比べると、現在の価格は約3倍。食パンより高くなったと言われますが、その他の身近な食品と比べるとどうでしょうか。
文=編集部
●規模拡大が進展すればいいのか
昨年11月28日に農水省から「2025年農林業センサス結果の概要(概数値)」が公表された。
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/pdf/census_25.pdf
その冒頭に次のようにある。「農業経営体の減少が続く中、法人経営体は5年前に比べ 7.9%の増加。1経営体当たりの経営耕地面積は 3.7ha となり、0.6ha の増加。また、経営耕地面積 20ha 以上の農業経営体の面積シェアが、初めて5割を超えるなど、規模拡大が進展」
農業経営体(農家)は減っているものの、規模拡大が順調に進んでいることを誇る内容だ。しかし、その後に続く概要の中身を読めば安心していられる状況とは言えないだろう。
農水省は「農業経営体の減少が続く中」とさらっと一言ですませているが、その減少度合いは5年前の2020年時点と比べて23.9%! 自営農業を主な仕事にしている基幹的農業従事者数の減り方で見れば25.1%にもなる。
●集積・集約ですべて引き継がれる?
農家の数が減っても、経営規模を拡大する経営体が農地をすべて引き受けてくれるなら農業生産には影響しないかもしれない。規模拡大とセットでよく言われる農地の「集積」「集約」という言葉にはそんな印象がある。しかし現実は、リタイアする農家の農地が規模拡大する経営体にすべて引き継がれるわけではない。
図1は、販売目的で水稲を作付ける農業経営体が、それぞれどれだけの面積でイネを栽培しているかを、経営規模別に見たものだ。25年センサス結果の概要として公開されたデータをグラフにしてみた。

主食用米価格の推移
なるほど5年前と比べると、15ha以上の経営の作付面積が大きく増えている。反対に、15ha未満の経営はいずれも面積を減らし、その結果、全体の作付面積は5年間に7万7000haも減っているのだ。これは、全国4位の米生産を誇る宮城県の作付面積を大幅に上まわる。
図2のように、担い手と期待される層に農地集積が進むにつれ田の耕地面積が減ってきたという実態もある。

増産は簡単ではない
「令和の米騒動」では2024年の夏から米不足が明らかになった。そこで25年は主食用米の作付けが10万ha以上増えた。年々作付が減っていたとはいえ、政府が米の増産に舵を切れば、すぐに作付けが増えるようにも思える。だが、表を見るとわかるように、その10万haは、備蓄米をはじめ、飼料用米や大豆などの転作作物を減らした代わりに増えただけのことだ。休耕田や遊休田が復活したわけではない。転作作物を含めた水田の耕作面積が増えたわけではないのだ。

農家が減り、耕作面積が減っても、転作を減らして主食用米への振り分けを増やせば米の需要はまかなえるかもしれない。しかし、飼料用米や大豆の生産が減れば食料自給率は下がるだろう。
いま5kg4000円を超えているスーパー店頭での米の小売価格がまもなく下がることを指摘する声は多い。心配なのは2026年産米の農家にとっての販売(出荷)価格だ。ふたたび米騒動前のような低米価になることがあれば……。リタイアするのは小規模農家だけでなく大規模農家にも及ぶかもしれない。
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