10月26日(月)、中山間地域の再生を目指して活動してきた「中山間地域フォーラム」の生源寺眞一会長らが、小寺裕雄農水副大臣に面会。「中山間地域等直接支払の見直しに関する提言」を手渡し、見直しにあたってはこれまでの制度の検証をすること、さらにそれを国民的議論の中で行なうことを要請した。

2027年度からの水田政策の見直しの一環として、農水省は中山間地域等直接支払についても見直すとしている。その主眼と推測されるのは、これまでこの制度に取り組んでこなかった自治体への拡大だ。いいことのようにも思うが、制度に関わってきた人たちの間には後述する③のような懸念が生じている。
だが、世間ではあまり話題になっておらず、中山間地域の自治体関係者や農家自身もあまり自覚のないままに制度の重要な変更が行なわれてしまう可能性がある。この点も憂慮し、産官学のネットワーク「特定非営利活動法人中山間地域フォーラム」が、このたび提言書をまとめた。
詳しい内容は提言書をご覧いただくとして、ここでは、関係者へのインタビューを踏まえ、私見の解釈も加えながら主旨を簡単にまとめてみた。
①四半世紀に及ぶ中山間直払制度の検証が必要
2000年度から始まったこの制度は、5年ごとに成果をまとめながら5期続いてきて、現在6期の2年目にあたる。この制度が中山間地に住む人たちの活気と誇りの維持に果たしてきた役割はとても大きく、もし制度がなかったら、日本は今頃どうなっていただろう?とぞっとする。だがいっぽうで、それだけでは解決しない厳しい現実もある。農地も集落も担い手が不足し、荒れ地や獣害も増え、先の展望が持ちづらくなっているのが現状だ。
来年度からの見直しや実施率拡大を突然言い出す前に、「中山間地域等直接支払」の意義と効果、これまで不十分だったところなどの基礎的な検証をすべきではないか。
②「中山間地は条件不利」の内容をもっと具体的に深めよ
この制度は「平場と中山間地の条件格差を埋める」という発想で組み立てられており、現状は傾斜度をモノサシに格差の度合いを測る設計になっている。だが、傾斜度だけで判断するやり方で本当にいいのか? まとまった農地が少ないこと、移動に時間がかかること、日照の少なさ、獣害の深刻さほか、中山間地が条件不利なことはたくさんある。
また、制度が始まってからの27年間で、平場のほうは大区画化や農地集積がかなり進んだ。中山間地との条件格差は当初よりずっと開いている。そのことも配慮して、これからの支援条件を定め直すことが必要ではないか。
③唐突に出てきた「実施率」を懸念
今回の見直しは、この4月に農水省が突然出した「制度の実施率が、急傾斜地で5割、緩傾斜地で3割」というデータをもとに、これまで取り組んでこなかった自治体への拡大を主眼にすると思われる。取り組み拡大自体は悪いことではないが、これまでやってこなかった市町村にはそれなりの理由もあるはず。官僚の立てた政策目標に沿って、プッシュ型で強引に「やれやれ」と尻を叩くのは、「地方裁量主義」を大事にしてきたこの制度の精神に反する。自治体職員の疲弊もますます進む。そもそも「実施率」という唐突な指標は、定義も示されていない。
最大の問題は予算確保。これまでも財源不足が理由で取り組めなかった市町村が取り組むようになるには、それなりの財政支援が必要。全体予算が大幅に増えることがなければ、実施自治体が増えれば増えるほど、従来活動してきた地域への予算を減らすしか方法がないような気がする。いまだそのあたりについての農水省の見解が明らかになっていないのが問題だ。

今回の要請に対して小寺農水副大臣は、自身の地元が滋賀県で中山間地が多く、現場の声はよく聞いているとのことで、「厳しい状況にあるという現状認識は共有している。ここで間違えば大変なことになる」と応じた。また、中山間地の振興のためには中山間直払の充実のほかにも、「多面的機能支払や農村RMO、地域おこし協力隊との連携など、総合的に対策していく必要がある」とも述べた。

