全国をまわる農文協職員が集めた元気な活動の数々をご紹介します。「ゆるがぬくらし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む全国各地の耳寄りな情報です。

岡山市の瀬戸南高校で2021年から始まった「多数回中耕除草法」は、無肥料・無農薬の米づくりプロジェクト。きぬむすめを50a栽培し、23年に反収10俵を超えたそうです。「新しい情報は追っていたけど、まさか江戸時代の農法が今でも使えるとはね」と話すのは農場長の野上広志さんです。
「中打ち八へん、犬を餓死させる」という記述が江戸時代の『私家農業談』にあります。
*1789年に現在の富山県で書かれた農書。農文協発行の『日本農業全集』第6巻所収
これは中耕除草を8回行なうことで品質のいい米がとれ、飼い犬に与えていた実入りの悪いモミがなくなる、という意味。「手作業で8回もよく労力をかけたと思う。今なら田植え後1週間おきに乗用型の除草機で4回やればいいとわかった」と野上さん。
なぜ中耕除草をするだけで無肥料でも増収するのか。野上先生によると、水田の表層で大気中のチッソを固定する光合成細菌が、攪拌されて土中にすき込まれ、イネに肥料成分を供給する。また根を切ることで勢いのある新根が出るから、と考えているそうです。
2023年の「全国農業高校お米甲子園」で研究の成果を発表し、プレゼンテーション部門でグランプリを獲得。2024年は前年より減ったものの反収7.4俵で慣行農法に劣らない収量。何も入れないから低コストなうえ、価格も30kg1万3000円で売れるそうです。
(農文協 原田順子)