「収穫作業は熟した実をすべてとってもらうだけだから、バイトの人でもできる。でも、出荷前の家庭選果は知識が必要で、なかなか人を呼びにくい」
そう話すのは熊本市のミカン農家・田中博文さん。昼間の収穫後から始めて22時まで選果するから、秋から冬の時期は「月9」など夜のドラマを見れたことがなかったそうだ。
ミカン産地として生産量を維持するためにも、家庭選果を理由に高齢の担い手がやめてしまうのを防ぎたい。それにもし機械が壊れたりしたら、新たに家庭選果機を入れるのに経費が掛かるのも心配だった。
そこで田中さんは2018年、日本で初めてミカンの「家庭選果機組合」を発足させた。家庭選果の共同化だ。18人の農家が集まり、半日交代で農家1人、バイト1人ずつの3人態勢。4~5日に1度当番として作業する程度で選果の時間に縛られなくなった。
最初は、他人に選果前のミカンを見られるのに抵抗もあったが、1年たつと慣れてしまったそうだ。また、この仕組みを継続するために、今までよりも人件費や経費がかかるようになったが、メリットは何より体が楽になったこと。それに「月9が見られるようになったんだよ」と田中さんはニヤリ。
(農文協 津田 美優)