ホーム / 試し読み / 季刊地域No.62(2025夏号) / 空き家バンクと維持管理サービスを組み合わせて起業
試し読み季刊地域No.62(2025夏号)

宮城

空き家バンクと維持管理サービスを組み合わせて起業

移住希望者と地域の空き家をつなぐ空き家バンク。マッチングを増やすポイントは、すぐに住める状態にしておくこと。そこで空気の入れ替えや草刈りなどの維持管理サービスを新たに始めたら、すぐに7件の依頼があった。

取材対象者:米津 岳(宮城県加美町・リロカリコクリ株式会社)

『季刊地域』2025年62号

なぜ、空き家に住めないの?

 地域おこし協力隊として加美町に移住したのは2018年の5月。仕事が決まっても、次に住まいというハードルが待ち構えていました。地方に行けば安価な空き家がたくさんあるだろうと(今思えば地元の方々に対してとても失礼)安易に考えていた私は、中古物件で住居を探していました。 

 しかし、縁もゆかりもないただの移住希望者が紹介してもらえる物件はありません。当初は役場近くの新築アパートに引っ越し、地域活動に参加しながら地元の方々に空き家がないか聞き回りました。それで協力隊2年目の秋に紹介していただいたのが今の住まいです。

 当時は空き家バンクの存在は知りませんでした。町を見渡せば空き家のように見える建物があるにもかかわらず、不動産業者が紹介する物件はリノベーションされたきれいで価格が高いものばかり。住めるだけで十分なのに、なぜそんな空き家が使えないのか不思議でした。このことが、空き家の流通や利活用に対して興味を持つきっかけとなりました。

 21年1月にリロカリコクリ株式会社を起業。町から受託した空き家バンクの運営と、空き家の維持管理サービスを仕事にしています。

空き家バンク契約数が倍増

  空き家バンクとは、空き家を有効活用するために自治体が運営する仕組み。所有者とそれを借りたい・買いたい人をマッチングするのが目的です。加美町ではマッチングを目的としたウェブサイトなどの運営はされていましたが、物件紹介以前と以降のサポートがされていない状況でした。

 町と協議を重ね、空き家バンクが委託業務になったのが21年。競争入札の結果、弊社が受託することになりました。受託料は年間で300万円。この金額から、加美町が空き家対策を地域課題として捉え、本気で取り組もうとしていることがわかると思います。

 空き家バンクのサイトは、以前よりもウェブ公開の条件を厳しくしました。登記情報が明確であること、建物内部の残置物が片付いている(生活感がなくなる程度)ことが条件です。つまり、問題なく取得できる状態の物件が閲覧できるようにしました。

 空き家所有者からは、賃貸や売買だけでなく、相続した物件を手放すための手順・手続きや、家屋及び敷地の維持管理の方法などの相談も受けます。

 また、空き家を利用したい人に物件を紹介した後は、利用希望者と所有者の顔合わせ、値段交渉、契約まで、直接立ち会ったりメールのやりとりで間に入るなどのサポートを行なうようにしました。第三者が立ち会うことで少しでも安心感を持っていただけると感じます。結果、受託前と比べて相談件数、契約数が倍増しました。

 ただ、双方の希望通りに物件を紹介することは非常に難しく、個人的にはタイミングとご縁だろうと思っています。

空き家バンクと不動産業の違い

  あくまで空き家バンクは行政のシステムであり、単純な不動産の紹介サイトではありません。自身が必要としない不動産を所有していて、仲介業者に相談してもなかなか手放すに至らない、まだ使えるのに……と悩んでいるような方に活用いただく仕組みで、不動産所有者が困った時のセーフティネットだと理解しています。

 利用希望者からも、多少の不便があってもよいからこの町に住める物件を探している、という相談が多いと感じています。

 資産価値のある物件なら空き家バンクよりも不動産会社に登録したほうがいい場合もあります。そのため、空き家バンクへ相談に来る方にはまず、不動産業者での査定を勧めています。

 弊社は不動産業者ではありません。仲介業を行なっているわけではなく、不動産賃貸・売買契約が成立しても金銭の授受はありません。所有者が必要としない不動産を手放すことができるよう、公益事業としてサポートすることが重要なのです。 

利活用を進めるための維持管理サービス

 空き家を利活用につなげるには、今すぐ住める状態であることが重要です。空き家となった物件が、状態が悪化せず近隣の迷惑とならないように所有者に促すとしても、維持管理は所有者に委ねるしかありません。空き家となった時点からの適正管理、手放すまでの部分にこそサポートが必要だと感じた私は、空き家バンクの運営とは別に、維持管理サービスを始めました。



 委託業務との兼ね合いから、積極的に営業はしませんが、管理について相談があった場合に提案します。

 基本業務は月に1度の定期巡回です。該当物件を訪問し現状の写真を撮影、窓を40分以上開放し空気を入れ替えます。その間に建物全体の点検。必要に応じて風呂、トイレ等の封水作業(30秒ほど水を流し、排水トラップに水を溜めることで、ニオイや虫を防ぐ)を行ない、簡単な清掃作業を実施。作業後の写真を撮影し退室します。その後、報告書をつくり、所有者に送付して定期巡回終了です。

 また、オプションメニューとして物件の簡易修繕や清掃、剪定作業、除草作業などを行ないます。

基本管理業務に必要な時間は移動や報告書類作成含め2時間ほど。基本料金は月3300円、年間契約3万3000円です。大手不動産業者や警備業者も同様のサービスをしていますが、単価は月額5000~1万円が相場です。

 県外にお住まいの方との契約が多く、草刈りや簡易修繕等のオプション業務も含め、1件当たり年平均6万~7万円程度の管理費となります。 

 今年の4月時点での維持管理契約件数は7件。この業務での年間収入は約50万円です。7件のうち5件は空き家バンクには登録していません。いつでも手放せるよう、きれいな状態を保つために利用してくださっています。空き家は、放置すればするほど手放しにくくなりますからね。

この記事をシェア
タイトルとURLをコピーしました