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【ヤギ除草】ヤギが好む植物ランキングと除草への応用|むらの草刈りにはコツがある vol.2

ヤギはむらの草刈りの頼れる助っ人です。研究によってその実力も明らかになってきました。
岐阜県のある市町村で、除草目的のヤギを試験導入。しかし、食べてくれない雑草があると地元で話題になったそうで、市役所の担当者にこの記事を紹介したら「参考になる」と喜ばれました。

写真=筧わかな
食べているのは庭木のピラカンサ 写真=筧わかな
執筆者:小池文人(横浜国立大学教授)

『季刊地域』2024年夏号(No.58)「ヤギが好む植物ランキングと除草への応用」より

ヤギが好む植物ランキング

 ヤギは木の葉や広葉草本、つるなどいろいろな植物を混ぜて食べたがりますが、樹林や草地が入り交じった広い自然の放牧地で自由に食べさせると好みの順番(嗜好性)が見えてきます(下表)。この順番は大まかには野生のシカと似ています。いちばん好まれるのは落葉樹のヤマグワやつる植物のクズで、放牧すると真っ先に食べに行きます。耕作放棄地に樹木が入り始めたやぶこそが、ヤギが最も好む植生です。ちなみにヤマグワの葉の天ぷらやクズのつる先などは、くせがないので人間も食べることができます。

嗜好性値8以上はご馳走。1程度(ヒノキもこのあたり)までは日常的なエサとしてよく食べる。冬に食べものがなくなると、アズマネザサや竹、シュロも除草可能。放牧すると上位の種から消失していくので、クズやヤマグワを選択的に除草してヒサカキやスダジイを残すことができる。嗜好性が高い種を残すには防護が必要。
嗜好性値8以上はご馳走。1程度(ヒノキもこのあたり)までは日常的なエサとしてよく食べる。冬に食べものがなくなると、アズマネザサや竹、シュロも除草可能。放牧すると上位の種から消失していくので、クズやヤマグワを選択的に除草してヒサカキやスダジイを残すことができる。嗜好性が高い種を残すには防護が必要。
クズ写真=曽田英介
クズ写真=曽田英介
セイタカアワダチソウ(秋の姿)
写真=編集部
セイタカアワダチソウ(秋の姿) 写真=編集部

 次に好むのは、アオキやヤツデのような低木の一部とムクノキなどの落葉樹で、その下にセイタカアワダチソウが位置します。ただし、交通が多い道路側などヤギがストレスを感じる場所では嗜好性の高い植物をつまみ食いするだけになるので、セイタカアワダチソウを食べ残すこともあります。

 夏草が豊富にある季節と違って、冬にはさらに嗜好性が低いカシ・シイ類やタブ、ヒサカキのような常緑高木の葉やヒノキの葉も食べます。草食動物はイネ科の植物を食べているイメージを持たれることがありますが、ヤギもシカもススキやササ、竹、シュロなどは好きではありません。ただ、歩きながらつまみ食いするので、気がつくとササが減っていたり、冬には落葉樹の落ち葉も食べます。

何頭のヤギを放牧すればよいか

 耕作放棄地に草が10本生えているときと比べて30本生えていれば、畑全体のバイオマスの生長速度は3倍ということになるでしょう。しかし、さらにたくさん生えて混み合った状態では、面積当たりの生長速度がゼロになってしまうかもしれません(ただし樹木が侵入すれば生長が続く)。

 草地全体の植物の量と草が1週間に育つ量(生長速度)の関係は、大まかには下の図のような山型の曲線になります。植物が茂った草地にヤギを放牧すると、草を食べるので最初の現存量Kより減りますが、草地に隙間ができるので草の生長が早まります。1頭のヤギを放牧したとしましょう。草の生長速度とヤギが食べる速度がつり合うところAで草地の植物量の変化が止まります。もし人間がさらに草刈りしてBまで減らしても、ヤギの食べる量とつり合うAまで回復して自動的に維持されます。しかしCより少なくなるほど強く刈ると裸地に向かって減少してしまいます。

 早春で芽吹いたばかりの草が少ない状況で放牧すると、草の量がCより少ない状態からスタートするので裸地化しやすいと予想されます。また、この図で2頭放牧するなど、ヤギが食べる速度が生長速度のピーク(MSY)を超える場合も草の量が減少し続けて裸地になります。

図1 草地全体の植物の量と草が育つ速度、ヤギが食べる速度との関係(春・夏の放牧)
図1 草地全体の植物の量と草が育つ速度、ヤギが食べる速度との関係(春・夏の放牧)

どのような植生を目指すのか

 ヤギで雑草を抑えるには、どのような植生を目指すのかを決めておくとよいでしょう。裸地を目指すのであればMSYを超える頭数を放牧するか、早春の芽吹いた直後で草が少ない時期から放牧するか、刈り払い機で一時的に強く刈って現存量をいったんCより下げます。しかし、裸地は雨の時に泥水が流れて困るので、通常は植生を残しながらヤマグワやクズ、セイタカアワダチソウを抑制することを目指すのではないでしょうか。

