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長野

【小さな田んぼの収穫・乾燥法】Vol.3 長持ちさせるバインダーの使い方

『季刊地域』2025年秋号(10月6日発売)の特集は「米騒動の『次』へ お米と田んぼの誘引力」。いま米を自分でつくることに関心を高めている消費者と、そんな人たちに仲間になってもらおうと新しい試みを始めた農家・農村の動きを取り上げています。このミニ連載(3回)は、特集に入りきらなかった秋の田んぼ作業のノウハウを公開します。
3回目(最終回)は、『農機具屋が教える 機械修理・メンテ術』(農文協)の著者でもある松澤努さんから、イネを刈り取る機械・バインダーを使いこなすノウハウをお届けします。

執筆者:松澤努(長野県・農機具屋)。1971年長野県生まれ。地元のJAで農機具の修理・整備を担当したのち退職、現在は農機具屋とライスセンターを開業

バインダーには3タイプ

昨今のお米の価格高騰により、遊休水田を復活させたり自家用のお米は自分でつくったりする方が出てきたようです。また、中山間地の小規模農家のなかには、お米の価値を上げるために有機栽培にしたり、それをはざ掛け米にする農家もいます。

はざ掛け米に使う機械はバインダー。バインダーには3タイプあります。軟弱地盤では1輪1条刈り、水田の条件が良ければ2輪1条刈り、水田の条件が良く効率を上げたければ2輪2条刈りが向いています。

1)2輪1条刈りバインダーでのイネ刈り
2輪1条刈りバインダーでのイネ刈り

バインダーによるイネ刈りは、田んぼが軟弱な状態でもできますが、できればよく乾いた状態で行なうのがベスト。バインダーは刈った稲束はその都度倒すので、精米したお米に小石が混じったりしないようにするためにも、極力条件を良くして作業するのがよいでしょう。

エンジンが始動しないのは…

さて、いよいよイネ刈りとなって、小屋からバインダーを引きずり出してきます。燃料(ガソリン)を入れてエンジン始動。ところが、リコイルスターターを20回も30回も引いてもエンジン始動しない。あるいは、キャブレター付近からガソリンが漏れている……。これは、前年の格納時にキャブレターの燃料を抜かずに保管してしまい、燃料が腐食してキャブレターが詰まっているのが原因です。

刈り取り作業の前日や当日になって初めてバインダーを動かしてみる、という方が多いかもしれません。しかし機械が動かなくては予定が狂ってしまいます。せめて1週間前には確認したいものです。

エンジンが始動したら、いったん止めて、各可動部にオイルを注油。再始動して、走行、刈り取り、結束などの作動確認をします。

トラブル回避のポイント

以下には、作業時にトラブルを回避するためのポイントを挙げてみます。

▼タイヤの空気を抜く――1輪1条刈りの場合

20~30年前から1輪1条刈りには低圧タイヤが採用されている。空気をあえて抜いて接地面積を増やすことで、軟弱地盤でもスリップしにくく安定して走行できる。使用する際は、タイヤのバルブから空気を完全に抜く。

2)1輪タイヤのバルブを開けて空気を抜く
1輪タイヤのバルブを開けて空気を抜く

▼結束ヒモについて

機体にヒモの通し方が書かれている。最後、結束機のホルダーにヒモをつなぐ作業は、エンジンを始動させ、刈り取りクラッチを入れることでつながる。

また、結束ヒモの質に注意。ビニール系のヒモ(PP)は劣化しにくいが、麻(ジュート)ヒモはできれば毎年新しいヒモを使うのがいい。翌年も使いたいときは、ポリ袋に入れ、風通しがよく日光の当たらない所で保管する。

結束ヒモ
結束ヒモ
ヒモの通し方は機械本体に記載がある
ヒモの通し方は機械本体に記載がある

▼束押さえ(コッカンガイド)に注意

これが折れてなくなっていたり、外側に向いていると結束ミスが出やすい。なくなっていれば農機具屋さんに相談、外側に開いていたら手で曲げて内側に向ける。

結束ミスが出る原因には機械的なものもあるが、稲穂が倒れていることが原因の場合もある。バインダーの進行方向に向かって右側に稲穂が倒れていると結束ミスが出やすい。その場合も束押さえを内側に曲げて、バインダーに入ってきた稲束をなるべく立つようにするとよい。

また、面倒だが、倒れているイネの向きを左に向けると結束ミスが減る。

束押さえを指で押して内側に曲げる
束押さえを指で押して内側に曲げる

格納前にすること

今年の刈り取り作業も終わるとバインダーの格納です。

その前に車体全体をまんべんなく洗車し、車体が乾いたら、可動部(ワイヤー、刈刃、チェーン、結束部など)にしっかり注油。ホームセンターなどで売っている浸透剤や錆び止めスプレーでもかまいませんが、できればエンジンオイルやギヤーオイルを油さしに入れて注油するのがよいでしょう。また、刈刃にはグリスを付着させておくとなおよいです。

注油が済んだら、タイヤに空気を少し入れてタイヤを膨らませておく。使用時のまま空気を抜いた状態で1年保管すると、タイヤとホイールが剥がれてしまったり、タイヤが割れてしまうことがあります。これを防ぐため、さらに保管場所ではタイヤが浮いた状態で保管するとよいでしょう。エンジンの下部にブロックや角材を置くか、ジャッキを使って、車体を持ち上げておきます。タイヤを浮かせて保管するのは、2輪のバインダーの場合も同じです。

エンジンの下にブロックを入れてタイヤを浮かせる
エンジンの下にブロックを入れてタイヤを浮かせる

また忘れてならないのは、燃料タンクとキャブレターのガソリンを抜いておくこと。

最後にシートをかけておしまい。


*10月6日発売の『季刊地域』2025年秋号(No.63)は、昨年来の米価高騰を奇貨として、農家と一緒に米づくりを楽しんだり、自ら米づくりを始める消費者・市民を増やすのに役立つ内容です。ぜひ、買い求めください!


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小さな田んぼの収穫・乾燥法(全3回)

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