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季刊地域No.62(2025夏号)ゆるくらジャーナル

山形

「多面」で集落の在来エダマメを継承

全国をまわる農文協職員が集めた元気な活動の数々をご紹介します。「ゆるがぬくらし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む全国各地の耳寄りな情報です。

細谷だだちゃを収穫する子供たち

 鶴岡市羽黒町の細谷集落には、「細谷だだちゃ」という在来のエダマメがあります。多面的機能支払組織「チーム細谷」では、活動の一環としてこのエダマメを栽培し、農村文化の伝承に取り組んでいます。

 鶴岡市は元来、だだちゃ豆というブランドエダマメの産地。その中で細谷だだちゃは、食味の良さでは定評があったものの、収穫期間の短さや発芽率の低さによって、量産はできませんでした。各家庭で自家消費用にタネが継がれてきました。

 しかし農家の減少や経営規模の拡大を背景に、継承が危機に瀕していたそうです。そこで多面組織の活動として、2016年から構成員の畑10aほどを使って栽培を始めました。 

 日頃の管理は役員がやっていますが、6月初旬の定植作業、8月末の収穫祭は集落の子供たちも参加します。集落で食べる以外のエダマメは、直売所で500g700円で販売。甘くて美味しいと好評です。ただし、1ウネは地域住民のタネ採り用に残し、自由に採種できるようにしています。

 代表の庄司茂宏さん(53歳)は「集落名が入ったエダマメです。誇りを持ってやっていきたいし、ゆくゆくは集落の特産品に」と言います。

 タネを継ぎながら、地域の子供たちと一緒に作業する取り組みで、素晴らしいと思いました。

文=橋本和徳(農文協)

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農文協 編
特集:有機農業 点を面にする
小田切徳美 著
「にぎやかな過疎」とは「過疎地域にもかかわらず、にぎやか」という、一見矛盾した印象をもつ農山漁村のこと。14章からなる本文に加え、「農的関係人口」などの基礎用語を、著者独自の視点で解説するコラム「農村再生キーワード」を11記事収録。註には本書の背景の深掘り解説や、参考図書の紹介なども多数盛り込む。農村再生のための政策構想を論じた『農村政策の変貌』(2021年)の続編であり、コロナ後の社会と2025年基本計画以降の展開を見据え、農村の過去~現在、そして未来への展望まで総合的に見通す一冊。
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