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最新号より試し読み季刊地域Vol.66(2026夏号)

茨城

干しイモ残渣から良質飼料をつくる 三方よしの資源循環モデル

干しイモ

日本一の干しイモ産地・茨城県ひたちなか市および東海村地域では、年間約1万tもの製造残渣が発生し、長年の課題となってきました。その残渣を地域資源として有効活用しようと設立されたのが「干し芋フードサイクル協同組合」です。当組合の小堀信弘さんに、地域ぐるみで実現した循環型モデルの取り組みをご紹介いただきました。

執筆者:小堀信弘(干し芋フードサイクル協同組合)

『季刊地域』66号(2026年夏号)「干しイモ残渣から良質飼料をつくる」より

成長の裏側にある残渣問題

 茨城県ひたちなか市および東海村地域は、日本一の干しイモ産地として広く知られている。太平洋に面し、冬の寒風と乾燥した気候を活かして生産される干しイモは、近年の健康志向の高まりや人気の品種開発を背景に需要が拡大し、地域の基幹産業として発展を続けている。しかしその一方で、製造工程から発生する残渣は、県内で年間1万tにも上り、長年にわたり産地の構造的課題となってきた。

 干しイモの製造過程では、皮や切れ端などが必ず発生し、その量は原料の約3割から4割にも及ぶとされる。これらの残渣は従来、生産者が自家の畑にすき込むなどして処理してきた。しかし、蒸かしたサツマイモは分解に時間を要し、長期にわたり土壌中に残存してしまう。その結果、土壌環境の悪化や腐敗による臭気の発生で近隣住民から苦情が出るなど、環境面での問題が指摘されてきた。

 また、産業廃棄物として処理業者に委託する場合には、相応の処理費が必要となる。とりわけ規模の大きな生産者は負担が重く、経営を圧迫する要因となっていた。

 一部では乾燥させて加工食品等に再利用する取り組みも見られるが、量が限られることに加え、設備や手間の面から広く地域全体に普及するには至っておらず、根本的な解決にはつながっていないのが実情だ。

組合設立、残渣を資源へ

 こうした課題に直面し続ける中、「日本一の干しイモ産地として、このままでよいのか」という強い危機意識が干しイモ農家と関連事業者を動かし、2025年4月、「干し芋フードサイクル協同組合」が設立された。当組合は、中小企業等協同組合法にもとづく事業協同組合で、地域内の農家や事業者で構成される。設立当初18人の組合員でスタートした体制は、26年4月現在でほぼ倍増(35人)している。

 事業活動の主眼は、干しイモ残渣を廃棄物ではなく飼料資源として位置づけ、畜産分野へ供給することにある。26年1月から3月末までの繁忙期は、1日平均約10t(稼働日ベース)の残渣を受け入れ、県内の畜産事業者2社、飼料製造業者1社、千葉県の酪農家1軒に対し、飼料として月間約250t供給した。来シーズンは、今年11月中旬から翌年3月中旬までの繁忙期の目標を、月間の残渣受け入れ量・供給量とも450tに設定し、年間目標2000t(県内で出る残渣量の20%)の受け入れを達成したいと考えている。

 運営面では、効率性とコスト削減を徹底している。残渣は500kgのコンテナ単位で組合員によって直接集荷場に持ち込まれる。乾燥工程を省くことでコストを抑えつつ、迅速な出荷・配送を実現している。

 加えて、保存性向上のために残渣をペースト状に加工し、ギ酸(pHを調整することで保存性を高める有機酸)を添加する工夫も行ない、品質の安定化と腐敗防止を図っている。

 残渣の搬入作業などは極力組合員自身が行ない、常駐する作業者の負担軽減につなげている。

干しイモ残渣のフードサイクルの流れ

生産者と実需者双方が評価する循環モデル

 干しイモ農家からは、本取り組みに対する大きな期待とともに高い評価を得ている。「これまで処理に苦慮していた残渣を安定的に引き取ってもらえることで、コスト面でも労力面でも大きく負担が軽減された。ぜひこの事業を継続していってもらいたい」といった声が数多く聞かれる。

 また「干しイモの残渣が牛乳の原料の一部として活用されていることを消費者に伝えると、とても好印象につながる」との声もあり、単なる処理問題の解決にとどまらず、商品価値の向上にも寄与している。

 一方、実需者である酪農家からの評価も良好だ。干しイモ残渣は糖質を豊富に含み嗜好性が高いことから「牛の食いつきが良い」との実感があるという。併せて、「輸入飼料価格が高騰する中で、コスト面で有利であるだけでなく、牛の生育状況も良好で、乳量の増加につながっている可能性が高い」との評価も得られている。

干しイモ
干しイモ残渣からつくった飼料の出荷作業。県内外の畜産農家などのもとに運ばれる

 茨城県畜産センターで、残渣の成分分析と給与試験が行なわれた。その結果、嗜好性が良好であること、給与前後での乳量・乳成分の変化において統計学的に差がないこと、ビートパルプの代替が可能であることを確認している。

 このように、排出側には「負荷軽減」、受け入れ側には「良質飼料」、そして地域社会には「環境保全」という、まさに三方よしの好循環が生まれ始めている。

搬入されてきた干しイモ残渣。右は未加工、左は破砕してギ酸を加えペースト状に加工したもの。大規模な畜産業者には未加工のまま出荷。中・小規模な業者や、気温が高くなる4月以降は加工したものを出荷する。

実現には「共助」「公助」も不可欠

 当組合の取り組みは、これまで干しイモ産地に存在していた環境面、経営面、労力面にまたがる大きな課題に対し、資源循環という視点から解決を目指していくものである。しかしながら、個々の農家や事業者による、いわゆる「自助」努力だけでは限界がある。だからこそ、生産者や事業者が連携し、協同の力で課題解決を図る「共助」の仕組みが重要となる。今回、組合を通じて相当量の残渣が集約され、畜産事業者に対して必要な量を安定的に供給できるのも、まさに協同の力の成果にほかならない。

 また、この共助の取り組みを持続可能なものとするためには、行政による支援、すなわち「公助」の役割も欠かせない。本事業は、茨城県県民生活環境部環境政策課の「令和7年度食品残渣資源循環モデル形成支援事業」を活用し、飼料製造用の機械設備等を整備した。さらに……

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