 ヤギは嗜好性が高い植物から食べていくので、図1のKからAに変化していく間も種が交代していきます。表の上の植物から消失し、下の植物が残ります。

 例えば、ヤマグワやクズ、セイタカアワダチソウを抑制して樹林化を防ぐのであれば、ススキやアズマネザサの草地を目指すことになるかもしれません。ススキやアズマネザサも除去したいのであれば、この表にはありませんが、背が低くて食べられにくいシバ類の草地を目指すことになります。

春、ススキを食べさせているところ(2023年4月5日)
春、ススキを食べさせているところ(2023年4月5日)
高さ20cm程度にそろったセイタカアワダチソウやササの食痕(2023年5月18日)
高さ20cm程度にそろったセイタカアワダチソウやササの食痕(2023年5月18日)

 逆に、嗜好性が高いアオキやヤツデを残して嗜好性が低いススキやアズマネザサを先に除去することはできません。もし残すのであれば、アオキやヤツデを被覆して食害から守ることになります。

 なお、里山の雑木林(落葉広葉樹林)を保全するのであれば、里山性の落葉低木が落葉し草本が枯れ始める晩秋から冬にかけてヤギを放牧し、常緑樹の幼樹や常緑低木、ササ類を食べさせることができます。

横浜国大キャンパスには江戸時代から続く里山の植生が残る。里山の生物多様性を維持するには常緑樹や常緑低木、ササ、クズなどを抑制して植生遷移を止める必要があることから、冬にヤギを放牧することで常緑植物を効率的に除去する実験を行なってきた写真=飯田朱音
横浜国大キャンパスには江戸時代から続く里山の植生が残る。里山の生物多様性を維持するには常緑樹や常緑低木、ササ、クズなどを抑制して植生遷移を止める必要があることから、冬にヤギを放牧することで常緑植物を効率的に除去する実験を行なってきた写真=飯田朱音

購入エサを減らす冬の除草モデル

 冬は緑の草がなくなり、ヤギは食べるものに困ります。除草ヤギの貸し出しサービスも冬はシーズンオフです。ヤギ貸し出しを経営として成り立たせるには、購入エサを減らすことのできる冬の除草モデルの確立が必要でしょう。

▼暖­温帯 ── 常緑樹やササ類を利用

 里山の雑木林や草地を保全するのであれば、暖温帯の都市近郊では常緑樹の幼樹や常緑低木、ササ類を食べさせることで容易に越冬させられます。ただし中山間地では野生のシカがこのような植物を食べてしまい、エサとして利用できないかもしれません。

アズマネザサをつまみ食いさせる
アズマネザサをつまみ食いさせる

▼落葉樹林帯 ── ヒノキ・竹の葉、落ち葉を利用

 常緑樹が育たない落葉樹林帯であれば、ヤギはヒノキの枝葉や竹の葉、冬の落ち葉(落葉樹の枯れ葉。ササと同程度の嗜好性)を食べることができます。野生のシカも落ち葉を重要なエサとして食べていることが最近の研究で明らかになってきています。落ち葉にはセルロースが多いため人間の栄養にはなりませんが、消化管に共生する微生物の発酵でセルロースを分解するシカやヤギには重要なエネルギー源になり得ます。

 また、ヒノキの植林地と竹林を含めて柵で囲った放牧地をつくり、毎日少しずつヒノキの枝打ちと竹の伐採(1頭あたり毎日マダケ2~4本程度)を行なって給餌することも可能でしょう。エサを持ち運ぶのではなく、切って地面に落としてその場で食べさせるのであれば労力は格段に少なくて済みます。ただし樹皮食には注意が必要です。

 なお竹は乾くと嗜好性が下がるので、生かしたまま倒しておくこともできます。ただし、食べた後の長い桿の取り回しが大変なうえ、ヤギは倒れた桿で歩きにくくなるのを嫌がります。そこで食べ終えた竹は2m程度に短く切って積み上げ、片付けています。

 またエサの種類が少ない場合は、他の栄養を含めた補助飼料を検討してもよいかもしれません。

ヤギの行動範囲を制限して除草

 ヤギは自律的に行動して食べ続けてくれますが、行動範囲を制限する方法が必要になり、最も発展が望まれる分野です。なお、ヤギの位置のモニタリングにはペット用のGPSトラッカーを使うことができます。

▼柵で囲う

 柵をつくって囲うのは大変ですが、いったんつくれば、草や水が豊富なところなら数日間放置することも可能で見回りの手間がかかりません。林内の……

(このWeb記事は、『季刊地域』2024年夏号(No.58)「ヤギが好む植物ランキングと除草への応用」の一部抜粋です。全文は「ルーラル電子図書館」でご覧ください)

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Web連載(全4回) むらの草刈りにはコツがある

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