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連載むらの草刈りにはコツがある

山口

【田んぼのアゼ草】草刈りの場所決めは年齢順 ばあちゃんたちが最優先|むらの草刈りにはコツがある vol.1

担い手農家だけではむらの草刈りが回らない。住民の総力を集める知恵が必要だ。仕組みづくりを工夫すれば、ばあちゃんだってまだまだ活躍!

取材対象:(農)和《なごみ》の郷(山口県山陽小野田市)

『季刊地域』2015年夏号(No.21)「ばあちゃんたちが最優先 草刈りの場所決めは年齢順の集落営農」より

80歳、まだ草刈りはやめられん

 平沼田集落の農地15.7haを管理する(農)和の郷の草刈り経費は、年間200万円近くにもなるという。

 結構な額の気もするが、組合長の村上俊治さん(66歳)は「従事分量配当で地域のみなさんに払うお金がほとんど。だから、うちはこれでいいんです」とキッパリ。下手に草刈り代をケチって効率よくこなしてしまうより、せっかく誰でもできる草刈りなのだから、なるべくたくさんの人に参画してもらいたいと思うのだ。

 矢田菊枝さん(81歳)と今橋常子さん(76歳)は、2012年の法人設立と同時にほぼすべての農地を法人に利用権設定した。だが今も、草刈りや水管理を再委託されているし、畑の共同作業にもせっせと出かける。農家として田んぼや畑で体を動かすのは、やっぱり楽しい。

今橋常子さん(左)と矢田菊枝さん。後ろの圃場は今橋さんが草刈りを担当するエリア
今橋常子さん(左)と矢田菊枝さん。後ろの圃場は今橋さんが草刈りを担当するエリア

「それに法人ができる前は年金持ち出しで農業しとったのが、いまはお金もらって農業してるもんね。本当ありがたいです」

 そんな2人にとって草刈りは、とてもやりがいのある仕事だ。

「まぁ暑い時期は大変だけど、草刈りはちょっとまだやめられんよね」「うんうんっ」

 2人は少女のように目をキラキラ輝かせてうなずきあう。どうやら和の郷の草刈りシステムに、やる気を生み出す秘密がありそうだ。

面積割なら自分の好きにやれる

 和の郷では畦畔の草刈りは、それぞれが担当場所を管理する。労賃は時給ではなく面積割だ。

「時給だと若い人とお年寄りでスピードに差が出るでしょう。かといって共同作業にすると、若い人がガンガンやるからお年寄りは排除されちゃう。だから面積割がいいんですよ」と村上組合長。

 今橋さんも、「もう歳だから日中の暑い時間なんか外に出てられないでしょう。だから涼しい朝と夕方にちょっとずつとか、自分の好きな時間に自分のペースでやれるのがいいね」という。

 労賃は傾斜などの条件によって幅があるが、1回につきアゼ面積で1㎡20~23円。刈る回数は水稲の圃場は5回、ムギや牧草の圃場は3回と決まっている。でも、別に回数のチェックまではしない。「要は草が生えないように管理してればOKよ」と村上さん。つまりアゼ1㎡あたり水稲の圃場で年間約100円、ムギや牧草だと約60円というわけだ。

 基本的に機械や燃料は各自の持ち出しで、法人で所有する自走式草刈り機を使うこともできる。

場所決めは年齢順で

 担当場所の決め方が、なんともユニーク。年齢の高い順に、好きな場所を選べるのだ。面積も好きに決めてよく、やりたいだけやれる。毎年、村上さんが冬の間に年齢の高い順に家を訪ねて、希望を聞いて決めていくという。

 今年、集落のなかで一番に場所を選んだのは、81歳の矢田さん。4枚分、90aほどの圃場のアゼ草刈りを担当することにした(下地図)。決め手は、まずは自宅から歩いて行けること、そして自分の田んぼを含んでいることだった。4枚は少し傾斜があるがコンパクトにまとまっており、矢田さんの感覚では、朝晩だけの草刈りでも3日あれば十分終えられる広さだ。無理なく続けられて、労賃は年間6万5790円になる。

草刈り

 いっぽう今橋さんは、矢田さんが担当するエリアの北側5枚分を選んだ。面積は1.1haほどで矢田さん同様、自分の田んぼも含まれていて、場所は家の目の前。ちょっと広いが傾斜がほとんどないので、畦畔の面積は広くない。

 2人とも、自分の田んぼは他の場所にもあるのだが、無理せず家の近くのまとまったところを選んだそうだ。

支払いは現金で奇数月に

 労賃は、奇数月の現金払いだ。

「偶数月には年金入るでしょ。だから法人からの支払いは全部奇数月、毎月何かしら収入があるようにしてるんです」と村上さん。

 草刈り代は5、7、9、11月の4回に分けて払われる。ちなみに1月は土地代、3月は草刈り以外の労賃がもらえる。「ちょっとでも毎月収入があるってやっぱり安心するんだよねぇ」と矢田さんも今橋さんも嬉しそうだ。

 平沼田集落から銀行や郵便局があるところまでは車で15分ほどかかる。お金をおろしに行くのは結構面倒だし、現金でもらえるのはやっぱり嬉しい。「頑張ろう」と思うのだという。

今年から共同作業のエリアも

 村上さんは、じいちゃんやばあちゃんが無理なく楽しく草刈りを続けられるよう仕組みづくりに気を配ってきたが、草刈りに参加する人は減ってきている。今年は16軒のうち、担当場所をもったのは9軒のみだ。そこで、一部の草刈りを共同作業にして、時給制でやってみることにした。時給をいくらにするかは検討中だが、担当を持たなくなった高齢農家や嫁さんなど、来たい人にはどんどん来てもらいたいと思っている。

 和の郷の草刈り経費200万円には、畦畔以外の水路の周りや山際などの草刈りにかかるぶんも含まれる。畦畔以外の草刈り代はなるべく中山間や多面的機能の補助金を利用するが、残りは法人が用意しなくてはならず、負担額は昨年で160万円ほどだ。そのため人件費以外の部分ではコスト削減にも励む。資材の購入先を見直すなどして、米1俵あたりの生産費は中山間地ながら1万円程度にまで抑えているそうだ。米はほぼ全量を直販、自分たちで売れない分まではつくらず転作にまわす。

 「法人は儲けるつもりはさらさらない。ただ集落の農地が維持できて、みんなが楽しく暮らせればいい。今は集落をなるべくいい状態で次の世代につなぎたい、それだけです」と村上さん。

草刈り
美しい景観を保つ平沼田集落。どこも草刈りが行き届いている(写真=高木あつ子)

 「集落の外に出てる人も、耕作放棄地やアゼ草がボーボーじゃ帰ってくる気も起きないでしょ。草刈りってほんとに大事だと思いますよ」


Web連載(全4回) 「むらの草刈りにはコツがある」


本記事は、『季刊地域』2015年春号(No.21)の巻頭特集「草刈りを担うのは誰だ」に掲載されているの記事の一つです。以下、ルーラル電子図書館からすべてご覧いただけます。

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