懸案として残っていた5期対策の最終評価と第三者委員会の最終議事録が最近公表された。そこには、「第5期対策最終評価の修正案に対し、一部の委員から反対意見があったため、取りまとめには至らなかった」とある。どういうことなのか、中身を見てみよう。
文=編集部
最終評価持ち越しの経緯
新年度となり、中山間地域等直接支払制度の第6期対策(2025~29年度)の内容が農水省から公表されている。これを見ると、5期対策で集落機能強化加算に取り組んでいた集落協定では、新年度からも「経過措置」としてこの加算を利用する道が開かれたことがわかる。

中山間地域等直接支払制度・第6期対策(2025~29)パンフレットをすべてみる(農水省HPより)https://www.maff.go.jp/j/nousin/tyusan/siharai_seido/attach/pdf/index-113.pdf
一方で、5期対策の最終評価が年度をまたいだのは、この連載で取り上げてきたように、農水省が集落機能強化加算廃止の意向を突如示したこと、それに抗議した5期対策第三者委員会委員の要望で追加の第11回委員会(2024年11月19日)が開催されたものの紛糾し、最終評価を見直す事態になったことが原因だ(連載⑧参照)。
当初、最終評価のために開かれた第10回会議(24年8月2日開催)で、農水省は集落機能強化加算について否定的な見解を示していなかった。ところが、8月末に25年度予算の概算要求で明らかになった6期対策からこの加算が消えていた。第三者委員会の委員にとっては寝耳に水。さらに驚いたのは、農水省側が第11回の会議の場で、不当とも思えるほど集落機能強化加算に否定的な評価を下したことだ。しかも会議に参加していた農村振興局長からは、集落機能強化加算が担った高齢者の生活支援などは農水省の本分ではない、という意味の逆ギレ発言まで飛び出した。
最終評価案には否定的見解はなかったはずの加算を1期5年だけで廃止。そこに齟齬と第三者委員会に対する軽視があるうえ、理由を問いただせば「手のひら返し」の否定的評価。委員側が納得できないのも当然だった。
修正案にさらに「修正意見あり」
3月31日付けで公表されたのは、第12回委員会の議事録と5期対策の「最終評価(案)」だ。
議事録といっても実際に12回目の会議が開かれたわけではない。農水省がまとめた最終評価の修正案に対して各委員からの書面提出という形になったようだ。
修正案は、本編部分は昨年8月時点のものを見直す必要はないとしてそのまま(集落機能強化加算が廃止に至るような記述はない)。それに、第11回委員会の議事概要を加えた形になっている。
第12回の書面議事録は、その修正案に対してさらに修正意見があるかないか、その他の意見があるかないかを、各委員が記名して提出したものだ。
これを見ると「修正意見あり」としたのは榊田みどり委員(農業ジャーナリスト)と橋口卓也委員(明治大学教授)。2人が「一部の委員」として修正意見を記したために、最終評価が「案」のまま取りまとめに至らなかったということのようだ。だが「その他の意見」を読むと、他の委員も最終評価に納得している人ばかりではなさそうだ。それに間接的に聞いたところでは、書面提出後の委員に対し、当局から「『意見なし』にしないと大変なことになる」と意見書の修正を執拗に迫る動きもあったとか。
では、2人の委員はどんな修正意見を求めたのか。詳しくは上記の農水省ウェブサイトでご覧いただくとして、とくに橋口委員の書面を読むと、農水省が集落機能強化加算を強引に廃止に持ち込もうとした経緯の異常さがよくわかる。
この問題の経緯に詳しい明治大学の小田切徳美教授によると、2人の委員が主張を曲げなかったことで、「6期対策は『前期対策の最終評価なき対策』という状況に正式になった」という。
