
奥州市の胆沢図書館は、市内でも山あいの地域に立地し、来館者数が少ないことが課題でした。「このままではいらないといわれてしまう」と危機を感じた主任司書の渡辺貴子さん。お金をかけず、今ある蔵書で何かできないかと、猫をテーマにした図書館づくりを思いつきました。世間は空前の猫ブーム。さらに『吾輩は猫である』を著した夏目漱石は、2016年が没後100年、2017年が生誕150年。調べると猫関連の蔵書も400冊以上ありました。
まずは2016年2月22日(猫の日)に小さな棚で猫本コーナーを、続いて猫の生態や歴史、関連小説を集めた企画展を実施。利用者の反応もよかったので、2017年2月22日に「猫本コーナー 猫ノ図書館」をオープンしました。館長には市内の飼いネコから公募し、投票で選ばれた「むぎ」が就任し、SNSで活躍しています。
猫ノ図書館づくりの参考にしたのは、東京・神田神保町の姉川書店内にある「猫本専門 神保町にゃんこ堂」。書店内に小さな書店をつくるアイデアや、目線より上に写真パネルを展示したり表紙を見せて陳列する本を増やすなどの工夫を、館内の他のコーナーでも積極的に導入しました。すると町内外から注目を集め、来館者数は3割アップ。「楽しそうに館内を歩く利用者が増えて、職員もますますやる気になっています」
文=農文協 高橋明裕
『季刊地域』2019年冬号(No.36) 「国内初「猫ノ図書館」 陳列工夫で来館者3割アップ」より