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最新号より試し読み季刊地域Vol.67(2026秋号)

【映画】この秋公開 『百姓、わらう。』

映画『百姓、わらう。』チラシ

『季刊地域』67号(2026年秋号)「この秋公開 ドキュメンタリー映画『百姓、わらう。』」より

『百姓の百の声』の待望の続編

 2022年公開のドキュメンタリー映画『百姓の百の声』を覚えておられるだろうか? 農家のことを何も知らなかった監督の柴田昌平さんが「百姓国」の門をたたき、『現代農業』の取材に同行しながらカメラを回したオムニバス形式の映画だ。映画を観る人は「百姓とは農家とは、こんなにも豊かで頭がよくて、おおらかで知恵と工夫に満ちた人たちだったのか」と、監督の感動を追体験できる。毎日、食べて生きているのに、それが生まれる場所、生み出す人々について自分は何もわかっていなかった。ここには、現代社会が失ってしまった「本来の人間のあり方」みたいなものがある。先が見えない世の中だが、百姓国にはそこを打破する「未来への可能性」があるんじゃないか。そんな気分が盛り上がってきたところへ――「さて、どうする?」で映画は終わる。

49歳以下の絶滅危惧種の農家たち

 それから3年にわたる新たな取材を重ね、柴田監督は続編として『百姓、わらう。』を完成させた。26年9月26日から、東京の小さな映画館での公開を皮切りに、全国へと展開していく。

 前作『百姓の百の声』には、どちらかというとレジェンド農家が多く登場したが、今作では取材対象を49歳以下の農家に絞った。49歳以下というと、農業界では超若手で全体の約1割。日本の全人口から見ると、たった0・1%の存在だという。そんな「絶滅危惧種」の百姓たちだからこそ、自ら農家であることを選び、楽しみ、誇りを持って生きていることが伝わってくる。むらや先人を心からリスペクトし、土や自然とのつきあい方を謙虚に学ぶ。農を中心とした暮らしだから、家族との幸せな時間を大事にできる。映画の中では田畑で思いっきり遊ぶ子供たちのシーンが印象的で、「こういう子育てなら、きっといい未来になっていく」と安心した気分になれる。

ここに見えている棚田は、広島県の岡田和樹さん(36歳)が、耕作放棄地のやぶの中から一人で復元したもの。山の中に埋もれる石垣を頼りに、先人たちと対話しながらの作業となった。手前の煙は、抜根した木を燃やして「焼き土」を製作中。これも先人に学んだ技術
ここに見えている棚田は、広島県の岡田和樹さん(36歳)が、耕作放棄地のやぶの中から一人で復元したもの。山の中に埋もれる石垣を頼りに、先人たちと対話しながらの作業となった。手前の煙は、抜根した木を燃やして「焼き土」を製作中。これも先人に学んだ技術

問題だらけの農業界

 だが今作は、それだけでは終わらない。「さて、どうする?」の先がある。

 前作は映画館での全国上映のあと、各地に自主上映の波が広がったが、監督はできるだけ現地の小さな会にも出かけ、集まった市民や農家と交流した。翌日には、仲良くなったその農家の田畑を訪ね、取材を重ね、カメラを回す。ときには3カ月近く、周辺に住み込んで撮影を続けたこともあった。そうやって地を這うようなドキュメンタリーの手法を通じて、監督は百姓国の言葉をより深く理解し、自分のものにしていった。農家のふところに入り込んで、内側から問題をえぐるようになった。

 「『農家が減った』と自然現象みたいな言い方をする人が多いけど、実際は『減った』のではなく『減らされてきた』のだ」とは、今作に登場する農家の一人、新潟県の鴫谷幸彦さんが普段からよく言うことだが、柴田監督も取材を進めるうちに、「もしかしてこの国の農政は、農家を守ることを目的としておらず、消費者に安く食料を提供するために農家に無理を強いる(仕えさせる)システムになっているのでは?」と思うようになったという。

 ここには構造的な問題がある。「効率化」や「規模拡大」の妄信が農家を苦しめ、減らしてきた。持続こそが価値であるはずの農業・農村に「右肩上がり」を求めるから疲弊する。「むらありて、米ができる」のに、農村の力もどんどんそがれてきた。

 だがそういう実態を、多くの国民は知らないし、知らされていない。食べものの向こうにいる人の苦しみも喜びも想像できない。すると必然的に、安さと効率の価値観が食べものをも支配する世の中になる。コスパとタイパで大事なものを見失い、利己主義が広がる。これは、農政も悪いが、視聴者に心地よい表面的な報道しかしないジャーナリズムの責任もかなり大きい。だからこそ、今回は自らの手で複雑な問題をわかりやすく提示し、食べ手の心にダイレクトに響く映画にしたかったのだ、と柴田監督は言う。

 新進気鋭の「農政ジャーナリスト」誕生。それがこの映画の意義の一つでもあろう、とひそかに思う。

映画で大勢の心に届ける

 百姓はしかし、そんなことを意に介さず、今日もわらっている。喜怒哀楽を越え、自分の足で地に立ち、自然を相手に自分の頭で考え生き抜いている。その笑顔はとてつもなく自信に満ちて、吸い込まれそうになる。

 映画という「心に届く手段」で、農家のことを一般の人向けに表現してくれたこの作品、農家の側から描くのが信条の農文協としては、ちょっぴりうらやましく思うと同時に、心から敬意を表し、拍手したい。


映画『百姓、わらう。』チラシ

【上映情報】
ドキュメンタリー映画『百姓、わらう。』
監督 柴田昌平
制作・著作・配給 プロダクション・エイシア
2026年、138分

2026年 9月26日~ ポレポレ東中野(東京)
    10月17日~ 第七藝術劇場(大阪)
    10月23日~ 京都シネマ
    10月31日~ シネマ・ジャック&ベティ(横浜)
以後、札幌、仙台、山形、福島、上越、広島ほか各地で順次劇場公開
*自主上映は2027年より開始。申し込み受付中。

 公式サイト https://www.100sho.info


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