特集「有機農業 点を面にする」

今号の特集は「有機農業 点を面にする」。
地球温暖化対策と並んで持続可能な食料システムの構築は世界的な課題。日本では農水省が2021年に「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)を策定し、2050年までに有機農業を全耕地の25%(100万ha)に拡大する目標を掲げている。有機農業に地域ぐるみで取り組む「オーガニックビレッジ宣言」をした市町村は131まで増えた。各地の事例からは、まさに点から面へ仲間を広げる様子が見えてきた。
たとえば富山県南砺市。自然栽培を長く続けてきた農家は、近所に仲間を増やしながら水田の除草技術をレベルアップ、単収が倍増した。消費者向けに米づくり教室も開き、受講生の中から移住就農する人も出てきた。また若手の野菜農家は、身近な有機物を活かした堆肥づくりに力を入れ、堆肥の販売にも乗り出して有機農業を広める。堆肥の原料の麦芽粕を引き取る市内のクラフトビール工房と近所の集落営農組織を引き合わせ、地元産麦のビールづくりも働きかけている。

長野県松川町は有機学校給食の先進地の一つだ。有機野菜の栽培を始めた農家に刺激されて学校給食の栄養士や調理員が本気になり、さらに町内の企業が有機農家に依頼して社員食堂で地元野菜のサラダバーを開設……と、有機農業が町ぐるみの動きに広がる様子を取材している。
そのほか、農家の姿を見なくなった田んぼににぎわいを取り戻そうと、地域住民とNPOを立ち上げ、有機農業で新規就農者を迎えようと奮闘する農家の記事もある。一方、地元の有機農家とつながった保育園の園長は、農業への関心が高まり自分も有機農業研究会のメンバーになった。保育園の給食に地元の有機野菜を使うのはもちろん、子供食堂やマルシェを開催して地域とのつながりを深めている。

有機農業は化学肥料や化学農薬を使わない農業とされているが、それは一面的な捉え方に過ぎない。それを各地の事例が浮き彫りにする。それぞれの始まりの点は、消費者・市民も巻き込んで面として広がりつつある。
そのほか、
お米の値段、どうあるべきか?/中山間直接支払制度の混乱、その真の問題点/『能登のムラは死なない』その後/電動草刈り女子育成教室/空き家維持管理サービスで起業/山採り盆栽で里山がにぎわう/スマホで簡単!森林情報がすぐに調べられる、ほか。

ぜひ本誌でお楽しみください!