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最新号より季刊地域vol.64(2026冬号)

農業を知らない人に、いま届けたくて お米の本をつくった |『いま知りたい お米と農家の話』発行によせて

いま知りたい お米と農家の話 農家と考える米価・流通・田んぼの未来

 2025年の春から夏、農文協は焦っていた。

 新聞もテレビも毎日、米のことを報道する。ネットニュースにも流れてくる。居酒屋でもサラリーマンが米の話題で盛り上がる。備蓄米放出や米価高騰の犯人探し、減反や増産への賛否、小泉劇場、農業問題のにわか評論家も続々登場――。

 こんなにも世間の関心が米に集まっているなか、何かせねばもったいない。ふだんは見向きもされない農家・農村に復権のチャンスが到来している。だがどうしたらいいだろう。事態は刻々と変化して、情報はすぐに陳腐化する。新聞やネットのようにスピード感で勝負できない出版分野で、農文協はいったい何ができるだろう?

 躊躇していたが、考えてもラチがあかず、結局は愚直に本を出すことに決めた。普段は農家や農村にかかわる人向けの本を出すことが多いが、せっかくなら農業を知らない消費者に届ける本をつくろう。ニュースでやっているのは「米が高いか安いか」の話だけで、農家の本当の姿はほとんど報道されていない。高いか安いか「モノ」としての米の向こうには、農家がいて農村があるのだと、なんとなくわかってもらえるような本がつくれないだろうか?

 ちょうど『現代農業』2025年8月号が「農家がリアルに考えた米の適正価格」の特集だった。農家魂がビシバシ伝わってくるいい特集だったし、米価問題の答えがここにある、と思えた。この特集を核に据えて消費者が読めるような米の本にするなら、意味がある出版になるのではなかろうか?

 そういう企画を立ち上げたいとまわりに漏らしたところ、「それはいい! ぜひ私も参加させて」という人が、思いのほか多くいた。農家もだし、農家の周辺にいる応援団の人たちだ。彼らもまた普段から、どうやって農外の人たちに農業のことをわかってもらえるかに悩んでおり、チャンスがあれば何かしたい、できることはないだろうか?と考えていたのだ。

 そんな方々からいただいた原稿もたくさん入れて、このたび出来上がった本が、『いま知りたい お米と農家の話――農家と考える米価・流通・田んぼの未来』(1月中旬発行)。『季刊地域』2026年64号87ページの『つながるごはん』とともに、農文協のこの冬のとっておきの「お米本」だ。

 居酒屋で知ったかぶりをして米の話をしているかと思ったら、いつの間にか近くの泥田に入って農家の手ほどきで手植え体験していた……。農業の苦労と喜びを体で感じた……。お米の値段の向こうに、スーパーではなく農家が見えた……。

 この本を読んで、そんな人が一人でも二人でも増えてくれたら嬉しい。農業専門用語には「ことば解説」をたくさんつけた。「10aってどのくらい?」の疑問にも、頑張って答えを用意した。

 農家や農業関係者の方々にも十分読みごたえはあると思うし、心当たりの非農家にもおすすめいただけたら、とても嬉しい。


この本の目次より

1章 意外と知らない ご飯の向こう
 最近、お米のことが急に気になっている方々へ
 【ルポ】新潟の米農家 八十八手の米づくり、研いで炊いて仕上げてほしい
2章 資料編 米問題の歴史年表とことば解説・田んぼのイネ図鑑
 お米についての歴史年表
 お米の歴史 ことば解説
 【写真】イネを育てる現場より
 【図解】イネの一生
3章 データ編 米の価格と流通、「令和の米騒動」の実態
 【写真】ご飯1杯の値段 高い? 安い?
 【データ】米の価格と生産資材価格の推移
 【図解】米の流通と各段階の米価
 プレイバック「令和の米騒動」
 米価高騰の要因
  米はやっぱり足りなかった
  JA系統出荷の減少と業者間取引
 【図解】農家が足りない!
4章 農家がリアルに考えた 米の適正価格
 農家が考えた米の適正価格はいくら?
 「令和の米騒動」が起きたとき、農家が思ったこと
5章 農家が農業を続けられるしくみへ
6章 田んぼは米を生み出すだけじゃない
――お米を食べると守られていくもの
7章 農家とつながる 米つくりをやってみる
――小さく始める食料安保

*本文中の専門用語には、随所に「ことば解説」を挿入。稲作基本用語のほか、「10aとはどのくらい?」「米1俵は何kg?」「JAの概算金とは?」などもわかるほか、「1俵○○円の米だと5kg袋で○○円。ご飯茶碗1杯○○円」の換算表も。

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